【祝】~100回放送記念~ ガイナーレ鳥取の高島さん スペシャル対談
皆さん、こんにちは。神村です。
前回は神田さんと一緒に「7つの習慣」について、概要とそれぞれ印象に残った部分を取り上げながら語り合いました。
早いもので、standfmも前回迄の放送分で100回目を迎えることができました。そこで今回は、記念すべき特別号として、ガイナーレ鳥取で経営企画部の高島さんにゲストスピーカーとしてお越しいただきました!
今回は、高島さん、小出さん、神村の3名によるパネル形式でお届けできればと思います。
(本稿は「Off the pitch talk 」第101~103回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー:小出さん、文責:神田さんでお届けします)
↓↓音声で聞けるstand.fmはこちらから↓↓
#101 https://stand.fm/episodes/60bde8a4ad0648919107d14f
#102 https://stand.fm/episodes/60c09f353612c6256067f3be
#103 https://stand.fm/episodes/60c3332e307e660006122428
求められるのは「当事者力」
(神村):せっかくの機会ですし、まずは小出君の方から、高島さんに聞きたい事が沢山あるでしょうから、ガンガン質問していってほしいと思います。笑
(小出):高島さんとお話しするのが初めてなので緊張していますが、よろしくお願いします。
(高島):よろしくお願いします。
(小出):早速ですが、高島さんがJクラブに転職されて数年が経つ中で、
当初から「これは難しい」とか「Jクラブ特有だな」と感じていることはありますか?
(高島):元々Jクラブに転職するときに、「事業の戦略」と「組織の戦略」が肝だと考えていたので、それぞれ因数分解していったのですが、やはり組織の部分が一番難しいですね。具体的には、組織の採用・育成・活性化という3段階に分けて、それぞれの最適化を図ることです。採用は、地方クラブという地域柄、難しいということもありますが、最も重要な育成 / マネジメントの部分でも、まだまだ課題が山積だと捉えています。また、新卒の社員を育てるのと、中途入社の社員成長スピード感や成長曲線を揃えるのはとても難しいです。
(神村):新卒採用しているの?
(高島):現時点は採用してないです。
(小出):そこは、Jクラブの現状的に厳しいという事が言えるんですか?
(高島):当然クラブの体力によります。一部のクラブは実際に新卒採用をしていますが、多くの場合は厳しいと思います。
(小出):なるほど。では次の質問に移りたいのですが、コロナ禍の影響で財政的に苦労しているクラブが多いと思います。Jクラブは入場料・スポンサー収入以外にも収益をあげる仕組みづくりが求められていると思います。その上で、ガイナーレでは今後の事業をどのように工夫しようとお考えでしょうか。
(高島):実はコロナ以前から、スポンサーや入場料収入以外の収入源、あるいは事業を創る大切さは分かっていました。それがコロナで顕在化したことで、より必要性に迫られているのが実態です。
(小出):具体的に1つ挙げるとすれば、ズバリどんな事業ですか?
(高島):Shibaful(シバフル)は成功している事業の一つです。元々この事業を始めたきっかけは、例えばクラブに寄付をしてくださった方に返礼品を渡すなどの活動だったそうです。ただ、もっと地域の皆さんを巻き込む方が持続的になると思って、僕が入って事業全体をマネジメントした結果、現在に至ります。
(神村):話を聞いていると、何も無い状態(ゼロ)だった訳でなく、元々ある物を更に大きく成長させていくというイメージかな?
