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カンパニーとコミュニティを混同するな

危険な「家族的な会社」の罠


近年、企業文化の重要性が叫ばれ、「社員を家族のように」「コミュニティとしての会社」といったフレーズをよく耳にする。

しかし、これは危険な考え方だ。

カンパニー(会社)とコミュニティ(共同体)は本質的に異なるものであり、これらを混同することは、従業員にとっても企業にとっても望ましくない結果をもたらす可能性がある。

カンパニーとコミュニティの本質的な違い


まず、カンパニーとコミュニティの根本的な違いを理解する必要がある。

個人的な見解も含まれるが、カンパニーは利益を追求する組織であり、その存在意義は経済的価値の創出にある。一方、コミュニティは共通の関心や目的を持つ人々の集まりであり、必ずしも経済的利益を目的としない。

擬似コミュニティ化がもたらす3つの問題


カンパニーを擬似的なコミュニティとして扱おうとする試みには、いくつかの問題がある。

1. 期待値の不適切な上昇

会社を「家族」や「コミュニティ」と位置付けることで、従業員は無条件の受容や長期的な保障を期待するかもしれない。しかし、ビジネスの現実は厳しく、経営状況によっては人員削減や組織改編が必要になることもある。このギャップが、後の失望や不信感につながる可能性が高い。

2. 健全な距離感の喪失

プロフェッショナルな関係性を維持することは、効率的な業務遂行や公平な評価のために重要だ。しかし、会社をコミュニティと捉えることで、この距離感が失われ、感情的な要素が意思決定に影響を与えやすくなる。

3. 多様性と個人の自由の抑制

強固なコミュニティは往々にして同質性を求める傾向がある。会社がコミュニティ化することで、異なる価値観や働き方を持つ個人が疎外感を感じたり、自由な発想や行動が制限されたりする恐れがある。

適切な関係性構築のための5つの方策


では、どのようにカンパニーとコミュニティの概念を適切に扱うべきか。

1. 明確な境界線を引く

会社は仕事をする場所であり、経済的な関係性に基づく組織であることを明確にする。当然だが、会社は従業員の私生活への過度な介入は避けるべきだ。

2. プロフェッショナリズムの重視

感情的なつながりではなく、専門性と成果に基づく関係性を築く。これにより、公平な評価と健全な競争環境を維持できる。

総合職という、謎の職種が当然のように存在する日本企業では、これがもっともハードルが高いであろう。本来は解雇規制の緩和より先に、このマインドを浸透させるのを優先すべきではないだろうか。

3. 透明性の確保

2にも関連するが、経営判断や人事決定の理由を明確に説明する。これにより、従業員の理解と信頼を得ることができる。

4. 多様性の尊重

異なる価値観や働き方を認め、画一的な「会社文化」の押し付けを避ける。これは個人の思想・信条にも関わるリスクがあり、悪い意味で「会社の宗教化」を防ぐためにも欠かせないだろう。

5. 外部コミュニティとの連携

会社自体をコミュニティ化するのではなく、従業員が外部のコミュニティに参加することを奨励する。これにより、新しい知見や人脈を得る機会を提供できるだろう。

健全な職場環境と個人の充実の両立を


カンパニーとコミュニティは、それぞれ重要な役割を持っている。

しかし、これらを混同することは避けるべきだ。会社は経済的価値を創出する場であり、コミュニティは人々のつながりや共通の関心を育む場である。この区別を明確に保つことで、健全な職場環境と、従業員の個人としての充実した生活の両立が可能になる。

経営者や人事担当者は、「家族的な会社」や「コミュニティとしての会社」といった美辞麗句に惑わされることなく、プロフェッショナルで公平な関係性を築くことに注力すべきだ。それこそが、長期的に見て従業員と会社の双方にとって最も利益をもたらす道なのである。​​​​​​​​​​​​​​​​

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