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現代アートをもっと楽しむために:僕が感じた“わからない”の面白さ

「現代アートって何だか難しそう…」そんな風に思ったこと、ありませんか?

正直、僕も最初は同じ印象を持っていました。美術館で見かける謎めいたオブジェや、よくわからないモチーフが描かれた作品を前にして、「いや、これって何を表現してるんだろう?」「そもそもアートって何?」と頭にクエスチョンマークが浮かびっぱなし。でも、あるとき友人に誘われて出かけた展覧会で「わからないって、案外面白いかも」と感じる瞬間がありました。そのおかげか今はアートやイベントのエンジニアをしています。

そんな僕の経験も交えながら、今回は「現代アートを知りたい、でも難しい…」という初心者の方に向けて、できるだけわかりやすく現代アートの魅力を解説してみようと思います。ちょっと寄り道したり、例え話を挟んだりしつつ、一緒にふらっと現代アートの世界をのぞいてみませんか?


序章. 現代アートはなぜ難しい?その「難しさ」の正体

現代アートが「難しそう」と感じられる理由の一つは、いわゆる昔の名画とは違って、視覚的にパッと意味が伝わりにくいからだと思います。例えばルネサンス期の肖像画だったら、「この人は権力者かもしれない」「この神話の一場面を描いてるんだな」と、絵を見ればある程度想像できますよね。

でも現代アートは、そうしたわかりやすい“型”が存在しない。作者が自由に発想して、自由に形を作り上げるからこそ、見るほうは「え、どう受け取ればいいんだろう?」と戸惑ってしまいます。

ただ、この戸惑いこそが現代アートの入口。多くのアーティストは作品を通して、「これは何?」と私たちに疑問を投げかけようとしているように思う。

あえて分かりやすく答えを見せないからこそ、私たちは「考える」きっかけをもらう。その過程も含めて「アート体験」なのかな、って。こう書くと何だか哲学的ですが、つまり「わからない、だからこそ面白い」――これが現代アートの醍醐味だと感じています。


1. あの“バナナの作品”が教えてくれたこと

2019年、アメリカのアートフェアで話題になった「壁にバナナを貼り付けただけの作品」をご存じでしょうか?

本物のバナナをダクトテープで壁に貼りつけてあるだけなのに、高額で落札されたというニュースに、「いやいや、冗談でしょ…?」と僕も思わず笑ってしまいました。だって、スーパーで数十円で売られている普通のバナナですよ?

当然「ただのバナナに価値があるわけがない」「何を意味しているんだ?」と混乱する声も多かった。でも後から調べてみると、作者は一年以上も試行錯誤の末にこの表現にたどり着いたんだそうです。

さらに極めつけは、展示中に別のアーティストがそのバナナを食べちゃったというハプニング。ところが、食べられた後も「すぐに新しいバナナを貼れば作品は存続する」という作者のコメントがあったんです。

「バナナそのものではなく、そこに込められた“概念”が作品だから」というのが彼の主張なんですね。

この一件で世界中が「アートって何?」「バナナにそんな価値があるの?」と議論しまくりました。

でもそこには、デュシャンが便器をアートに見立てたときから続く“鑑賞者に問いかけるアート”の系譜が見事に流れていると感じます。

僕も「食べたバナナはどこへ行ったんだろう」と考えるうちに、いつの間にか作者の思惑通り、「これ、ただのバナナじゃなくて“アイデア”なのかも…」とハマっている自分に気づきました。


2. 現代アートへのよくある誤解を解こう

誤解1: 「現代アートは意味がない」

確かに一見、ガラクタを寄せ集めたように見える作品や、子供の落書きのようにしか思えない絵もあります。僕も美術館を回っていると「うーん、これは一体…」と頭を抱える場面がしょっちゅう。

でも重要なのは、わからなくてもいいから「なぜこうしたんだろう?」と考えてみること。「答えは作者にしかわからない」と言われればそれまでですが、“正解がない”のを前提として自分なりの解釈を楽しめるのも、現代アートの懐の深さだと思います。