(高島):はい。鳥取県は人口最少の県ですし、逆に”地域活性化”の課題を抱えるという意味では先進的と言えるかもしれません。なので、スタジアムの入場者数を2倍にする施策よりも、全く別の事業にシフトすることを優先しました。
(小出):なるほど、ありがとうございます。次で最後の質問ですが、これからコロナ後にJクラブやスポーツビジネスの世界で働くことを志す若い世代にとって、どのようなスキルや実力が必要でしょうか。
(高島):端的に言えば、「当事者力」ですね。自分事と捉える力かな。 「行動力」も大事ですが、まず行動する前に自分で働きかけ、自分の考えを行動に移すために、本気でクラブや地域のことを考え抜くことが前提にあると思います。僕も鳥取県出身ではないですが、ガイナーレを通じて鳥取に貢献したいと思えるかが肝心だと捉えています。
(神村):「当事者意識」って、言うのは簡単でも、実際やるのは難しいから、実際の行動を他人に評価してもらう仕組みがあると良いよね。
(小出):たしかに友人などに評価される機会があれば良さそうですね!僕も早速実践してみようと思います。
クラブにおける人材面の課題
(小出):では次に、高島さんから神村さんに気になる点を質問していただけたらと思います。
(高島):実は神村さんとはSHCの同期なのですが、たしか出席番号も前後でしたよね?笑 採用面談の時も一緒だったと記憶しています。
(神村):そうそう、最終面接の時も一緒だったよね!懐かしいな 笑
(高島):その中で、神村さんは真っ先に大分トリニータに入られて、現場を見て来られたと思うのですが、ここまで続けてきて良かったと思うことをお伺いしたいです。
(神村):自分の知らない世界が世の中に沢山あることに気付けた点(笑)元々僕は長く人材畑にいましたが、これまでの経験から多少なりとも「こうすれば、こうなる」というビジネスの成功パターンはイメージできていました。正直、スポーツ界も当初は個人・組織の活性化が肝心だとイメージしていました。ただ、自分がトリニータに入った当時は J3に降格したばかりで、活性化というのには程遠い状態だったというのが正直なところです。その後、アウェー戦を全て現地観戦したのですが、地方で行われる試合などは、入場者が 1,000人程度しかいない訳です。これがプロの試合・興行なのかと驚いた部分もありました。いずれにせよ、現場の実態を早い段階で見れたのは大きかったと思います。
(高島):たしか、あのシーズン、大分は鳥取戦で昇格しましたよね?
(神村):当時の事は鮮明に覚えてるよ。まず大分から福岡に電車で行かなきゃいけないのに、全便満員になって往復のチケットが買えないくらい、人の大移動が起きました。鳥取まで5,000人近いファンが押しかけたのには凄く驚きました。僕は、人材紹介の仕事などで比較的「個人」を相手に仕事をすることが多かったので、スポーツはある意味で”多” 対 ”多”のビジネスなんだなと実感した瞬間でもありした。
(高島):とても共感できます。僕はサッカーとビジネスの不確実性が多少なりともリンクしていると思っていて、特に人材面で大きな課題を感じます。神村さんは大分 / 山形と複数クラブを経験してこられて、各クラブの共通点と逆に異なる点はありましたか?
(神村):もちろん「サッカークラブ」としての事業内容は基本的に同じだよね。ただ、事業に対する捉え方や経費の使い方がまるで違うというのが最初の驚きでした。それはそのまま、経営手法やマネジメントの違いにつながるし、そもそも前提となる目指すものに違いがあるのだろうというのが見解です。一方で、両クラブに共通するのは人材の流動性が少ない点です。メンバー自身が受ける刺激の機会が少ない。同じメンバー、かつ人事異動もない環境で1つのオフィスでずっと働く。これはある意味、サッカー界全体の構造的な課題だと思います。可能なら、クラブ間の交換留学みたいな形で、短期間でも良いから社員同士を入れ替えたりしたいです。
(高島):それ、凄く良いアイディアだと思います。きっとイメージしてる人は少なからずいると思います。
(神村):サッカークラブの域を出て、他業界から刺激を受ける機会があれば、社員の成長には一番だと思います。同じ上司から100回受けるアドバイスより、自ら飛び込んだ異なる環境での1回の体験の方が後々活きる場合もあるからね。
サッカーと他競技のビジネス比較
(高島):先ほど、他業界の話も出ましたが、BリーグをはじめTリーグなど他競技のプロ化が近年進んだ印象です。神村さんはJクラブでご経験を積まれていますが、他競技についてはどう思いますか?
(神村):先日、仙台のプロバスケチームの来年の事業計画を立てる会議に参加したんです。もちろん、バスケとサッカーは競技面での違い(アリーナとスタジアム、入場者数など)はあれど、構成している事業領域はさほど変わりません。競技が違うんだからもっと違うことがあってもいいような気もする。自由な発想でビジネスを考えたほうが面白い気がする。
(高島):たしかに、それは思いますね。鳥取県では 3on3 のチームがあるくらいで、それほどプロスポーツ興行が盛んではないですが、「これをやったらきっと盛り上がる」というアイディアは活かしたいです。
(神村):プロチームの数が多くない地域では、アマチュアでも純粋にスポーツを楽しむ側面があっても良いと思います。もしかしたら誤解を招くかもしれないけど、Jリーグも毎シーズン昇降格があるが故に、順位に囚われ過ぎていると思う時があります。シーズン終盤になると、ファンの期待と不安が入り混じった独特の雰囲気がありますよね。笑
(高島):いちスポーツファンとして楽しむ上では、昇降格が生み出す緊張感も醍醐味だと思います。チームが入れ替わる、つまり変化に可能性を感じて、自分の人生を投影するサポーターもいます。だから、浮き沈みを心地よい物だと捉えられるかが結構重要だったりしますね。
(神村):本当だね。ところで、経営の良し悪しとチームの順位って、どれくらい関係すると思う?
