流れ星を拾ったら③
それからは、あれよあれよと人生が動き始めた。
仕事が忙しいから引っ越しは月末にお願いしたいというと、来週ではどうかと言ってきた。さすがにあまりにも急ではないか。
「月末はスケジュールが立て込んでいるのでこれ以上値引きはできませんが、来週の日曜日なら新人研修を兼ねた荷造りサポートを無料でお付けして、さらに引っ越し代金は半額でお引き受けしますよ。」
もちろん即答で了承。
そんなわけであっという間に引っ越しが完了した。
荷造りサポートっていうのは最高だ。プロの仕事は尊敬に値する。
思わぬところから彼女の忘れ物が出てきたりしたので、「引っ越しするので送りましょうか?月曜日までに返信がなければ処分します。」とメールを送ったけれど、既読にもならなかった。
フラれた男の未練。見苦しいもんだ。
既読にならないなら、と月曜の朝に思い切って猫の写真を送り、「そんなわけで全部捨てるからな!バカヤロー!」と送ってみたけど、もちろん既読無視。逆に清々しいよ。
僕の思い出から彼女は抹消することにした。向こうもすでに削除済みだろううし。
新しいマンションのごみステーションに最初に出したのは彼女の忘れ物。でも、お気に入りのストールだけでも返してあげたかった。すごくよく似合っていたのに。
渡すつもりだった誕生日プレゼントのネックレスは7万円もしたのでさすがに捨てられず、猫の首輪のチャームに加工してもらうことにした。
質屋にでも持って行ったほうが良かったかな。
まぁいいや。
そんな感じで僕と猫との新しい生活が始まった。
猫の名前はまだ迷ってる。
なかなか決断できないのが僕の欠点。なんでも君の言う通りでいいっていうのがさ、楽なんだよね。
本当に嫌だったらもちろん拒否するよ。
だけど、僕は君の笑顔を見ていられるということが幸せなんだ。
そうそう、やっぱりこの猫は普通じゃない。
一晩経ったら子猫じゃなくなっていた。あっという間に大人の猫になるなんて。なぜかわいい時期の写真を撮っておかなかったのかと悲しくなった。
それ以外は、特に不思議なところは見当たらない。
市販のキャットフードをおいしそうに食べて、水を飲んで、寝てばかり。
前脚で目を隠して丸くなって寝ている。
そうだ、マンションに住んでいる猫たちの名前と被らない方がいいよな。
名前を決めるのは先送りにしよう。決まるまでは「にゃーにゃ」とでも呼んでおくか。
続く
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流れ星を拾ったら① 流れ星は青い卵
流れ星を拾ったら② 引っ越そうと決意
流れ星を拾ったら③ 猫と引っ越し
流れ星を拾ったら④ 猫専用マンションへようこそ
流れ星を拾ったら⑤ 猫の名前はルネ
流れ星を拾ったら⑥ 僕の特技は速読
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