ちっちゃなともだち
むかしむかし、おもちゃ屋さんに犬のぬいぐるみがいました。
『いつか、素敵なともだちに会うのよ』
ぬいぐるみは、買ってくれる人を待っていました。
★犬のぬいぐるみの絵
ある日、背の高ーい人がやってきました。その人は、じっくりぬいぐるみを見たり、なでたりしました。それから、おもちゃ屋さんに言いました。
「このぬいぐるみ、ください」
こうして犬のぬいぐるみは背の高ーい人のおうちに行くことになりました。
★大人の男性がぬいぐるみを手に取っている絵。近くには別のぬいぐるみやおもちゃも陳列されている
『この人がともだちになってくれるのかな?』
犬のぬいぐるみはワクワクしていました。背の高ーい人がおうちに帰ってくると、同じくらい背の高ーい人がいました。
『この人もともだちになってくれるのかな?』
犬のぬいぐるみはもっとワクワクしてきました。
背の高ーい人たちは犬のぬいぐるみを連れて、小さなベッドのところに来ました。
★夫婦がぬいぐるみを抱えてベビーベッドの方へ向かっている絵
そこには、ちーっちゃな人がねんねしていました。背の高ーい人が言いました。
「今日からこのワンちゃんがともだちだよ」
『この子がわたしのともだちなのね!』
犬のぬいぐるみは、それからワンちゃんと呼ばれるようになりました。
ちーっちゃな人は赤ちゃんでした。背の高ーい人たちは赤ちゃんのパパとママでした。ワンちゃんは赤ちゃんとずっと一緒です。
★赤ちゃんとすぐ横に近づけてもらっているぬいぐるみの絵
はじめて自分でワンちゃんの足をにぎったときも……
はじめて座ってワンちゃんをだきしめたときも……
ワンちゃんをワブーと呼んだり、ひっぱってあそんだり、ハイハイできるようになったときもずっと一緒でした。
『赤ちゃん、ワンちゃんは幸せよ』
☆ページ上段、赤ちゃんがぬいぐるみの足をにぎっている絵
☆ページ中段、赤ちゃんがぬいぐるみを後ろから抱きしめながら、耳をかじっている絵
☆ページ下段、赤ちゃんがハイハイの姿勢でぬいぐるみの耳を引っ張っている絵
ある日のことでした。
赤ちゃんがワンちゃんをひっぱっていると、耳がポトリととれてしまいました。
赤ちゃんは泣いてしまいました。ワンちゃんの耳を取ってしまって悲しくなったのでした。
『赤ちゃん、泣かないで!』
泣いている赤ちゃんを見て、ワンちゃんも悲しくなりました。
★耳が取れたぬいぐるみと泣いている赤ちゃんの絵
「あらあら、ワンちゃんかわいそうに。ママに任せて」
ママはワンちゃんの耳をぬってくれました。今度は取れないように、しっかりとね。
ぬったあとが残ってしまったので、ママはリボンでかくしてくれました。
『赤ちゃん、どうかしら?』
赤ちゃんはキャッキャッと喜びました。ワンちゃんが元気になってうれしかったのです。
★耳にリボンをつけたぬいぐるみと、嬉しそうな赤ちゃんの絵
それからも、赤ちゃんとワンちゃんはずっと一緒です。
赤ちゃんの背が高ーくなっても一緒です。でも、ときどきしかにぎったり、ぎゅーっとしてくれなくなりました。ちょっとだけワンちゃんは寂しく思っていました。
★中学生女子の部屋の一角に置かれているぬいぐるみの絵。ほこりはかぶっておらずきれいに手入れされている様子
それからもっと経ったある日、ワンちゃんはかわいいドレスを着せてもらいました。
「ワンちゃん、似合ってるね」
『ドレスってはじめてね! かわいいね!』
★白いドレスを着ているぬいぐるみの絵。リボンも変わらずにつけている
今日は大きくなった赤ちゃんの結婚式でした。ワンちゃんは受付に座っています。すると、タキシードを着たぬいぐるみがおとなりに座りました。
『あらあら、お久しぶり』
『おやおや、お久しぶり。素敵なともだちには会えたかい?』
『もちろんよ!』
★結婚式場の受付に置いてある二つのぬいぐるみの絵。二ページ目に写り込んでいる別のぬいぐるみがタキシードを着ている
おしまい
★ベビーベッドの近くに二つのぬいぐるみが飾ってある絵
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