月光浴
窓をあけた
窓をあけて光と風が絡まる瞬間を見極める
今かなって
窓枠から空気の塊へ身をのせる
水の中を泳ぐように体が空をすべりだす
玄関から出ていくのもいいんだけど光が届きにくいし
湿気が若干邪魔をすることも多いしね
かび臭い黒い布は空気をぐっと捕まえて弾みをつけた
厚みのある光沢のある姿になった
エム(笑):頼むわー ミルクがバイト先から帰ってない
から迎えにいくところなんや
黒い布はバサッと「わかったわ」と合図をするとミルクの気配を追った
エムがあっちらへんだ思っている方向をを「ふむ」と理解しながら方向を
定めた
エム(笑):あんな、バイト先はブラレス駅の3つぐらい向こうにある
セントミカエル駅のちかくやねん
黒い布:「バサッ」
寒いけどこの冷たさは冬独特で好きやな
顔だけ冷たい風をうけて
体は黒い布が冷たい風の侵入を防いでくれていた
こんな黄色い月野曜日には月光浴を楽しむのにええんやけどな
絵~かいてると時間忘れてしまって
ミルクがこんな遅い時間まで外におらへんかったら
外にでることもなかったからまあ、月光浴楽しめてよかったってことかな
ブラレス駅をこえて、セントミカエル駅に近づく
セントミカエル駅の周辺は音楽を提供する人が多く住むところで
風に音が溶け込んでいる気配がする場所だ
エム:あーこのあたりかな、なんや…あいついつもより匂いがバニラやわ
どこにおるかわかりやすいけどな
黒い布:バサッ
っと方向をかえると上空からコーヒーカップを伏せたような形を
した建物に向かっていった