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久しぶりの映画館

六月の最後に、同居人と一緒に映画を観に行ったのが最後で、その日から昨日まで映画館に行くことが出来なかった。
なんでって訳じゃないんだけど、特にそこまで観たい映画があったわけじゃなかったっていうのもあるんだけど、ただなんとなく、映画館には足が向かなかった。

最後に観た映画は「違国日記」と「蛇の道」で、どちらも印象的でとても良かった。
「違国日記」は一緒に読み始めた漫画の映画化だったから、思い入れがありすぎて、一緒に観れなかったら多分一生観れないままになるかもしれないと思って、だからどうしても一緒に観たかった。

もともと映画館へは一人で足を運んでいたし、また元に戻っただけで、別にしょうがないというか、いずれそういう日々にまた戻るだろうとは思っていた。
ただ、一緒に映画を観て感想を言い合ったり、自分では思いもしなかった感想を聞いたり、自分が気が付かなかった部分について深く掘り下げたり、そういうのが楽しくて楽しすぎて、「ああ、誰かと一緒に映画を観るって、こんなにも素敵な事なのか」と思った。
一緒に映画を観れる人が出来て嬉しい、と私は何回も何回も、行くたびに彼に伝えた。
それほど嬉しかったのだ。

私が観たい映画に文句も言わず付き合ってくれて、面白くなかった映画には遠慮なく「金返せー!」って言うし、等身大の飾らない感想は聞いていて心地よく、素直な同居人がとても好ましいと思っていた。

これは好みに合わないだろうな、という作品に関しては相変わらず一人で行っていたし、好きそうな作品は「一緒に観る用」として、二人の休みが合う日までとっておいたりもした。
今でも上映中のラインナップを見ると、無意識に「一人で観る用」と「一緒に観る用」に分けてしまったりする。
もう全部「一人で観る用」なのにね。

何となく足が遠のいていた映画館だけど、昨日ようやく観たいと思った映画を、また映画館に観に行くことが出来た。

良かった。

思った以上に私は寂しくて傷んでいて、回復するのに時間がかかっていたのだな、と思った。
三年。
たった三年のことなのに、あの宝石のような時間がさらっていったものが大きすぎて、まだ時々ぼんやりしてしまう。

また映画館に行こう。
そして映画を観るのだ。
欠けてしまった部分はもう戻らない。
時間は前にしか進まない。

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