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ヤンバルクイナに見る生存戦略
みなさんは、ヤンバルクイナという鳥をご存知だろうか?
先日、NHKの「ダーウィンが来た!」という番組でこの鳥が取り上げられていたのだが、なんでも、今ものすごく数が減っていまっているのだそうだ。
それで、人が飼育したヤンバルクイナを野生に返すプロジェクトが立ち上がったのだが、これまでうまくいかなかったらしい。
理由は、人が飼育したヤンバルクイナに危機管理能力が備わっていないから。
人が卵から育てたヤンバルクイナは、敵の存在も知らなければ、その対処法も知らない。
そのまま、野生に放っても1年以内に死んでしまうそうだ。
しかし今回、とあるヤンバルクイナが初めて生き延び、つがいを見つけ、雛を孵した、という内容だった。
なぜヤンバルクイナは生き延びることができたのか。
危機管理能力を育てる「教育」を取り入れたのである。
蛇の剥製、カラスの模型を作って、ヤンバルクイナが雛のときから襲ってみせる。このとき、野生のヤンバルクイナの警戒音を聞かせるのだ。
この教育を繰り返すことで、野生に放っても敵に対処できるようになった。
実際、人が育てたヤンバルクイナが自分のこどもにも警戒音を聞かせ、敵の存在を教えるまでに成長した。
ところで、人間も動物である。
しかし、今の人間たちは「野生」とはほど遠い生活をしている。
私たちの「本能」とはなんだろう?
現代社会において、動物的な本能に頼ってこどもを育てている親がいるだろうか?
野生の危機管理能力を教育をしている親がいるだろうか?
人間は脳が発達したおかげで論理的にものを考えることができる。
そのせいで、いま巷には多種多様な教育が存在している。
学校、学習塾、家庭教師、習い事、ビジネス塾、社内研修、と身の回りには教育産業で溢れている。
こどもを育てている身としては、本人にやりたいことがあればなるべくそれを尊重してやりたいと思っている。
そのために親ができることは環境を用意することくらいで、あとは子を信頼し放ったらかしにする勇気も必要だと思っている。
だけどそれは、ヤンバルクイナで言うと、「巣立ち」を迎えた鳥に対してである。
野生に放たれる前に適切な教育を受けなかったヤンバルクイナはあっという間に絶えてしまった。
それと同じで、人間も自分でものごとを考えられるようになるまでは、適切な教育が必要なのだと思う。
ヤンバルクイナの親がこどもの前で警戒音を出しながら敵に向かっていく姿を見せたように。
それは必ずしも現在の学校教育ではないと思う。
ところで、私が教職免許を取得して教員にならなかった理由のひとつに「教育は幻想だ」と思っていたことがある。
学校の先生なんて、そもそも世の中の大人なんてそんなに大した存在でもないのに、偉そうにこどもに「教える」行為をおこがましいと思っていた。
こどもはそんなに馬鹿ではない、と。
しかし、今回ヤンバルクイナの一件を見て、必要な教育があることは事実であり、そのひとつが危機管理能力であると感じた。
それは学校教育に代表される学科などではなく、もっと本質的な、ものの考え方だったり生き方ではないのか。
そしてその教育を施すことは大人の義務なのではないかと感じた。
例えばこどもの性教育の話にしても、タブー視してるといざというとき危険が分からずヤンバルクイナ失敗例と同じことになる。危険性の認知、回避方法、正しい対処方法ときちんと教えておくべきだと思う。
— 京野 誠|エンジニア×数学×知育:note30日チャレンジ中 (@m_kyono) May 31, 2020
今の世の中を生き延びていくための知恵を、親が背中を見せ、言葉を尽くし、伝える必要があるのではないかと思った。
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