(高島):例えば、リーグ内で強化費用が下から3番目でも、実際の順位がトップ5に入る様なケースは日常茶飯事ですし、経営状況だけが順位を決める要素ではないと思います。まぁ、フロント側としては、予算内で可能な限りチャレンジしたいと思うので、経営が良いことに越したことは無いですが…笑
(神村):言わんとすることは僕も何となく共感できるなぁ笑
「地方で働く」ポイントは「コミュニティに入りこむ」こと
(小出):今度は神村さんから高島さんに色々と質問して頂けたらと思います。
(神村):実は色々とあるんだよね。笑 まず、これまでIT業界のど真ん中に居た中で、鳥取に移住して5年が経ちますよね。この”地方で働く”ということって、どう捉えてますか?
(高島):率直に仕事の話で言えば、仕組みというか根本が全く異なると思
います。商材ひとつ見ても、合理的な売り方ではないですし。いち社会人としては、新しいビジネスの形を学んでいると捉えています。身近な例では、SNS に慣れ親しんでいる人も東京に比べたら圧倒的に少ないですし、「こんなことで喜んでくれるんだ」と気づきの多い毎日を過ごしています。また、いま単身赴任しているんですが、僕は子供が3人いて、鳥取に来た当時は一番下の子供が生後一か月の時でした。なので、新しい家族の形として僕みたいな働き方、スタイルがあるのは事実です。
(神村):実際、東京にいるご家族とはどれくらいの頻度で会ってるの?
(高島):コロナもあり、対面では年末以来会ってないないですが、最近も食事の時間だけは家族に合わせてビデオチャットとかで繋いで一緒の時間を過ごしたりしてますね。
(神村):しっかり父親としての家族孝行も欠かせないね。僕は地元への入り込み方とか密着具合ってかなり重要な部分だと思います。高島さんは、古民家の改修とかされてますよね(笑)まさに移住している感じが出てますが、そもそもどんな動機で鳥取に行ったの?
(高島):実は、鳥取に移り住んだ当初は縁がなくて結構苦労しました。
何中・何校卒?なんて言われても全く分かりませんから(苦笑)そういう話題は僕にはどうしようもできないので、クラブに関わる人やサッカーに関係ない人も含め、とにかく同世代の輪に飛び込まなきゃいけないと思いました。アクション起こさなきゃ何も起きないですから。お陰様でメンバーシップの活動を通じて多くの方と接点を持つことができました。
(神村):サッカークラブに限らず、一般のビジネス界でもプロ人材を地方でも積極的に登用しようとする動きが少なくないですが、今の40~50代のシニア世代やこれからの若い世代の方々が地方で上手く活躍するには、何が大切だと思う?
(高島):やはり地域のコミュニティにいかに溶け込めるかだと思います。いわゆる助っ人外国人みたいな扱いだと、なかなか難しいでしょうね。積極的にコミュニティに入る勇気を持つことが大事です。
(神村):なるほどね。また、コロナ禍以降リモートでの副業人材も登用しやすくなっているけど、今後の働き方という軸で、地方企業が首都圏人材を採用するのはどう思う?
(高島):実際に副業人材を雇って気付いたのは、Jクラブに在籍していることって意外と財産になると思うんです。逆に副業やリモートだと、コミットメントの部分が薄れてしまいかねない。そこをどう活かすかが、今後の課題です。
終わりに
(小出):今回は特別記念という事で、高島さんをゲストにお招きして、様々な観点でお話を伺いました。僕自身、普段なかなか聞けない内容ばかりで、とても学びや気づきが多かったです。
(神村):本当はまだまだ話したいことが山ほどあるから、機会があれば、是非また Off the pitch talk に来てください。 YouTube なんかで他のゲストと一緒に語り合うのも面白いかもね!
(高島):はい、今回は短い時間でしたが、とても楽しかったです!またいつでも呼んでください!
(小出):是非、引き続きよろしくお願いします!高島さん、神村さん、今週もありがとうございました!
(文責:神田)