パパのかばん
ユータはパパが大好き。
いつもピカピカのスーツとネクタイで、かっこ良く仕事に出かけるからです。
でも、ユータはひとつだけパパに変えてほしいところがありました。
★玄関で靴を履くスーツのパパ。傍らには古い鞄が置いてある。そんなパパをユータが笑顔で見送っている絵
パパのかばんです。
パパはスーツもネクタイも、くつもおサイフもみんなピカピカ。
でもかばんだけはちょっと古くてかっこ悪いのです。
(パパ、新しいかばんにした方がかっこ良いよ)
ユータはそうやってパパに言いたかったのですが、なんだか言えなかったのです。
★古いかばんの絵
じゅぎょうさんかんの日のことです。
ユータのパパとママも来てくれていました。
今日は家族のことを書いた作文を発表することになっています。
「それじゃあ発表したい人、手をあげて」
いくつもあがった手の中で、選ばれたのはユータでした。
★たくさん手があがっている絵
「ぼくのパパは、いつもかっこいいじまんのパパです。でも、いつも持ってるかばんは新しいかばんにした方がぼくはいいなと思います。なんでかというと、古くてあんまりかっこよくないからです」
ユータは勇気を出して、いつも思っていたことを作文に書いたのでした。
★ユータが中心で発表している様子とみんなが驚いた顔をしている絵
おうちに帰ってから、ママはユータに言いました。
「パパはあのかばんを大事にしてるのよ、あんな風に言ったらパパかなしくなっちゃう」
ユータは泣きそうになりましたが、ママに説明しました。
「でもかばんだけ古いんだよ。パパにはかっこ良くないとやだよ」
ユータがそういうと、パパはユータの頭をなでてくれました。
★必死でママに説明しているユータの絵
「ありがとうな。でも、あれはおじいちゃんが買ってくれたかばんだからね、パパにはとくべつなんだ。できるだけずっと使いたいんだよ」
パパはやさしい声で言いました。ユータは心の中で、
(おじいちゃんに新しいかばん買ってもらえばいいのに)
と思いました。でもなんだかそんな風には言う気にならなくて、
「わかった」
とだけ言いました。
★ユータの頭をなでるパパとユータがちょっとしょぼくれた顔をしている絵
それから何日かしたある日。
学校から帰るとき、ともだちに呼ばれたのでユータはパッと振り返りました。そのとき……
バリッ
ランドセルを引っ掛けてしまいました。木の枝がでっぱっていたのに気づかなかったのです。
ピカピカだったランドセルに、キズがついてしまいました。
★あっ!と驚いた顔のユータがランドセルを引っ掛けてしまった絵
おうちに帰ってから、ずっとユータはランドセルについたキズを見つめています。
そんなユータを、パパとママは見守っていました。
★ランドセルを見つめるユータの絵
ユータはパパのかばんのことをちょっとだけ見直しました。
古くてちょっとキズがあっても、かっこいいパパのかばんです。
今日もパパはいつものかばんで出かけます。
ユータもいつものランドセルで学校に行きます。
「行ってきまーす」
★パパのかばんとユータのランドセルの絵
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