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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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映画メモ『ヤクザと家族 The Family』


※これから『ヤクザと家族 The Family』を見ようとしている方はこの記事を読まないでください。あなたの貴重な映画体験を奪いたくありません。見るか迷っている方はすぐに上映劇場を調べて可能なら見に行ってください。すばらしい作品ですが残念ながら現在上映している映画館が少ないのですぐに行動してください。

公式サイトは上映劇場を調べるだけにして詳細見ずに映画館へ行くことをおすすめします。文章も写真も動画も最高なのですが写真などをじっくり見てると話の流れがわかってしまうし、あらすじも書いてあります。

エンディングロールは見ないという方もいるかもしれませんが、しっかり見てほしいです。私は劇場内が明るくなってやっと立つことができました。

この映画を見る予定はないけど読んでくださるという方はご自由にどうぞ。公式サイトの「ストーリー」を読んでからの方がわかりやすいかもしれません。






※映画の感想(もちろんネタバレあり)の部分だけ読みたい方は「絆と希望の物語」からお読みください。


すごい映画を見てしまった

綾野剛さんが好きだ。
出演している作品すべて見ているわけではないニワカファンだがドラマ『空飛ぶ広報室』、『コウノドリ』、『MIU404』はとてもよかった。

そんなニワカの私が見ても「俳優、綾野剛が全身全霊を込めて演じ上げたすごい映画を見てしまった」と感じる作品だった。
公開当初はテレビで舞台挨拶の模様や出演者のインタビュー映像なども流れていたが近頃はあまり話題になっておらず上映されている劇場も少なくなってきた。今こそこの映画のすばらしさを語る時だと自分を奮い立たせてパソコンに向かっている。実は映画を見たその日にこの記事の下書きをしていたのだが書こうとするといろいろ考えこんでしまって手が止まってしまうのだ。これはそういうタイプの作品だ。
上映しているうちに記事を書いて一人でも映画館に足を運んでくださる方が増えたらとてもうれしいし、見た方に感想をお伝えできたらと思う。コメント欄に書き込みも歓迎いたします。解釈など違ったりしたらゼヒ教えてください。

絆と希望の物語

この作品は単なるヤクザ映画ではなく人間ドラマであり、絆と希望の物語だ。社会問題にもスポットを当てている。
覚せい剤に溺れた父親を亡くし社会から見放された山本賢治が柴咲組という「家族」を得て変化していく。粗雑だけど真摯に生きる賢治の姿には心を揺さぶられる。
キャバクラでやり合いになり賢治は怪我をしてしまうが偶然隣に座ったホステスの由香がごく自然に手をのばし傷の手当てをし彼も黙ってなすがままになっている。後にわかるが由香にも家族はおらず、孤独な2人があの場で巡り合うのは安っぽい言葉だが必然だったのではないかと感じる。

その後、柴咲組と侠葉会との争いが激化し若頭の中村が侠葉会の川山を刺してしまうが賢治は罪をかぶり「家族」である柴咲を守るために服役することになる。出所してきた彼に14年という月日を一目で感じさせるのは年齢を重ねた容姿だけではなく、やわらかくなった視線だ。出所後すぐに由香の所在を気にする姿を見て彼女が賢治を変え、彼女を想うことで14年の服役に耐えられたのだと確信する。一緒に暮らすようになり「おはよう」、「ごめん」という当たり前の言葉が自然と出るようになり、昔の仲間に声を荒げることもなくなった彼はもうヤクザではなく由香のパートナーであり14歳になった娘、彩の父親であるただの山本賢治だった。

「家族」になり居場所と人のあたたかさを教えてくれた柴咲が病床で「家族を大事にな」という言葉を投げかけ賢治は動き出す。そして、馴染の店の主・愛子と息子の翼、由香と彩という2つの家族を守ることができ海辺でタバコを吸う賢治はおそらくやり残したことと死に方を考えていたのだろう。細野が現れて刺されて彼は安堵したのではないだろうか。細野の怒りと悲しみを受け止め謝罪できたこと、由香たちに迷惑をかけずに死ぬことができることに。
海に沈んでいく賢治の表情はとても安らかだ。心からの愛と感謝を感じながら少なくとも2つの家族を守って死ぬことに満足もしていたのかもしれないし、「幸福」を感じていたのかもしれない。
若い頃に柴咲に頭を撫でられ号泣し逮捕前に抱きしめられていた賢治は、成長した翼の頭を撫で自分を刺した仲間でさえも抱きしめるようになった。彼は柴咲と由香の絆と愛で受け止める側から与えられる側になり「人間は変わることができる」という希望を見せてくれたし、賢治が死んだ場所に花を手向けに来た翼と彩の出会いは未来を感じさせるのだ。

ヤクザは暴力的、「反社」は悪だと訴えたい映画ではないというのは見ていればすぐわかる。私はこの作品を見た後に賢治の父親が覚せい剤をやっていなければ、いい刑事に出会っていれば、違う「家族」に出会っていたらこの物語はまったく別のものになっただろうと考えこんでしまい、うまく文章にすることができなかった。

主題歌の「FAMILIA」 millennium paradeには泣かされるし、彩役の役者さん(公式サイトにも記載がなくお名前がわからない)が演技はもちろんすばらしいが目が由香、背格好が賢治という奇跡の容姿だし、賢治が海に沈んでいくシーンがとてもいい。あのシーンは私が大好きな映画を彷彿とさせるし賢治の表情とあの美しさでバッドエンドという感じがしないのだ。まとまらないがこの3点は書き記しておきたかった。

映画や芸能界に詳しいわけではないので偉そうなことは言えないが、とにかくキャスティングが隅から隅まですばらしい。脚本、演出、編集、音楽、ロケ地、衣装、小道具までまったく手を抜いておらず、すべてがパズルのピースのようにぴったりとはまり化学反応がおきて私の脳裏から離れなくなってしまった。一生見続ける映画だと思う。
もう1度劇場に行くのは無理そうだが映像が発売されたらぜひ購入してじっくり堪能したいと思う。

私は気に入った映画を何度も見るようなタイプで劇場に足を運ぶことも多くはないので「映画レビュー」というタイトルは恐れ多くて「映画メモ」とさせていだいた。今後もいい作品と出会えたら記事にしていきたい。

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