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なぜ中国は海運のスマート化・無人化を進めているのか?(菜鳥グループ 海運サプライチェーン 李芳芳氏/Morning satellite Jun,2024)
中国では、最先端技術を駆使した港の知能化、スマート化が国を挙げて進められている点について解説する。
中国南部に位置する深圳港は、年間約3000万個のコンテナを扱い、世界第4位の港である。1990年に開校し、7年前からスマート化を進めている。5G回線と北斗衛生システムを活用し、万が一に備え、遠隔でスタッフが監視するのは、全体の僅か2%。そして、構内でコンテナ運搬を担うトレーラーのおよそ1/5にあたる38台が自動運転で運用されている。
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また、クレーンはほぼ全て無人で運用され、クレーンを司る心臓部では、スタッフ2人で26台を管理し、コンテナを船から持ち上げる部分のみを人が操作し、その後の移動とトラックへの積み込みは全て自動で行っている。このように作業の自動化が進み、労働環境が大幅に改善している。
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手続きなどのソフト面でもスマート化を進めている。海外へ輸出するコンテナ港の玄関口では、ドライバーが紙による書類手続きを行うことから、約2時間を要していたが、今はオンラインによる作業アプリで行うことで、10分程度で終えることが出来る。これにより、1日3〜4回から5〜6回まで運べる回数が増え、利益が増えたとの報告を受けている。
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また、すべての貨物の所在を自動で把握させ、効率化を進めている。以前までは、コンテナを移動する度に手作業による入力していたが、現在は各所にあるカメラでコンテナを自動追跡している。
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中国では、2017年に政府が10年かけて、港のスマート化を進める政策を発表し、天津や上海など国内18の港がスマート化を終えている。2024年の中国からの輸出量は昨対で5割増加し、貨物が増えていることから、港がスマート化しない限り、増加分を処理することが出来ない現状である。特に、海運市場では船舶の大型化が進み、港の作業効率の向上は不可欠である。
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スマート化の効果は中国だけではなく、世界に波及している。以前まで、中国の深圳〜シンガポール・マレーシアへの配送には約20日間要していたが、今はその半分ほどに短縮出来ている。港のスマート化は海運全体の効率とサービスを変えた。
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コンテナ取扱量の世界ランキングを見てみよう。
TOP 10のうち、中国の6つの港がランクインしており、その6つ全てがスマート化を導入している。(香港も開始している)
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中国は少子高齢化が進み、今後労働力不足が懸念されている。好きな時に働いて稼ぐことができるフードデリバリーやライドシェアドライバーが人気で、一方港のような、きつい、汚い、危険が伴う仕事は不人気である。スマート化により港湾作業効率が4-5割改善したことから、一つの対策としては有効と考えられる。
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こういったスマート化は、中国とシンガポールが先行、ヨーロッパやアメリカ、日本は遅れを取っているため、日本にとっても参考にすべき点が多いと考えられる。