[いっぱい並んでいます]or「たくさん並んでいます」?
テレビを見ていたら、レポーターがお菓子の祭典か何かで、
「お菓子がこーんなに、いっぱい並んでいます!」
と紹介していた。
わたしは、レポーターが、「こーんなに、」のあと、一瞬、「いっぱい」でいいのかな? とと思ったけど、「たくさん」という言葉が出てこなかったので、「いっぱい並んでいます。」と言ったように見えた。
そのとき、気になった。
「いっぱい並んでる?」で合っているのだろうか?
なんか、子どもっぽいような、なんか、間違っているような感じがした。
そこで、調べてみた。「新明解国語辞典第七版」。以下引用。
いっぱい【一杯】一その容器に満ちる分量。
「もう――下さい」(略)。
二容量の限度までそこに何かが入っている様子。「会場は人で――だ。」「若さ――の(=全身に満ち溢れている)ふたり」(略)
ほう、容器に一杯、からきているから、容量の限度まで何か入っている様子に使われるのね。お酒が杯にギリギリいっぱい、とか使うし。
三処理(実現)しきれないほどたくさんにある様子。「仕事が――ある。」
あ、たくさん、が出てきた。「もう限度額いっぱいに借りている。」とかいうし。限度額たくさん、とは言わない。
では「たくさん」を見てみる。
たくさん一数量が多い様子。
数が多いことです。はい。
ぴしゃり。ははー、そうですか。
文例を見てみる。
「——たべてください。」「しなければいけないことが――ある。」「——の人が集まる。」
そうか。つまり、「たくさん」はひとつひとつが多いこと。
やっぱり、レポーターのお姉さんは、「お菓子がたくさん並んでいます。」と言わなくてはいけなかったのだ。
正確にはね。
テレビの言葉にいちいち文句をつけているわけではありません。
いっぱいは、まず「容器」がある。
それが、イベント会場(箱とも呼ぶよね)だったり、おなかいっぱいだというときの胃袋だったりする。
「若さ――の二人」(全身に満ちあふれている)というのは、ちょっと主観的じゃない? と思うけど。それは名訳・迷訳で有名な新明解国語辞書のお約束か。
ネット辞書より紙の辞書はおもしろい。
1~2行でさくっとわかるのがネット辞書のいいところだけど、それじゃわからないこともある。
紙の辞書は、説明も詳しいし、文例を読むのも楽しい。
それに、
調べ物をするとき、大小いくつかの辞書を引くと、調べる手がかりがだいたい載っている。
それも、ネット情報よりも精度の高い情報だ。
おもしろい文例もあった。
いっぱい 時間――(=ギリギリまで)待つ。アウトコーナーギリギリ――に球が決まる。
たくさん二もう十分で、それ以上はいらないという気持になる様子だ。説教なんか――だ。
たしかに、説教なんていっぱいだ! とは言わない。アウトコーナーギリギリたくさんに球が決まる、とは言わないな。
似たような意味で使われる言葉だから、その使い分けを調べてみた。
思ったよりも違う意味で使われるんだな。
久しぶりに勉強したみたいで、満足感でいっぱい!
たくさん文例が読めてよかった!