「キャッシュレス」について思うこと
国土交通省が路線バスをキャッシュレス決済に限定する実験をしているとのこと。
「キャッシュレス化」を推し進めるのは構わない。
一方で、現金も残すべきだと考えている。
キャッシュレス化の問題点
バス特有の決済方法(後払い方式)やオートチャージの問題点は以前指摘したとおりだ。
ここではSuicaなどの交通系ICカードを中心に、キャッシュレスの問題点について言及していった。
もちろんキャッシュレス決済にも一定のメリットはある。ただ、問題点を把握した上で、この記事を読んでほしい。
決済方法の種類
と、交通系ICカードのメリットに言及する前に、決済方法の種類についてここで見直していく。
見るのが面倒な方は目次を下に置いておくので、次の「交通系ICカードのメリット」にでも飛んでほしい。
2024.10.23
長かったので、記事を独立させました。
交通系ICカードのメリット
前置きとして、この交通系ICカードにはモバイルSuicaやモバイルPASMOといったスマホアプリを利用したものは除外する。
チャージに本人のクレジットカードしか利用できないのと、確か小児用ICカードの設定が無かったはず。
幅広い年齢層の人が持てる
先述したとおり、クレジットカードは審査が非常に厳しい。
子どもは年齢制限があって持てないし、老人は職業・年収あたりが引っかかる。
子どもと老人にとって、バスは地域の足である。必要な交通手段である。
すべてをクレジット決済にすると、地域の足を必要とする子どもや老人の利用が見込めなくなる。
そこで、クレジットに頼らない決済方法が求められる。
先述したQRコード決済やタッチ決済は確かに未成年向きではあるが、まだ交通機関には浸透していない。
となると、子どもや老人向けのキャッシュレス決済として、自然と交通系ICカードが候補に上がってくる。
交通系ICカードはカードの場合、2,000円支払えば10年間放置しない限りほぼ永続的に持つことができる。
(2,000円の内訳は残高1,500円+デポジット500円)
不要になれば、その時点で入金されている残高とデポジットが返金される(手数料は引かれるが)。
SuicaとかPASMOとか色々あるが、相互利用できる10社(以下「10カード」)のどれか1枚でも持っていれば交通系ICの決済ができる場所ならどこでも使える。
交通系ICカードなら定期券を発行すればデポジット500円だけで残高なしの交通系ICが手に入る。
あとはそこに非常用に1,000円くらい残高を入れておくだけだ。
チャージが比較的手軽
残高がなくなっても、バスの場合は千円札1枚を持って運転手に言えばチャージできる。(いい加減他の札にも対応してほしい)
電車の場合は券売機か、出口の改札付近にあるチャージする機械でチャージすれば良い。
なんならコンビニでもチャージできるとのこと。これは知らなかった。
そしてこのカードは子どもでも老人でも持てる。
審査がいらないからクレカが持てない人たちでも持てる。
これはクレカにはない大きなメリットだと思う。
使える場所の幅が広い
交通系ICカードは定期としても使えるが、れっきとした電子マネーである。
例えばSuica1枚これだけのサービスを享受できる。
・JR東(+一部私鉄)の定期券
・電車賃やバス賃の支払い(交通費決済)
・電子マネー
主な利用は定期券や交通費決済だが、この電子マネーの機能も使えるのは魅力的である。
先程、私は「非常用に1,000円くらい残高を入れておく」と書いた。
乗り越し・乗り過ごしなど定期区間外での利用、定期券の期限切れ、熱中症対策での自販機利用…と、やむを得ずお金を使わざるを得ないタイミングが発生する。
10カードなら、駅の自販機でも使えるし、それ以外でも全国のコンビニやスーパーなどでも利用できる。
なんしようと、熊本!
