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手押し車電動化キットE-cat kitの開発とみかん産業における経験
私達株式会社CuboRexは既存の手押し一輪車を電動化することができるE-cat kit(イーキャットキット 以降Ecat) を開発し,2020年10月の和歌山県有田地域への販売を目指し事業を実施している.
本記事では弊社がEcatを株式会社CuboRexの事業として実施するに至るまでの開発経緯と寺嶋自身のみかん産業における原体験について記載する.
Ecatの有田地域への実装にむけての取り組みについては下記の記事を確認してほしい(現在執筆中)
Ecatプロダクトページ:
Ecatを搭載した和歌山県有田地域で利用されている手押し一輪車
写真提供:大谷 英士朗
Ecat誕生の経緯
Ecatについては2020年4月現在かCuboRexの副代表をつとめる嘉数正人が2015年当時21歳の時に開発したのがEcat誕生のはじまりである.当時嘉数はFabmobiというチームを仲間数人で結成し人類の移動速度を2倍にすることをミッションとして人に装着可能なパーソナルモビリティの運用方法やプロダクトの開発を行っていた.その中のひとつ建築業界な農業において利用される手押し車を従事者が徒歩で運用しているのをみてなんとかできないかと思ってEcatを開発したのが始まりである.
みかん農家で実際にがっつり働いた経験
現在株式会社CuboRexの代表を務める寺嶋は和歌山県有田地域が出身であり,もじどおりみかん畑に囲まれて日々過ごしていた.また中学校から高専時代にかけて有田のみかん農園地域においてバイトとしてみかん農地で働いていた.
みかん農家で働いていた理由として大きなものは
・有田地域においては圧倒的にみかん産業が大きく近所を含めてバイトできるところが多かった
・バイトの単価が地元のバイトできるところでは最も高かった.時給では1200円前後だった.地方の学生バイトとしてはかなり高時給である.(高専にいっていた当時マクドナルドで働いていた経験があるが時給で600円台だった)
・働けるときに働けた.時間の融通がききやすかった.
・両親がみかん農家で働いていたので最初の頃はそこの雇用主のところでみかん農業のことを学べた.
上記の内容が挙げられる
実家周辺のみかん農地を囲んでみた
みかんのバイトそのものは主に高専時代に行っていた.ただ当時は高専ロボコンに熱中しまくっていた時期だったので主に高専ロボコンの全国大会がおわる11月末から1月にかけて土日や授業が空いている時間帯に働きにいっていた.ここで稼がせてもらったお金についてはロボット部品や工作機械の購入費,バイクの購入改造費に利用した.
僕自身実際に経験したみかん農業については主に,肥料まき,防除,収穫,選果,出荷作業がある.その中でも最も多く作業し最もしんどかったのがみかんの収穫作業である.
僕が作業した場所の多くがみかん山と呼ばれる山の斜面を段畑状に形成し,等高線状にみかんの木を密植しているところがほとんどであった.中には平野部にみかんを植えて作業することもあったが8割以上は山の斜面部での作業であった.
11月末から1月にかけての作業で最も多かった作業が収穫作業と運搬作業である。
収穫とはよんで字のごとく手とハサミを使ってみかんを木から収穫する作業のことをさす。山の斜面上になる木から収穫するのでしっかり足場を確認しながら作業を実施する。
みかんの木の上側や中の実については木に登って収穫した。
この際片手取りと呼ばれる技法を使うとスムーズに作業ができる。僕もこれができるようになるまでかなり練習した。特に木に登っての作業等行う場合には必須の技能といえる。
ただ僕自身は収穫作業よりも運び手と呼ばれる収穫されたみかんを運搬することが多かった。(もちろん収穫もやるが運搬作業が優先)
ここでいう運び手について詳しく説明する。運び手としての経験がそのごEcatの開発と社会実装に強く活かされている。
運び手とはみかんの収穫作業を行う上で収穫したみかんや各種機材の運搬作業を実施する人のことをさす。運び手を専門的に実施する人もいる。基本的には若い人や力の強いひとが実施する。
中山間地でのみかん収穫においての流れを説明する。まず収穫対象となるみかん山は下図のようになっており山の等高線上に石段などによって段々畑になっていることが多い(単に斜面になっていることもある)。
その上で下図のような運搬経路と方法によって運搬作業を実施する
以下において上記内容を具体的に説明していく
上記のような環境下にあって作業予定の畑の上か下に積み込み用のトラックを配置する。そこまでの導線は急傾斜かつ、まがりくねった細い道で特に2tトラックを運用する際は職人技に近い技量を求められることが多くある。
そして作業空間にむけて行く際に必ずといっていいレベルで設けられているのがモノラックと呼ばれる運搬機である。
これは急傾斜に対応した資材搬入用のモノレールのようなものである。ここに収穫物や人員、作業資材を積載して作業場所とトラックや倉庫の間を往復する。中山間地で作業するみかん農家の必需品といって過言ではない装備である。以下のツイートでどういったものかわかると思う。
モノラッ君の過酷な日常
— セミ60 (@RYv5s6bXhjakjlx) April 10, 2020
小さい体で大きいパワー!