誤解2: 「高度な技術がなければ価値はない」

日本には「職人芸=高い価値」という文化がありますよね。だからこそ、線をグシャグシャに描いただけの作品が何億円もするというニュースを見ると「こんなの誰でも描けるじゃん…」とつい思ってしまう。

でも現代アートの場合、「何をどんなコンセプトで表現したか」が評価の基準になりがちです。技術というよりは発想やメッセージ性に重きを置く場合が多いんです。一見シンプルな作品でも、その背後にあるアイデアや文脈を知ると「なるほど、これは真似できない…」と唸ることも珍しくありません。


3. 実は身近?日常生活に潜む現代アート

「美術館に行かないと現代アートとは縁がない」というイメージを抱きがちですが、じつは街中の広告やファッションブランドのデザイン、ストリートアートなど、私たちの生活のあちこちに現代アートのエッセンスは転がっています。

例えば、広告を見て「これ、なんでこんなに目を引くんだろう?」と思った経験はありませんか?奇抜な色使いや大胆な構図など、「商品宣伝」という枠を超えた表現に出会うと、それはもうアート作品と同じように僕たちの心を揺さぶります。

また、ファッションブランドが有名アーティストとコラボしてバッグを出すなんてケースも近年は珍しくないですよね。

そうやってアートが日常に溶け込んでいる事例を知ると、「あれ?思ったより僕らのそばにアートってあるな」と気づくんです。

ストリートアートで有名なバンクシーは、壁に書かれた社会風刺の絵で世界を賑わし、ニュースにもたびたび登場します。

美術館じゃなくて街角で出会えるアートがあるなんて、最初はちょっとしたカルチャーショックでした。でも、こうした自由闊達な表現も含めて、現代アートは「遠くの高尚なもの」なんかじゃない。

僕たちが普段見落としているだけで、そこかしこに転がっているんだなと感じます。


4. 現代アートをもっと楽しむためのヒント

1. まずは気楽に眺める

美術館やギャラリーで作品を見かけたら、「これは何を意味するんだ…?」といきなり悩まずに、まずは色や形をただボーッと眺めてみるのがおすすめです。自分の中にどんな感覚が湧くのか、そのまま受け止めてみる。

「なんか落ち着かない色合いだな」「面白い形だな」という程度の感想で十分です。

2. タイトルや解説を手がかりにする

「無題」なんて書かれていると余計混乱しちゃいますが、逆にヒントになる場合もあります。タイトルに示唆的な言葉があったり、解説に「作者は社会問題への疑問を投げかけている」なんて書いてあれば、「へえ、そういう視点なのか」と発想の糸口がつかめることも。

ただ、最初から解説に頼りすぎると“自分の目で考える楽しみ”を逃しちゃうので、まずはじっくり眺めて、後で解説を見るくらいがちょうどいいかなと思います。

3. 「何を表現しているのだろう?」と想像してみる

感じ方は人それぞれです。同じ赤い作品を見ても、「情熱的だ」と思う人がいれば「血みどろのイメージで怖い」と思う人もいる。

その多様性こそが現代アートの面白いところ。正解探しではなく、自分なりに「こんなストーリーかも」「こういうメッセージなのかな?」と想像してみると、作品との対話が生まれます。

