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予算作成の基本②(Off the pitch talk 第10回〜第12回まとめ)

魅力的な予算&予算からわかること


皆さんこんにちは。神村です。
先週に続いて「予算作成のポイント」について話していこうと思います。
(「Off the pitch talk」第10回~12回まとめ。今回はインタビュー&文責:小出さんでお届けします。)

①予算をみると、会社の体質がわかる

人間の体に体質があるように会社にも『体質』があります。予算をよく見ると、会社の体質がわかります。
人件費・広告宣伝費・オフィス家賃など会社には様々な経費があります。
同じような売り上げであっても、どの部分にどれだけお金を使っているかは、その会社の体質そのものを表します。そして、その結果となる「利益額」および「利益率」も体質を表しているといっても過言ではありません。家計でも同じですよね。同じ収入でも食費・家賃・交際費などの中でどこに一番お金を使っているかは生活の仕方によって全く異なります。そして、どれだけ貯金しているか・・・・(笑)

就活・転職で会社を研究する際に、マーケティング部門の方々にしてみれば広告費にお金をかける会社が魅力的に移るだろうし、人件費率が高ければ「給与水準が高いのかもしれない」という予想が立てられます。こんな視点を持っているとこれまでとは違った会社が見えてくるかもしれません。

そのような形で予算は『会社の体質』を表しているのです。

②予算をみると、会社の成長力がわかる

会社の成長力を見る大事なポイントは、「対前年伸び率」と「同業他社との比較」です。(もちろん他にもたくさんありますが、一番わかりやすいのがこれ)
例えば業界全体で毎年10%伸びている中で、自社が10%の成長率であれば、これはある意味『普通』ととれます。逆に15%、20%の成長率であれば『業界水準よりも高い』と言えます。

去年と比較してどうなのか?
周りと比較してどうなのか?

といった成長力=魅力が数字(予算)には隠されているのです。
そして、この成長力は会社の魅力の大きな要素になります。
ですから、予算作成では常に「どこまでの成長をイメージするか」を意識した議論・検討が必要なのです。

③予算をみると会社の風土がわかる

常に業界水準以上に高い成長力を目指した予算設定する会社があります。積極経営で、イケイケな感じがします。
一方で、保守的な(ある意味現実的)な成長を前提にする会社は、経費項目についてもぎりぎりで設定し、あまり新規の投資などを見込まない会社もあります。また、利益を重視し、経費にゆとりのない予算を組む会社もあります。こういう会社は、何か新しいことに挑戦したいときや、何か予期せぬ支出が発生した際に対応できなくなってしまいます。

いずれにせよ、予算の組み方によって、おのずと社員の意識・行動パターンも変わってきますから、結果として「会社の風土」につながっていくのです。これは決して善し悪しの問題ではありません。あくまでも、会社の特徴といえるものなのです。

そして、予算と実績の管理をどれだけ精度高く行えるかも、風土を形成していくうえで非常に重要な要素です。予算と実績の乖離は、ある意味でルーズさを表していると言えます。どんな状況でも予算をきっちり守れると、その会社はある意味『筋肉質』であるとも言えます。

こうしてみてくると、予算は単に数字の羅列ではなく、そこから体質・成長力・風土が見えてくることがわかります。私は『予算は会社の魅力を表す」と思っています。経営者として「ただ数字を積み上げ」ていくのではなく、社内外の誰にとっても魅力的な予算を作成していきたいと意識していました。

予算と組織図は『車の両輪』

予算作成において忘れていけないのは、組織図をきちんと整理するということです。なぜならば、組織図は予算を遂行するための基本フォーメーションだからです。ここがしっかり整理されていなければ、どんなに魅力的な予算でも、熟慮を重ねた戦略であっても『絵に描いた餅』になってしまします。

予算と組織図の関係

予算とは会社がどういう形でありたいのかということを数字で表したものですが、それを実行するのは『人』です。
したがって、適切な人の配置を行っているかどうかが、予算達成において極めて重要になってきます。ところが、多くの中小企業ではここが「属人的」であったり、「硬直的」であったりします。人材不足と言ってしまえばそれまでですが、経営者自身の課題として、組織を作り替えていくための努力が必要だと私は思っています。

やりたいこととそれに対する体制が一致してなければならないということです。その意味で、「経営者の仕事は優秀な人材を確保すること」と言い切ってしまってもいいくらい重要なことなのです。人材不足を嘆いたり、人材採用に消極的では「成長する・魅力ある会社」を作ることはできません。

組織図の役割

①組織図が意思決定プロセスを決める

組織図を見たときに、「どの部門・階層で、どんな意思決定がなされるか」がわかる組織図を作ることが重要です。意思決定に至るまでの道筋がシンプルで分かりやすいことは、とても重要です。業績が低迷していたり、空気がよどんでいる企業の多くは、ここをないがしろにしていることが原因です。古株の社員が長年幹部社員にいる中小企業などはその傾向が強くなりがちなので注意が必要かもしれません。すべての意思決定にかかわらないと気が済まない、「俺は聞いてないぞ」という言葉が社内でよく出るようならそれは危険信号です。

