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【指導観④】〜“両打ち”のススメ(スイッチ・メソッド)〜

今回は、“両打ち”の話です。

私の打撃に関する考えとして「高校に入学し、野球部に入部したら、全員両打ちにチャレンジしてみたらいいのではないか」と思っています。

その考えに至った経緯について、今回の投稿の中で述べてみようと思います。

前任校での経験

前任校で野球部の顧問をしている際の話です。

まだこの時は教員となり、3〜4年目の頃でした。

野球部でも部長ではなく、第4顧問をしていた頃です。

ちょうど今と同じ季節、冬の時期だったと記憶しています。

当時の監督が、あまりにも打てない選手たちに、

「右(打席)で打てないのなら、左(打席)で打て!」

と、逆の打席で打つ練習をするように指示されました。(たまたま全員右打者でした)

ちょうどこの冬の時期。

2年生からすると、もう最後の夏まで半年ちょっとという時期に、彼らの今までの野球人生の中で経験したことのない逆打席。

私は、大丈夫なのかと心配になりました。

しかし、不思議なことに。

みんな、左打ちをみるみる習得していきます。

小中学生の頃からずっと野球に打ち込んできて、ずっとやってきた右打ちより打ててしまうんです。

そして、これまで通りの右打ちをしても、以前より良くなっているのです。

理由を考えましたが、

◯ これまでずっと右打ちの練習をしてきて、変なクセが染み付いてしまって、簡単には直せないから。

◯ これまでずっと右打ちの練習をしてきて、体の左右の(筋肉の)バランスが崩れてしまっていたのが、左打ちの練習もするようになり、体の左右のバランスが整ったから。

◯ 脳に常に刺激が与えられて、新たな伝達回路が作られ、器用になったから。

※詳細は【指導観③】〜“脳”に刺激を与える〜をご覧ください。

などが、挙げられるのかなと思います。

普通だったらこんな荒療治をすることはないかと思いますが、現場でこの経験をできたことは私にとって非常にプラスの経験となりました。

▲ この代の夏の大会前の雑誌でのチーム紹介

気づけば“両打ちノッカー”に

その後、数年経ちました。

私は、前任校の現監督と出会ってから、現監督に刺激を受け、打撃動作のメカニズムについて関心を持つようになり、打撃動作のメカニズムと指導法について学びを深めるようになっていきました。

そして、学んだ内容を自分自身で実験するようになりました。

もともと右打ちのため、まったくできない左打ちで一から練習してみました。

バットの握り、トップの位置、ボトムハンド(グリップ側の手)の使い方、トップハンド(ベット側の手)の使い方、下半身の使い方、スイング軌道などを、右打ちのときと比較しながら自分の体がどのように動いているか確認しながら練習していくと、気がついたら左打ちでも綺麗に振れるようになりました。

そして、左打ちでもノックができるようになったのです。
(左だと大きなフライは打てませんが…)

その影響なのか、気のせいかもしれませんが、右打ちでのノックも体が動きやすくなった感じがします。

それ以上に不思議だったのは、(自分で言うのは恥ずかしいですが)左打ちの方がスイングが綺麗で、打席に入ると左打ちの方がボールを見やすかったことです。

長年染みついた右打ちの変なクセがないからだと思います。

そして、左打席の方が見やすかったというのは、現役時代に知りたかったですね。

指導者側の立場になってからじゃ遅かったです。

なぜ左打席の方が見やすいのかは、今ではある程度の見当がついています。

詳しくは、後述します。

スイッチ・メソッド

『ベースボールクリニック』という野球専門誌の12月号に、気になる記事が載っていました。

連載「他競技から学ぶ野球の競技力向上〜共通点と相違点の理解を通して〜」の、今月回「ゴルフ競技との比較から考える野球の打撃」という記事です。

その中で、左右両方で打つ練習をする“スイッチ・メソッド”が紹介されていました。

片側だけのスイング練習だと、練習強化期に急にスイング量を増やすことで、腰などのケガの危険性を高めてしまうと指摘しています。

また、「(片側での)スイング数が増えるほどスイング速度が低下するので、スイング速度の向上にはつながりにくい」とのことです。

記事の中では、スイッチ・メソッド導入時には、反対側のスイングを少量にして2:1程度の割合で、小さいスイングから始めることを勧められています。

実際に、プロゴルファーは反対側でも利き腕側の約88%でスイングができるそうです。

野球界でも、巨人の浅野選手が左打ちで調整を行ったり、メジャーリーガーのダルビッシュ投手が左投げでキャッチボールをして調整したりしているのが、よく知られています。

プロになる選手にも、自然と“スイッチ・メソッド”を取り入れている選手も少なからずいることがわかります。

利き目の確認

さて話は変わり、利き目について取り上げます。

野球の左・右打席と利き目の関係は非常に大きいです。

打席からの投球の見え方に大きな影響があります。

皆さんは、自分の利き目はどちらか把握していますか?

以下に、打席と利き目の関係・影響に関するネット記事を載せておきます。

利き目の調べ方も載っていたりしますので、ご覧になってみてください。

一般的には、利き目が右だと左打席からの方がボールを見やすく、利き目が左だと右打席の方がボールを見やすいとされています。

利き目側の方が、視界が広く、眼球もうまく動くためだと思います。

ちなみに、私の効き目は“右”です。

左打席からの方がボールが見やすいのは、そのためだと思われます。

自分の利き目によっては、自分の左右の打席を変えてみるのもよいのかもしれません。

両打ちのススメ

これまで両打ちに関する私の経験や、専門雑誌の記事、眼との関係などを述べてきました。

両打ちをすることには、さまざまなメリットがあると考えられます。

改めて挙げてみると、

◯ 片側の練習を長期間してきて染み付いてしまった変なクセは簡単には直せない。逆側でのスイングには、そのようなクセは関係ない。

◯ 体の左右のバランスが整う。

◯ 新たなチャレンジにより、脳に常に刺激が与えられて、新たな伝達回路が作られ、器用になる。本来の打席のスイングにも良い影響が出る可能性がある。上達・成長のスピードも早くなる可能性がある。

◯ 片側での練習過多によるケガの予防になる。

などといったところでしょうか。

デメリットとしては、左右両方の練習をする分、それだけの練習量が必要になるところでしょうか。

ですが個人的には、メリットにも書いたように、両打ちを行うことで、左右の練習の相乗効果で、上達・成長のスピードも早くなると思っています。

これまで述べてきたようなことから、私個人の考えとして、高校球児は入学後、まず両打ちに挑戦していくことを推奨したいです。
(もちろん利き目の確認もして)

中学時代までは眠っていた才能が開花するかもしれません。

そして、両打ちを長期間かけてしっかり練習していく中で、良いと思われる片方の打席を選んで、重点的に練習していくのがよいのではないか、と思っています。

これもあくまで私見ですので、私のこの考え方も1つの考え方として、捉えてもらえればと思います。

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