4. 背景の「文脈」を探る

いつ・どの国で作られた作品か、作者がどんな経歴や思想を持っているかを知ると、「なるほど、そういう時代背景があってこういう表現なのか」と合点がいくことがあります。

史実や社会情勢、あるいは他のアーティストとの関係性など、少し調べてみるだけで驚くほど作品の見え方が変わるんです。

5. 誰かと語り合う

一人で見てモヤモヤしても、友人と「これどう思った?」と話すと、相手のユニークな解釈に驚かされたり、自分の考えを言葉にするうちに気づきが生まれたりします。

美術館の帰りにカフェであれこれ感想を交わす時間は、アート鑑賞の醍醐味の一つかもしれません。

6. ガイドや解説を活用する

「さっぱりわからん!」となったら、遠慮なく解説や音声ガイドに頼りましょう。

プロの視点を聞くと「あっ、そういうことだったんだ!」と目からウロコが落ちることもしばしば。でも最後は自分なりの感じ方に落とし込むのがおすすめです。


5. 初心者におすすめの現代アート作品・アーティスト

草間 彌生

水玉模様とかぼちゃのモチーフで知られる、日本を代表する前衛芸術家です。カラフルな水玉が果てしなく続くような作品は一見ポップでかわいいですが、その根底には生と死、無限など深遠なテーマが潜んでいます。

まずは「すごいインパクトだ…」とビジュアルを楽しんで、後から草間さんの背景を知ると「え、こんな壮絶な思いを抱えていたの?」と驚くはずです。

奈良 美智

大きな目をした子どもの絵で有名なアーティスト。パッと見は可愛いんですが、少女の表情や仕草からは不思議な寂しさや怒り、孤独感が伝わってきます。技術的に難しい解説なしでも感情が伝わる作品なので、初心者でも「何か訴えかけてくるものがあるぞ…」と感じやすいと思います。

バンクシー

イギリスを拠点とする謎のストリートアーティスト。街の壁にゲリラ的に描かれた風刺画は、反戦や社会批判のメッセージをシンプルなステンシル技法で表現しています。シュレッダー事件など破天荒なパフォーマンスでも注目を集め、「現代アートって型破りだけど面白い!」と実感させてくれる存在です。

アンディ・ウォーホル

ポップアートの巨匠。キャンベルのスープ缶やマリリン・モンローといった“大量消費社会の象徴”を大胆に作品へ取り込みました。「身近なものを堂々とアートにしちゃう」手法に最初は戸惑いますが、そこにある批判精神や時代性を知ると、ますます惹き込まれます。ビジュアルがカラフルでわかりやすいので、入門にもぴったりです。

村上 隆

アニメ風のキャラクターやカラフルな“お花”モチーフで世界的に評価を受ける日本人アーティスト。「スーパーフラット」というコンセプトを掲げ、サブカル文化や消費社会を一体化した独特のスタイルが特徴です。一見すると「可愛いデザインだな」と思うだけですが、背景を探っていくと日本の戦後文化や社会への批評が垣間見えるんです。作品をグッズとして購入しやすいのも魅力ですね。


終章.

僕も最初は「現代アート=難解で敷居が高いもの」と思い込んでいました。でも「わからない」という感覚こそが、むしろ現代アートのスタートライン。何を考えてもOK、むしろ考えない手はない。

そんな自由で広大なフィールドだと気づいたとき、ぐっと楽しくなりました。

「わからないけど、何か面白いかも?」と思えたら、それだけでもうアートを楽しむ一歩を踏み出している証拠だと僕は思っています。

美術館や街角で気になる作品を見かけたら、ぜひ肩の力を抜いて眺めてみてください。そして、「なぜだろう?」と思ったらその疑問にちょっとだけ向き合ってみる。友人と意見を言い合ったり、作者の背景を調べてみたり。

そんなふうにアートの世界を探検しているうちに、日常の見え方が少しずつ変わってくるかもしれません。

現代アートは、決して特別な才能を持った人だけが楽しめる世界じゃない。僕たち誰もが参加できる、ちょっと不思議で、とびきり自由なコミュニケーションの場です。

最初は取っつきにくいかもしれないけれど、その分だけ「なんだこれは!」という驚きや「おお、こう来たか!」という感動が待っています。ぜひ気軽に扉を開いて、あなただけのアートとの出会いを楽しんでみてくださいね。

他にもアートに関する記事をいろいろ書いています!もしこの記事を読んで「いいな」と思っていただけたら、ぜひそちらものぞいてみてください。アートを言葉で表現する記事もあるので、興味があればチェックしてもらえるとうれしいです。


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