いま話題の「スポーツ×ソーシャルアクション・SDGs」について考えよう②
皆さん、こんにちは。神村です。
前回の投稿で「スポーツ × 社会貢献活動」というテーマについて取り上げてみましたが、今回もその続きから話したいと思います。具体的には、実際に行われる活動の種類、そして持続可能な取組にする上で重要な指標をいくつかご紹介したいと思います。
(本稿は「Off the pitch talk 」第164~166回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー&文責:神田さんでお届けします)
↓↓音声で聞けるstand.fmはこちらから↓↓
#164 : https://stand.fm/episodes/617fadcb72b03c0006a4ccfa
#165 : https://stand.fm/episodes/61825af70f508e0006409b61
#166 : https://stand.fm/episodes/6184f79672e862000682229d
社会貢献活動は2種類に大別される
(神村): 前回の投稿では大分トリニータやモンテディオ山形で今もなお続けている取組事例を挙げたので、読者の皆さんも社会貢献活動のイメージがクリアになったと思います。最近は、サッカー界以外でも本当に多くのスポーツチームが SDGs や社会貢献という文脈で様々な活動を始めていますね。一方で、よくよく俯瞰して見ると、これらの活動には大きく2種類に分かれるということに気付いたんです。
(神田):なるほど、具体的にはどんなタイプに大別されるのでしょうか。
(神村):一つ目は”イベント型”の活動です。文字通り、イベントを開催することでファンやチームの公式SNS等で拡散されたり、あるいはニュース・メディアにも取り上げてもらうことで、集客や話題作りを趣旨とした取組になります。
(神田):SNS 等は普段スポーツに馴染みのない層にもリーチできますし、人々の関心を集めやすいというメリットもありますね。
(神村):そうだね。ただ、SDGs や社会貢献の本質からは少し離れてしまうので、そこは注意しなければなりません。無論、イベント型の活動を悪く言うつもりは毛頭ありませんが、出来る事ならもう一歩踏み込んで、SDGs や社会問題に正面から向き合えるようなコンテンツがあると良いですね。
(神田):たしかに、単なる一過性のイベントで終わらないようにするための工夫が必要です。
(神村):もう一つは、”協賛型”といって、こちらはクラブがスポンサーからお金を頂く形で新しい商材を生み出したり、事業を推進するタイプの活動です。お金を貰っている以上、何かしらの価値を生み出す必要が出てきます。
(神田):イベント型の活動に比べると、よりシビアに捉えられそうです。
(神村):単なる話題作りじゃなくて、社会課題の解決に紐付かないといけないですね。そこに関してはスポンサー側も厳しく求めると思いますし、ファン・サポーター側も SDGs の活動をクラブが本気でやっているのかを見極める上で、重要になると考えています。
“持続可能”な社会貢献活動にするために
(神村): 今シーズン、こうした社会貢献に関する取組が世の中で凄く注目を集めてきたと思います。問題は各クラブがどこまで来年も持続させられるかという点です。SDGs は ”Sustainable” の文字通り、”持続可能性”がとても重視されるので、社会貢献に取り組む目的を明確にすることが重要です。一過性のイベントにするのか、あるいは本当に社会課題と向き合うのかで、取り組み方も全く変わります。そもそも、この活動をコストと捉えるのか、あるいは事業投資、社会貢献投資と捉えるのかをクラブ内で議論することが前提となります。
(神田):目的という点では、社内外から「あれもやりたい!これもやりたい!」という声が多少なりとも出てきます。その時に、施策が前面に出過ぎると途中で目的を見失ってしまいますよね。
(神村):そうなんだよね。途中で話が段々ブレていくと、それをやって人やお金が集まるんだっけ?みたいなイベント型の議論に変化してしまうからね。たとえ協賛費用(収益)が想定以下だったとしても、人が思ってたほど来なくても、社会課題に向き合うための活動であるならば投資として行う価値はあると思います。
(神田):結局、事業としてはコスパが悪いから、今年いっぱいで止めようと判断するクラブも出てくるかもしれないですね。
(神村):そこは経営者の意志やクラブのスタンスが問われるところだね。そして忘れちゃいけないのが、成果を何で測るかという点です。ここを決められないクラブが多いんじゃないかなと思っています。例えば、SDGs に関するブースを設けたとして、それが成功したのか否かを評価する軸を事前に決めておかないといけません。当然ながら、先に挙げた確固たる目的がないと議論はまとまらないですし、軸を決める上では経営者も腹を括らないといけません。
(神田):特に経営者は、「何でこの取組をやってるの?」って聞かれた時に端的に答えられるかどうかが大事ですね。
(神村):そこで「社会貢献のためですから」って迷いなく即答できるかどうかがとても大事なんだよ。経営者の言葉次第で「この人は本気で社会課題に向き合う覚悟があるなぁ」とか、逆に「今、巷で流行っているからやってるなぁ」というのは意外と分かります。そろそろ来期の予算が固まる段階だと思うけど、社会貢献活動を継続するクラブがどれくらいあるのかは個人的にも注目したいです。
活動の成果を測る3つの指標
(神田):では、実際に活動していく上で、どのような評価軸を設けたら良いのかについても、神村さんのお考えも含めお伺いできればと思います。
(神村)::軸の置き方によって、活動内容の深さやあり方が変わってくると思うのでとても重要なのですが、僕の経験では3つ大事な軸があると考えています。まずはやはり「収益」が最重要だということです。僕はこの活動をコストとは捉えていません。あくまでも、ビジネス・事業として捉えているので、収益性を前提に置きながら、社会的インパクトもなるべく大きくできたら良いなと考えています。
(神田):収益が生まれないと事業がそもそも継続しないということですよね。
(神村):そうだね。二つ目は、「活動に関わった団体数」です。この数値は、どれだけ共感を集めたか、どれだけ協賛されたのかを測る指数になります。そして三つ目が、「体験ブース・イベント等に来てくれた参加者数」です。この数値を毎回必ず集計して、その増減を分析していきます。また、年間を通じて延べ何人参加したのかも注視します。
(神田):なるほど。後者については、スタジアムの来場総数に対しての比率を出せば、より深い示唆が得られそうですね。勉強になります。
(神村):単に集計することが目的じゃなくて、それをサイトや SNS 等で一般公開することも大事になります。今のモンテディオ山形の取り組みなどはNote を見てもらえば試合ごとに開催された SDGs 関連活動の来場者数が載っています。社会に向けて輪を広げて行く意味でも、ここが非常に大きなポイントになると思うのです。
(神田):スタジアムを訪れた人たちが、体験人数の 1/n になることで、自分が身近なところから社会貢献に関われるんだという意識が芽生えたり、醸成されたりするのは、とても良いことだと感じました。
次回予告
(神田):今回も社会貢献活動のジェネラルなトピックについて、色々と学びが多く貴重なお話をありがとうございました。
(神村):読者のためになったなら嬉しいな!次回もこの続きについて話そうと思っているよ。例えば、サッカーチームが社会貢献活動をやることで社会・人々にどのような影響をもたらすのか等について深堀ってみたいと思うから、楽しみにしていてよ!
(神田):そうなんですね!次回が待ちきれないです(笑) 引き続きよろしくお願いします!
(文責:神田)