②組織図が意思決定のスピードを決める

私の持論は「とにかく早く決める」ことです。それを可能にするために、『誰が何の決定権を持っているか』を決め、それを組織図上に表現していくことを意識していました。
その決め手は:
①階層を少なくする(フラットな組織)
②権限を委譲する(決めさせる)
ついつい自分も意思決定にかかわりたくなりますし、「決めていいよ」と言っておきながら、その決定に対して異を唱えたりしがちです。
ここは、経営者がぐっとこらえる度量が必要です。
スピード経営ができるか否かは、まさに経営者の拘りにかかっているのです。(経営者自身が意思決定に躊躇したり、失敗を恐れるようでは論外です。)

そして、私がとても重要視しているのは、事の大小にかかわらず「決める」習慣を若いころからつける」ことです。ポジション(役職)が上がっても、「自分で決めたことのない人」は、やっぱり一人では決められないからです。

意思決定スピードは企業の成長スピードと密接に関係しています。
早く決めて、早く動く、すべての基本がここにあるのですから。

③組織図を柔軟に変化させる経営者の意思

いくら綿密に予算を作成し、戦略を考え、体制を整えても、計画が上手くいかないことは往々にしてあります。この時に経営の手腕が問われます。
いかにスピーディに組織を変化・修正させられるかが重要です。

経営者がここを変えられないとドツボにハマり、結果が出ないということになります。計画通りにいかないことや失敗することが問題なのではありません。上手くいっていないことをただ、ずるずるとやり続けることが問題なのです。

ここまでみてきたように、予算と組織図がセットになって初めて「実現」に向けてのイメージが社内外通じて出来上がってきます。「できそうな気がしてきた」と思えるまで徹底的に考え抜く時間が予算策定の時間です。
ビジネスパーソンとして大きな飛躍をするためにも、この時期に「頭がちぎれるくらい考え抜く」ことが大事だと思います。

「四半期サイクル」の実行が全てを決める

そして、仕上げは計画の「実行」です。
私は、「実行・開示・検証」のサイクルの基本を四半期に設定しています。
なぜならば、いわゆる「上場企業基準」をベースに経営したいと考えているからです。
以前経営していた会社がまだ社員50人くらいの時に、尊敬する方に「会社が小さいときから、会社を鍛えておけ。大きくなってから、いろいろ整えようと思うのは理屈に合っているようで、実は難しいんだ。小さいうちに、会社の基本を作っておくことが大事なんだ。」とアドバイスをいただきました。
以来20年近く経っていますが、会社にも「三つ子の魂百まで」があるのだなと思っています。

「四半期サイクル」を実行するためのポイント

①PDCAの基軸となる指標設定(細かすぎない・数多くしない)
 ・当該期間に本当に大事な指標は何かを徹底的に議論することが、
  結局は基本行動をしっかり統一していく基礎になる。
  ・一度にたくさんのことはできない。短サイクルでの成功・達成体験を
  積めるようにしていくのも経営の大事な役割。
②開示ルール設定(定時制・定点観測)
 ・四半期サイクルを効果的に回すために、月次・週次・日次の
  情報管理・集計ルールを確立させる。(数字への執着はここから生まれ
  るといっても過言ではない。)
 ・「不都合な事実」も必ず開示する。
  (できていることだけ見ていても何も始まらない)

『オープンブック・マネジメント』(ジョン・ケース著 ダイヤモンド社)

ここまで記したことを実行に移すにあたり、上記は非常に参考になる書籍をです。ぜひご一読ください。

”会社のあらゆる情報をオープンにすることによるマネジメントがあらゆる研修に勝る実践として社員のモチベーションや行動の自立性などを高めていく”

20年近く前に出版された本ですが、いまだに私の経営の根幹として大切にしています。

例えば:
ex)社長や役員の給料を公開できますか?
→このような世間一般にはタブーと言われるような情報でも、どんどん開示していくようにしてきました。(多くの反対や抵抗もありましたが、可能な限りオープンにしてきました)。これによって、どのくらいの仕事ができれば、どれだけの収入がもらえるということが明らかになり、自発的な個人スキルアップへの取り組みなどが進んだように思います。

スポーツ選手の世界ではこの基準が明らかですが、ビジネスの世界ではこの部分が曖昧です。
私は、「仕事の結果と報酬の連動性」を明確にしていくことがプロフェッショナル・ビジネスマンの育成・自立性の向上・生産性革命などにつながっていくものだと思っています。

ここまで、予算作成というテーマを様々な角度で深堀をしてきました。
単なる数字の表に思えたものが、多面的な意味を持ったものであることがお分かりいただけたら幸いです。(インタビュー&文責:小出)

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