健忘録【7】学生さんの初実践でのハプニング⁉️
以前、学生さんの初の中心静脈カテーテル挿入の練習台になった時の話。(大学病院なので、受診した瞬間から患者に拒否権はないんだけどね……)
ICUで敗血症になって、中心静脈カテーテル(CV)を入れ替えることになった時だっただろうか?
その際には、途中までは指導医が手技を進め、ガイドワイヤーを首の大きな血管から心臓に向けて進める部分だけを学生さんが担当した。(拒否権はないとはいえ、学生さんはヤメテ~とはお願いしたけど…… しょうがない??)
その学生さんが心臓に向けてガイドワイヤーを進めている時、心臓がグニャンという気持ち悪い感覚に襲われた。
そう、心臓のすぐ手前まで入れるガイドワイヤーが心臓内に入って、心臓を刺激して何発か不整脈を起こしたのだ。
本来、ガイドワイヤーは心臓に入る寸前で止めたいところだが、確かに心臓内に入ることもある。その際は、速やかに引いて、心臓から血管に引き戻すのが常識かつ基本。
皆の目線がアラーム音を発した心電図モニターにワッと集まる。
麻酔科医は、「待って!」と言い始めるが、学生さんがその言葉を遮り、さらにガイドワイヤーを進めた後で、「もっと先に進めるんでしょ?」と明るい声で続ける。
私は自分の心臓の連続的な異変を強く感じたことで、本来引く必要のあるガイドワイヤーがさらに自分の心臓を突っつく方向へと進められたことを悟った。
ワイヤーが心臓を刺激して、不整脈が連発する。
「違う!」キツめの声で指導医がそこから交代して、ワイヤーを心臓内から血管へと引き戻す。
その後、ガイドワイヤーを引くタイミングやその背景を説明している。
おいおい、そんなことすら分からない勉強不足で確認不足の学生に、初の手技体験など私の身体でさせないでくれよ……
こんなことは、授業でも散々出てくるし、普通は初の手技の前に指導医が知識チェックをするところだ。(常識すぎて、確認しなかったのか?)
今回は、一時的な不整脈だけで済んだし、大事には至ってない。
ラッキーだ。
このように、学生としては興奮する初体験ってのは、患者にとっては身の毛がよだつホラー体験に豹変するリスクもそこそこあるのだ。(ワードチョイスは意図的です。だってね……)
ぶっちゃけ、知識はあるけれども、初めての感覚、初めての経験……
そうだなぁ……
生まれて初めて自転車に乗った人が、その瞬間魔法のように自転車に乗れるようになど決してならないのと同じだ。
やっぱり、初めての実践という奴は、そう簡単にパーフェクトにはいかない。
再三練習をして、指導を受けて成長していく。
皆が必ず通る道。
そうなんだよね。
全ての患者が、ある程度の確率で初めての手技経験のレシピエントになる。
全ての医療関係者が必ず通る補助輪付き運航する時期がある……
こういう実践が未来の名医を生む。
そうだよ。
分かってる。
自分だけがそれを避けられないことも分かってる。
けどさ、やっぱり......
選べるのであれば、知識も経験もある人にやってもらいたいと思うのが、人間心理じゃない?
普段は何も起きない、誰もが通る道?
うーん……
でもね……
こういう、まともな勉強をしていれば、誰でも知っていて当たり前のこと…… 百歩譲って、知らないことが許されたとしても…… けど、心電図モニターでが鳴り響き、一目瞭然の不整脈が出ている時に一瞬たりともモニターを見すらしない…… というのは、患者としては、ちょっと勘弁して欲しいと思うのも……患者としての本音なんだよなぁ。((心電図異常が出たらガイドワイヤーを動かすというのは知っていたんだよね…… 言い方キツイ?? 医学的にはノーダメージ....... そうだね。けど、一生練習台になることへの恐怖心は消えないかもね..... 不快感や痛みを最大限取り除く小児科もあるので、当時成人していたとはいえ....... 複雑な気持ちだ。))
あと、やっぱりできることならば、その手技に必要な知識は前もって確認して欲しいなぁ。学生本人だけが一人で確認するだけではなく、指導医が学生の知識が本当に正しいかを確認して欲しいなぁ。誤解は誰にでもある。それ自体は罪ではない…… そして、この時のように、初めての手技の際には、指導者が張り付いて、上手く行かなかった時に瞬時にフォローできる体制は大切だと思うなぁ。
ワガママが言えるのならば、同じ初のCV挿入であっても、安定した患者でやってから、本当に急がれる敗血症とかの患者へとステップアップして欲しいなぁ……なんて思う。
理想と現実は違う……
とはいえ、患者としてわがままが言えるのだとしたら、将来の名医が育つための苦痛と犠牲は最小限に抑えて欲しい…… もっとワガママが言えるのであれば、自分の命を脅かさない形で鍛錬を積める方法があったらいいのになぁ、なんて思うこともある。
まぁ、99%は実際に大事には至らない方法で鍛錬と治療を両立させていることだろう……
なんでかな?
ふとした瞬間、このエピソードが頭をよぎった。
今を大切に生きよう!