視覚障がい者の方々とのイベントに参加してきました
皆さん、こんにちは。神村です。
前回は新しいタイプのリーダーシップと題して、サーバント リーダーシップとインクルーシブ リーダーシップを紹介しました。
今回は、私が視覚障がい者の方々とのイベントに参加した時のエピソードを紹介します。視覚に限らず、障がいを抱えて暮らす人々が身近にいない方にとっても、きっと学びや気付きの多いコンテンツだと思うので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
(本稿は「Off the pitch talk 」第117~119回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー&文責:神田さんでお届けします)
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#117 : https://stand.fm/episodes/60ec07d14a799e0007567593
#118 : https://stand.fm/episodes/60eeafa49ce5680007a425f9
#119 : https://stand.fm/episodes/60f155eb50854f0006947cfb
日本の障がい者の数
(神村):実は先日、視覚障がいに関連するイベントに参加してきたんです。一つ目は、日本ブラインドサッカー協会が主催するイベント、二つ目が日本視覚障害者囲碁協会のイベントです。突然だけど、日本人で視覚に障がいを持つ人数ってどれくらいだと思う?
(神田):うーん、ざっと10万人位でしょうか…
(神村):もっと多くて、およそ30万人いるんだって。じゃあ今度は、視覚に限らず日本でいわゆる「障がい者」って呼ばれる人って何人くらいいると思う?
(神田):視覚だけで30万人なので、100万人以上はいると思います。
(神村):正解は、900万人なんだって。日本の全人口を1億2千万人とすると、約8%は何らかの障がいを抱えているということです。これがどれくらいの人数かと言うと、日本人の苗字で多い順に並べたときに、上位6位(1位から佐藤、鈴木、高橋、田中、伊藤、渡辺)の総数が大体8%らしいんですよ。これらの苗字って、会社や学校で必ず見かけるほど身近な存在なのに、身近に障がい者が居るって実感があまりないじゃないですか。つまり、日常生活では健常者と障がい者が交わる機会がほとんど無いということなんです。
(神田):なるほど。とても分かりやすい例えですね。やや衝撃を受けたと言うか、内心ドキッとしました。
(神村):そうでしょ。僕もびっくりしたんだ。このお話しは日本ブラインドサッカー協会の方が教えてくれたんだ。協会のホームページにも書いてあるんだけど、今の社会は健常者と障がい者が分かれて生活している状態なんです。でも、本来は両者が当たり前に混ざり合うことが日本ブラインドサッカー協会のビジョンという話をされてて、僕は感銘を受けました。前回紹介した”インクルーシブ”にも通ずるけど、多様性とは何かを考えているだけでは足りなくて、実際に混ざらない限りは何も世の中変わらないのかなと。
(神田):机上の空論になってしまいますもんね。
(神村):そうだね。彼らのイベントが結構面白かったんだ。Zoomを使うんだけど、四人一組のグループに分かれて、各々に情報(ヒント)が与えられるんだ。その個々の情報をグループ内で共有して、一つの答えを導き出すというものです。制限時間内にいくつの正解を出せるかをチーム対抗で競うのです。厄介なのは個々の情報が図や記号、あるいは何を意味するのか分からないような文字列になっていて、それを皆でシェアするのがものすごく難しいということでした。言葉の使い方、相手への伝え方、聴く側が咀嚼して相手の話を解釈する力の大切さなどを感じながら、見えない人との「情報伝達」(コミュニケーション)の疑似体験するという狙いになっていました。もちろん、ゲームは視覚障がい者と健常者が一緒に行いました。
(神田):健常者である僕らにとっては視覚障がい者がどのように生活しているのか、またどのような世界で生きているのかというのを何も知らないことが多々ありますよね。
(神村):同時に視覚障がい者は、目が見えている人の世界を知らないわけだから、ある意味で私たちの社会は分断されてるんですよ。互いが如何に交わる社会にするかが、まさしくインクルーシブ社会を創るための大きなテーマなのだと思います。
日本視覚障害者囲碁協会
(神村):今度は日本視覚障害者囲碁協会が主催する、視覚障がい者と健常者が一緒にやる囲碁を打つゲームについて話したいんだけど、神田君は囲碁を打ったことある?
(神田):ちゃんとした囲碁は無いです。俗に言うオセロゲームなら、昔よく祖母の家でやってました。
(神村):(笑)碁石って黒と白に分かれているけど、このゲームで使う碁石にはちょっとした工夫がされていて、黒の石にだけ凸マークがついているて、視覚障がいの方でも触ることで黒と白の石の区別がつくのです。驚きなのは、視覚障がいの方は碁石を触りながら脳内に地図ができるんですよ。実際彼らのサイトにも「目が見えない私たちは脳内地図マインドマップの精度を向上させ、空間認知能力を成長させることができます」と書いてあります。
(神田):なるほど、それを聞くだけでもびっくりしますね!