こいつがなければ急斜面って仕事できないよね笑
中山間地域ではいちばんの主力なのに影の薄いこいつをもっとみんなに知ってもらおう!#30万超再生#バズ ったのに映ってない笑#農業を盛り上げよう pic.twitter.com/FuL38dgpl3
お前たち収穫しても安心するなよ!
— セミ60 (@RYv5s6bXhjakjlx) December 5, 2019
落ちたら虫の餌にしてやるからな!
しっかりしがみつけ!
何があっても振り落とされるな!
頑張ってゴールしたら製品にしてやる😀 pic.twitter.com/hu9LAJfJ5Z
こういった形で小柄ながらとてもパワフルな運搬機で中山間地で作業するのに必要な資材の多くを運搬可能である。設置にはそれなりの資金が必要になる(数百万円)がそれだけかける価値がる。というかこれがないと急傾斜地でのみかん農業ができない。
モノラックが社会実装される前は索道と呼ばれるスキー場のリフトのような構造のもので拠点間の運送を実施したり
みかん運搬用索道#善兵衛農園 で現在も運用している索道.僕も運用されている実物を見るのははじめて,時々運搬基地の名残は有田でみることができる.コンテナが基地に来る時にブレーキかけないと基地に追突する
— 寺嶋瑞仁 @東京南千住 (@simakaze01) December 31, 2019
天空の城ラピュタで序盤にパズーが操作していた炭鉱エレベータを思い出す#有田 pic.twitter.com/ppIixYxqwI
天秤棒とよばれるもので肩でかつぐなどしていた。
みかんの運搬
— 寺嶋瑞仁 @東京南千住 (@simakaze01) December 31, 2019
モノラックがなく軽トラで近くまで行けなかった頃はこういった器具で合計4つ(最大80kg)までもって運搬していた
モノラックが普及して使われなくなった
体を触らせて貰ったが肩の筋肉が凄い事になってた pic.twitter.com/HfwedCLPu3
自分も実施してみたがどう考えても2個が寺嶋だと限界であった。
4つはどう見ても無理だったので2つで挑戦
— 寺嶋瑞仁 @東京南千住 (@simakaze01) December 31, 2019
結論コツを掴まないとどうにも上がらない#有田#有田みかん pic.twitter.com/15XKR4maPN
その他には自分が知る限りにはおいては手で持ち運ぶ方法がある。
ちなみに平地の農園では上記の他にクローラ運搬車もつかわれたりする。
ここまででみかん山と倉庫まではトラック、トラックから作業する段まではモノラックで運搬することを説明した。ここからは最後にモノラックからみかんの木がなっている各段での運搬作業について説明する。
ここでの運搬方法は正直いって多種多様である。というのも環境が多種多様で農家さんごとにやり方がことなったりする。ここでは僕自身が経験した中で多かった方法を説明する。
手押し車で運搬
寺嶋が最も多く経験した方法。崖側に細いが人が一人通れる道が存在することが多くそこを使って地形や用途にあった特殊形状の手押し一輪車を使いつつ運搬する。有田地域では下図のようなアルミフレームの手押し車を使われることが多い。
この方法の欠点としてある程度熟練していないと傾斜地での作業によってコンテナをこかしてしまうことが多いことである。僕もなんどもこかして傾斜をノンストップで転がっていくみかんを見送ったことがある。あれはとても悲しい。これは熟練者になっても起こる時はおこる。また通路は枝がおちてたり穴があったりするのでそこでタイヤがとられることもよくありその際は腰をいれ一気にぬけだす必要がある。
またみかんの木が邪魔をして通路が確保されていなかったり、傾斜がきついことも多いのでその場にあった対応が必要である。
コンテナを手で運ぶ
段差が多い段だったりする場合には手押し車が使えないので純粋に手ではこぶ一つあたり17kgから20kg程度の重量がある。地面の状態を確認しながらモノラックまで運ぶ。かなりきつい。またモノラックから木まで近い場合も手で運んだりする。
みかんコンテナを手で運ぶ
— 寺嶋瑞仁 @東京南千住 (@simakaze01) April 11, 2020
段差の多いところではみかんコンテナを手押し車を使ってモノラックまで運べないので人の手でリレーして運ぶことも珍しくない pic.twitter.com/KhhbJcbpdr
収穫者がテボをもってモノラックに運ぶ