そんな「10カード」での決済を廃止しようとしているヤベー都市がある。
そう、熊本である。
台湾ナントカとかいう半導体工場が進出して来たあの熊本である。
熊本都市圏を走るバスや私鉄を運営する5社が10カードの利用を廃止するというニュース。
代わりにクレジット決済が導入されるようだ。
個人的には猛反対である。12億くらい出せよと思う。
更新機器のコストは確かにかかる。それは仕方ない。
でも、熊本にもJR九州が走っていて、そこでSUGOCA(10カードの1つ)が利用できるなら、バスや私鉄も利用できるようにして決済方法を一貫させるべきだと思う。
くまモンのICカードというものが熊本にはある。
一応交通系ICの一種ではあるが、相互利用ができない、使える店舗が限られていること、県外では全く使えないことは大きなデメリットである。
県外に需要は全く無いとはっきり言い切ってもよい。
県内でも定期の購入に必要か、よほどのくまモンファンか、ICカードコレクター以外に需要思いつかない。
10カードで十分賄えることをわざわざ地元ローカルでやってるのだ。全く意味が不明である。
また、先述したとおり、交通系ICカードはクレジットカードとは違い、子どもや老人といういわゆる「交通弱者」と呼ばれる人たちでも利用できる決済方法である。
路線バスや私鉄のメインターゲットはあくまでも地元の人間であることは忘れてはいけない。
クレジット決済の導入にはてぃーえすナンタラの進出によるインバウンド招致の目的もあるだろう。
が、そもそもここは日本である。
日本ではSuicaやPASMOを始めとした相互利用できる交通系IC(10カード)が老若男女使える決済方法として浸透しているのだから、日本人に合わせるべきである。郷に入れば、というヤツである。
そもそもインバウンドを招致したいならまず日本人が行きたい、行きやすい街づくりが必要なのではないか。
だから「交通系決済の一貫化」が必要である。それができなければ地元の客も日本人観光客ももちろん減るし、誰もいないガラガラの交通機関を見て乗りたい!と思う変人はいないだろう。
ここは日本なのだから、まずは自国民のニーズに合わせてから、外国人をいかにして誘致していくかを考えるべきではなかろうか。
そこまで外国人にこだわりたいなら、外国人に日本のICカードを買ってもらって、日本のお土産にしてもらえばいいのではないだろうか。
日本が誇る「デザイン性」のPRにもなるだろう。
そしてそのICカードで電車に乗るというリピーター効果も生まれる。
クレジットカードではそういう面白みがなくなるのではないだろうか。
一部の店舗は現金しか使えない
とはいえども、熊本の気持ちもわからなくもない。
実は小さな個人商店などでは、キャッシュレス決済を嫌うところも少なくない。
「なんでキャッシュレス使えないの?」
「今更クレジット使えないなんて…」
という声もあるかもしれない。
というのも、キャッシュレス決済をした場合、売上の約3%が決済手数料として引かれてしまうからだ。
例えばキャッシュレス決済で100万円売り上げたとしたら、決済手数料3万円を引かれて、実際にお店に入るのは97万円である。
そこから更に銀行の振込手数料も数百円引かれるし、売上の振込も月3回などと決まっていることがある。
現金と違って、せっかく売上を上げてもそれがそっくりそのまま振り込まれるわけではない。
キャッシュレス決済端末の最大手エアペイにもその旨が大きく書かれている。
この約3%が問題である。
イオンやセブンイレブンといった大手であればこの3%は微々たるものであるが、個人商店からしたら大きな3%なのだ。
だから個人商店からしたら、導入したくても決済手数料というコストが大きな障壁になる。
客を集めるためには安価で良質なサービスをしなくてはならない、でもキャッシュレス決済をしたら商売上がったり、と双方の板挟みとなる。
ちなみに過去に決済系サービスの説明をする仕事をしていたことがあったが、いかんせんこの決済手数料が障壁になる自営業さんは少なからずいた。
一番酷かったのはこちらの話を遮って、「決済手数料をなんでうちが払わなあかんのや?それ払うのはお客さんの方やろ!」と怒鳴りつけて電話をガチャ切りしたオッサン(おそらく店長)。
たぶんこのオッサンの店はしばらくしたら潰れるだろう。てか潰れろ。
客側から「なんでキャッシュレス決済使えないんですか?」と言うのは個人的にはあまり良いことではない。
不便だという気持ちはわかる。
でも店側も何でも高騰、高騰で苦しむ中、コストを抑えるのに精一杯である。
そこは汲み取って欲しい。特にお気に入りのお店であれば。
結局「現金」が最強なのよ
ここまでキャッシュレス決済について一通り解説したが、結局、どこでも使える「現金決済」が一番なのかもしれない。
誰にでもわかりやすくて、コストも掛からなくて、残高不足にもならなくて、災害やシステム不具合にも強い。
確かに重いしかさばるし、不便である。
でも、それでも残っている理由、日銀が新札を作り続けるはそこにあると思う。