つづり

別名でイラストレーター をしながら、イラストでは描けない緻密な表現を文章で書きたくてn…

つづり

別名でイラストレーター をしながら、イラストでは描けない緻密な表現を文章で書きたくてnoteに手を出しました。 人が抱える日々のもやもやを表現しながら、自分なりの答えとしてSSを書こうと思います。

最近の記事

カーテンの薄明かり

朝日で微睡みがゆっくりと溶けていく 私は朝が嫌いだ。 その朝日は全てを照らした。それは夜の中に隠れた下水道のような醜い感情ですら白く、ただ白く染め上げてしまう程に。 そして私の抱えた全ての負債をなかったかのように優しく包み込む。そんな朝日が私は嫌いだった。 私の存在価値は微睡みとともに薄く伸ばされて遂には消えてしまうのだろう。 朝日が優しく雪を照らして、光が世界を白く染めあげる。  その光景をカーテンの薄明かりの向こう側に私は感じて、どうしようもなく涙が止まらなかっ

    • Transparent

       自分が映る水面を眺めていた。揺れてはひろがり分かれる、薄く遠ざかるほどに透明に混ざっていく。一体どれが私なのだろうか。  透明になりたいと思った。いつだろうか、わからないけれど。とにかく誰にも見えることなく、ふれられず、ふれることもなく。私という価値は世界の比重にそぐわず、私自身も世界に重きを置かず。流れることや、移ろうことに干渉なんてしない。   私は透明になりたい。  透き通った水に指先が触れると、体温が水に奪われていく感覚が気持ちよかった。ゆっくりと頭の先から私のすべ

      • 流れ星残り火のしるべ

        ―――リリリリリリリリ。けたたましいアラームの音が私の部屋を埋めつくす。 いつものことだ。すぐ手の届く範囲にある携帯を傾け、画面を反応させる。朝の日差しを浴びる前に携帯のブルーライトで目を萎ませる。 ――06時20分 取っ掛かりのない液晶はありありと無彩色な数字を表示している。普段ならこのまま微睡に身をゆだねてしまうが、あいにく季節は夏。汗で張り付くシャツを今すぐにでも脱いでしまおう。  階段を降り、洗面台で、生気を感じない水に顔をさらす。私の体温よりも少し冷たいはずなのに体

        • 君がいなくなった窓辺に座って本を読む 何かが欠けている、そう思うと手が止まる 栞を挟み忘れたような気持ち そんな感情の落とし所を探す様にページをめくる 折り目がつくほどくたびれた本の中で 辿り着く思いはいつも同じだ もう所々ページは開けなくなってしまった それでも私は本を読む 指で輪郭をなぞるように窓辺に座りながら 本を読む

        カーテンの薄明かり

          夢うつつになりながら眠るのだ

           限りなく虚無に近しい感情を抱えながら、その日は夜を迎えた。最近はやっと暑さが収まってきたというのに、今宵はどうも肌寒さを感じる。布団を取りに行くにも億劫で、半ば不機嫌のまま毛布に包まる。どうにもこうにも機嫌が悪いのだ。  眼を閉じながら、夢の入り口を探す。それはパズルのピースを一つ一つ丁寧に確かめながら合わせていく作業にそっくりだった。全てのピースが完全的に飽和状態になった時、夢へと誘う使者が現れるのだ。  彼は水面に映る人影のようにゆらゆら揺れて、しかしその場にとどまるこ

          夢うつつになりながら眠るのだ