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レコードと部屋と彼19 -マッチングアプリで3週間の本気の恋をした話-

料理作ってもらってる間、僕も掃除とか、してた方がいいのかな。




うちに来てご飯作ってよ。


そう言う話になって、日にちを決めて。電話をした時に彼がふとそう言った。

あ、ちゃんとそういうこと気にする人なんだ。

作ってもらいっぱなしは、気になるのかな。


別に好きにしてていいよって言ったら、

「そっか、僕がお金出せばいいか」

うん、まぁ、気の済むようにやってください。

私は料理好きだし、食べてくれる人がいると張り切るから。


夕方くらいから台所に立って、料理を始めた。

結局、彼は一度買い物に出掛けて、梅干しと長芋を買ってきてくれた。

明日、作り置きでカレーを作ってあげる約束をしてた。

LINEで、牛肉のカレーを作った話をしたら、「いいなぁ」って言われたから。作っておいてあげようか?って言ったら喜んでた。



正直、料理の腕には自信があった。

お願いしといた材料で、調味料とかその他あるものを見ながら、適当に何でも作れると思っていた。


1時間半くらいかな、台所に立って。

お皿がなかったからワンプレートに載るように3品くらいおかずを作り。それとは別にご飯と汁物。なかなかの品数だと思ったんだけど、意外と彼の反応は薄かった。


朝、昼あまり食べないで、夜がっつり食べるタイプのようで、たくさん作ったんだけど全部平らげてくれた。食べ始めたら黙々と、何も言わずに全部きれいに食べてくれた。

きれいに食べてくれたから、美味しかったということなんだと思うんだけど。

それだけでも十分なんだと思うんだけど。



「美味しい」って言ってもらえなかった。



ちょっと、引っ掛かった。

「たくさん作ってくれてありがとう」

とは言われたけど。

彼の口に合わなかったのかな。



私は西の生まれ。だしをしっかり使った薄味が基本なので、北国の人から味付けが薄いと言われたことがあった。住んでた地方、家の味付けによって好みが違うってことは分かってたから、相手が濃い味付けを好むときはできれば合わせたいと思っている。「味付けが薄い」って言ってもらえれば相手の舌に合わせるし、そこまで自分の味付けに固執はしない。


でも。言ってもらえないと、分からない。口に合っているのか、どうか。



このときは、あまり深く考えなかった。

味の好みは人それぞれだし、今、口に合わなくてもこの先、相手の好みに合わせて味を調整できたらいいかな、と軽く考えていた。



ご飯の後は、ゲームをした。

スーパーファミコン時代のゲームができるハードを彼が持っていて。

彼自身がはまってるゲームと、私が好きなゲームとをそれぞれやった。



この時代のゲームはちょっと難しくて。攻略本とかないと、次にどこへいけばストーリーが進むのかが分からない。

彼がやってるゲームは、100点満点を目指しているらしく、何かアイテムを一つでも取り忘れると100点にはいかないそうだ。


「簡単にうまく行くのは好きじゃないんだよね。できないものを、どうやったらできるようになるかなって考えて考えてやるのが好きなんだ」


攻略本とかは見ないで、地力で到達するのに達成感を覚えるのだ、と。


アクションゲームは好きみたいだけど、反面、RPGはあまり得意じゃないらしく。最初に会ったときの約束通り、ゲーム機に入っているFFシリーズを少し進めてあげた。

開始から30分くらいしかプレイしていなくって、本当に初期の初期で次にどうやったらいいか分からなくなったんだって。

私もストーリーを覚えてたわけじゃないけど。こういう時はキーマンに話をすればストーリーが進むということをRPGの経験上知っていたから、手当たり次第に人に話しかけて、ストーリーを進めることができた。


そんなにRPGは好きじゃないのか、40分くらい進めたら、今日はもうこのへんでいいやって話になった。



もう寝ようかって話になって。順番にシャワーを浴びて髪を乾かして、布団を敷いて。

横になったらキスをして。お互いに求めあって。本日、二度目のセックス。身体の相性が合うのだろうか。私は彼にされるがままに気持ちよくなって。何かを問いかけられても答えられないくらいに。

終わったら、お互いに身を寄せ合って眠った。

シングル用の小さな布団に二人でおさまって。

彼の吐息を身近に感じながら。

無防備な彼の寝顔が愛おしかった。

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