喪失と向き合うってそんなに楽じゃないんだよね、っていうこと
ただただ俳優陣の演技が素晴らしい、っていう。
石原さとみがとにかく凄かった。イタ電でぬか喜びするときの残酷さ。嗚咽とも咆哮とも言える、痛ましい魂の叫び。
「考えすぎるくらい、考えましょうよ」
「その事実が面白いんだよ」
「気持ちは分かる、ってどのくらい分かったつもりで言ってます?」
偏向報道と、昨今のなんでもコンテンツにする風潮の中、自分の倫理を守り貫こうとする記者の砂田が印象的だった。
弟の圭吾も良かった。
ああいう姉弟の組合せよく見るけど、必然的にああなってしまうように出来てるんだな。
偏見ってあるよね、っていう。
「怪物」と同じ感じのテーマだと思う。
映画を見始めた頃は、母親はヒステリックで、夫は無関心で、弟は怪しすぎるしかないんだけど、物語が進んでいくにつれて三人ともあれ思ってたんと違う、ってなる。
見えるところだけを見て、まんまと偏見の目で見てしまい、後々嫌な気持ちになった人も多いだろう。
しかし、それこそが監督の狙いであり、我々がもっと自覚しなければいけない「人間の悪いところ」なのだろう。
監督は吉田恵輔。
「ヒメアノ〜ル」と「神は見返りを求める」と「純喫茶磯辺」は観ていた。
「空白」は見てなかったので見てみた。
喪失と向き合うという点で、いくつかの作品は似ていると思った。
喪失とどう向き合うのか。
どう折り合いをつけるか。
どうやってその先の希望を見出すか。
これからどんな風に、生きて行けばいいのか。
「赦すこと」「折り合いをつけること」は難しいし時間がかかるんだけど、もがきながらもそこに辿り着かないと、その先を生きていけない。
もがいてもいい、みっともなくていい、時間がかかってもいい。
喪失を抱えて生きていくというのは、そういうことだ。
何があったのか、生きているのかいないのかもわからないまま、ずっと心配し続けるという不安とストレス。
こんなつらい思いをしている家族が、実際にいると思うと何とも言えない。
できる限りの想像力を持って、ひとに優しくあれる人間になりたい。