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【再入荷済】書評:『鉄緑会 東大英単語熟語 鉄壁』

 この単語帳は、東大受験の専用本ではない。日本で高校レベルの英語を学ぶ全ての人に役立つと自分は思っている。(Amazonリンク

 東大・京大といった「トップクラス」の大学の問題を見たことがある人は、奄美には少ないかもしれない。「最難関」などと呼ばれるために何やら恐ろしく難しい問題が出されるというイメージがあるかもしれないが、いざ開いてみると実は大方標準的で真っ当、かつためになる問題が出ている(かなり難しい問題も少し混ぜてはくるのだが、基本的に「マニア」「天才」以外は解かない)。決して重箱の隅をつつくようなマニアックな問題だらけの世界ではない。入試突破の難易度が高いのは、少なくとも東大に関しては、それを平均的な受験生よりも速く正確に解かねばならない時間設定になっているからだ。
 他の大学は、そうしたトップクラスの「真っ当でためになる」問題をお手本にして問題作成をしているとも言われている(実際の真偽の程度や差は確かめようがないが)。東大・京大の出題動向は、全国レベルの影響を持つのかもしれない。

 さて、それならばこの単語帳は、英語の「真っ当でためになる」問題を解くのに役立つはずである。自分はそれに対して大きくYESと答えたい。
 この単語帳では、直訳では伝えきれない言葉のニュアンス(感覚)図や例文を丁寧に駆使して補っているのが非常に大きな長所である。是非とも意識の高い高校生に勧めたい。この単語帳を選ばなくても、例文を介して文脈と意味の関係を重要視した単語帳を使って欲しい。

 ・・・そもそも、なぜ言葉のニュアンスや文脈がそんなに大事なのだろうか。
 例えば、奄美で育った人なら「さばくり」という単語をよく知っているだろう。では、「さばくり」を標準語訳せよ、と言われたら、あなたは何と訳すだろうか。

 自分は少なくとも一瞬立ち止まって考えると思う。「仕事」と訳すべき時もあるし、「用事」とすべき時もある。しかし、このどちらかにさえ訳せば済むかというと、文脈によってはそうでもない。これに当てはまらない例は、あなたも何となく思い浮かぶのではないだろうか。どうでも良いルーティーンみたいなことをしている人を指して「あれはもう◯◯さばくりばっかしよ」と言うこともある。
 同様に、英語も一辺倒に特定の単独の言葉に直訳・置き換えをすれば済むものではない。生きた人間と文化の中で使われる言葉はみなそうだ。文章の中で単語を適切に訳すには、ニュアンスや、文脈と単語の意味との関係を理解することが重要である。

 特に、簡単な単語を間違ったニュアンスで覚えているという自覚がない人は、意外と多いのではないだろうか(hearの代わりにlistenを使ってしまうなど)。
 仮に「さばくり」を、「①仕事・②用事・・・えっと、①仕事・②用事、意味が二つか・・・」とブツブツ覚えている島外の人がいたならば、その英語バージョンが私やあなたかもしれない。そして、自分にとっての「例外」が出てきた時に、慌てたり混乱したり、訳の分からない答えを書いたりする羽目になる。

 世間的・偏差値的に「レベルが高い」とされる大学なら、英語の問題で大抵このポイントを突いてくる。特に英作文や、少々ひねった英文和訳を出題する大学はそうだと考えた方が良い。典型的な、直訳した一つの言葉を覚えさせる単語帳の「しもべ」になってしまった人を(度合いは異なるだろうが)なるべく減点して、そうでない人と差をつけるための問題を出してくる。

 もちろん中学生レベルなら、まずは基本的な英単語の直訳を大量かつ機械的に覚えてみないと何の文章も読めないし、授業にならず、自学も不可能である。これはこれで重要なステップである。
 あなたが自分で中学レベルの英語をマスターしていないと思うならば、この単語帳を手に取るのは時期尚早だ。中学レベルの単語帳を必死になってマスターし、高校受験レベルの簡単な文章を、ゆっくりででも確実に自力で読めるようになるのが先決だ。その中途段階では単語の意味をいくら機械的に調べ直しても構わない。

 そろそろ書評を締めなければならないが、東大・京大を目指した(かつ合格した)経験がある自分にとっては、この「鉄壁」はかなり重宝した。辞書代わりに使うのが非常に便利だった。逆に、頭からしらみつぶしに読んだことはない(これは人による)。
 もっと詳しく言えば、初級者レベルの英英辞典併用した。英英辞典とは、要するに英単語の意味がより簡単な英語で書かれている、英語の国語辞典である。英語を無理に日本語に直さず、簡単な英語で説明する辞典を選ぶことには、ニュアンスの脱落を減らす効果(上記を踏まえれば順当そうなこと)がある。
 受験生時代にAmazonでロングマン英英辞典の初級者用を購入した。初級的な単語の正しいニュアンスは英英辞典で調べ、少々難しい単語は「鉄壁」で調べる、といった作戦を、ひたすら読解・英作文をこなしながら実行し突き進んでいったら、気がつくと合格ラインに達していた(当然ながら本番を想定した過去問の演習も6,7回はキッチリやったが)。また自力で問題に食らい付き、信頼できる教師に添削を受けるサイクルが不可欠だった。
 言うまでもなく、これで身に付く英語のスキルは一生ものである。何か質問や感想が生じたら、是非ともMasaya MUKAIに連絡してほしい。(奄美の中高生限定)

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