これはあまり多くはみないが私の母が働いているみかん農家さんでとられている手法である。モノラックから収穫している木までをテボとよばれる首から下げたかごをもって往復して作業する。運び手がいない状況下やモノラックと木が近い場合などで行われる。
ここまで一連の中山間地でのみかん山での作業について紹介してきた。改めて一連の流れを説明していく。ここでは作業する斜面の下にトラックを配置して上の段から下に向けて収穫作業を実施していくこととする。
1,トラックをモノラックの低留置によこづけする。これによってモノラックとトラックの間における運搬を最短距離でおこなう。モノラックの高さ位置もトラックの荷台高さにあわせていることが多い。
(トラックをモノラックに横付けした写真が欲しい)
2,モノラックのカバーを外しや作動を確認するガソリンやオイルが少ない場合は補充する。その後人員や資材を積み込む。
3,作業する段で人員や荷降ろしをする。ある程度コンテナが作業する段にたまるまで(目安20箱前後)までコンテナをもってあがる。
4,収穫者が作業している近辺にコンテナを配置しみかんがたまったコンテナを手や一輪車を使ってモノラックまで運ぶ。
5,モノラックの荷台がいっぱいになったらトラックまでモノラックで下る。このときの運搬が僕にとって最もありがたい休憩である。
6,トラック横についたらモノラックのコンテナをトラックに積載し、空のコンテナをトラックからモノラックに積み込む。
7,作業している段までモノラックでのぼる
以降3から繰り返す。
こういった形で作業を実施していく。また上記の中には含まれていないが運び手の作業の中には農家にもよるが一種のマネジメントのような作業も含まれる。休憩におけるおやつの準備や、作業している段が次の段に移った際に作業環境の片付けや次の段の手配などである。
なので季節労働者や一時的なバイトの場合には運び手をさせるのは難しい。
ちなみに休憩はこんな感じで作業場所でみかんとおやつを囲んでとる。僕はここで産地のみかんを食べながら農地の主人や一緒に働いている人と話すのがたのしかった。特にみかんの栽培や事業について詳しく聞いていた。
私自身はそれなりに両親やお寺の檀家さんの関係で知っている方のところで作業をさせて貰うことが多かった。そのため若さもあって運び手をすることが多かった。肉体労働はもちろんだが全体の作業の進捗などを考えながら運搬作業を実施していたのを覚えている。特にコンテナの配布が滞ると収穫作業がとまりかねないのでその点は常に配慮していた。
また僕の場合は収穫者がおよそ5名程度になると常に運搬作業をしていた記憶がある。その場合は汗だくになるので。段がおわって次の段の準備がおわったときに少し作業が終わった段で一人休憩したりして体力を回復していた(つまりサボり)
そんな感じで昼休みや休憩をはさみつつ16時から17時ごろにかけて日没が近くなったころきりのいいところで収穫作業をおえる。機材の撤収作業や片付け運び忘れた収穫みかんの確認なども運び手の重要な作業である。
収穫を終えたあとのトラックはおよそ下図のような感じで3~4段程度積み込む。(軽トラの積載量の限界?知らんね)
最後に山から車またはバイクでおりる際に収穫作業をした山の斜面をみてみかんの影響で黄色かった山の斜面の一部が僕達の作業によって緑が多くなっているのをみて今日の進捗を確認するのが楽しみだった。
収穫を終えたみかんは倉庫内の保管場所に下ろして作業を終了する。
ちなみにそのあとも夜間まで選果と箱詰めが行われる。ほんとに夜おそくまでお疲れ様である。
以上が寺嶋が高専時代におこなっていたみかん関係の作業である。防除や肥料やりなど収穫とは直接関係ない作業の経験もあるが、ロボコンとの兼ね合いもありみかんの収穫作業を手伝うことが圧倒的に多かった。特に運びてとしての経験が長くまたそこで感じた苦労も多かった。そこから現在はEcatのみかん農家にむけての社会実装を行いたいと感じて現在株式会社CuboRexの事業としてEcatkitの社会実装にむけての取り組みを実施している。
今後にむけて
Ecatkitの和歌山県有田地域の社会実装にむけての取り組みについては下記に詳細を記載する。
改めて「欲しい者が欲しい物を生み出し試せる社会」の実現にむけて不整地のパイオニアとして道なき未知を切り拓き事業を実施していく。
Ecatkitの購入予約を下記フォームで行っているので興味のある方は予約してほしい