(神村):しかも、対戦が終わっても、一手目や二手目がどうだったという過去の記憶が全部頭に入ってるんだ。改めて、彼らの記憶力はとても優れていると感じます。たまたま彼らには視覚に障がいがあるけれども、他の感覚器官(聴覚・嗅覚や記憶力)は人並以上に優れていることが多いとのことです。それを示すエピソードとして、例えば、会社から帰ってきて財布をポンと投げて、翌日どこに置いたかわからなくて慌てるってことありますよね。でも彼らの場合は、部屋のどこに何を置くかが完全に決まっていて、かつ全て覚えているそうなんですね。そうしないと、「目で探す」ことができない彼らは生活できなくなってしまうから・・・・
(神田):それは凄いです。僕なんてリビングのリモコンですら探すことが多いので、僕より遥かに優れた記憶力があるのがわかります。笑
(神村):一方的に凄いって思うこと自体、ちょっと変かもしれないけどね。インクルーシブ・多様性という言葉尻だけではなく、実際に体感してみることがとても大切だと思います。こちらの囲碁は、「みらクル TV」という YouTubeチャンネルでも視聴できるので、皆さんも是非ご覧ください。
障がい者の方々と実現したい世界
(神村):実はこの収録をしている7月11日、松本山雅とのホームゲームで、ブラインド囲碁将棋の体験会を開催しました。モンテディオのホームスタジアムがある天童市は将棋の駒の名産地です。参加者からは「目に見えない人と将棋をするの初めてでした」とか、「視覚障がい者用の将棋の駒ってよくできてるな」と様々な反響がありました。障がい者の方々と当たり前に混ざり合うためには、まずは僕らの方から歩み寄らなければいけないし、その機会をモンテディオが提供したいと思って以前から企画していました。
(神田):企画していた物が実際に形になる喜びは格別ですよね。他に気付きはありましたか?
(神村):実は囲碁よりも将棋の方が駒が動くから、難易度が高いんだって。それぞれの駒の底面の右側に点が打ってあり、それで金とか銀とか駒の種類がわかるようになっています。さらに、将棋って「成る」と裏返しになるじゃない。すると、駒が裏返った時に点が右側ではなくて左側に変わりますよね。つまり底面の点が右にあるか左にあるかで普通の駒か、成った駒かがわかるというしかけ。そういう一つ一つの工夫もびっくりするし、その駒を使えば健常者と視覚障がい者が対等に遊べるということが素晴らしいと感じた。目が見えないことが全くハンディキャップにならないんですよね。
(神田):とっても面白そうですね。僕も将棋のルールはある程度知ってるので、一回対局したいです。
(神村):ここで一つ紹介したい本があります。「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(光文社新書)ってタイトルで、著者はアート系出身の美学者でもある伊藤亜紗さんという方です。例えば、人間は全情報の約8割を視覚から得ているなんて言われてるけど、目の見えない人が美術館に行くと、どのように絵画鑑賞するのか、何を感じるのかが詳細に説明されているんです。そもそも、”観る(見る、視る)”って本当はどういうことなのか考えるきっかけにもなると思うので、是非読んでいただきたい一冊です。
(神田):この本も、普段の生活ではあまり意識しない着眼点や考え方に触れるという意味で、視野が広がりそうですね!
まとめ:障がい者と当たり前に暮らす社会
(神田):今回も沢山の気付き・学びがありました。その背景には、自分の家族や親戚の中に障がいを持つ方が居ないことが関係しているのかもしれません。ただ、障がい者と普段あまり交わる機会が少ないだけで、実際には日本で900万人近く居るので、まずは一緒にいて当然だと理解することが第一歩だと思いました。
(神村):その通りだよ。仮に障がいのある方々に3~4人の家族が居るとすれば、約3,000~4,000万人は日常生活で障がい者と一緒に暮らしていることになるからね。もはや、日本の全人口の3分の1といっても過言じゃないよね。だから、本稿の読者の中にも障がい者が身近に居る場合だってあるかもしれないし、逆に普段全く交わりのない僕らの方が珍しいのかもね。
(神田):そうですね。ふと思ったのですが、いつか視覚障がい者の方々と一緒にサッカー観戦したいです!サッカーのプレーの様子を実況のように説明したりして一緒に楽しみたいです。
(神村):いいじゃない!とても素晴らしいと思う。一緒に楽しめる環境があれば、お互いの理解がもっと深まると思うんだよね。モンテディオもそういう機会を提供してるから、神田君も是非来てよ!
(神田):はい。山形に行ける日が本当に待ち遠しいです!そろそろ機会を見つけて伺います!
(文責:神田)