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経営の基本のき。来季に向けた「予算作成」で経営改革を推進していこう(Off the pitch talk第7回~9回まとめ)

皆さんこんにちは。神村です。
今週は経営の基本のきである、「予算作成のプロセスとポイント」について話していこうと思います。
(「Off the pitch talk」第7回~9回まとめ。
今回はインタビュー&文責:三浦さんでお届けします)

早速予算についての話をしていきたいのですが、「予算を作る」ということは「数字による意思表明」です。その裏側には「今年はこうやるぞ!!」という強い決意のようなものもないといけません。その意味で予算作成は「改革の表明」であるともいえます。ですから、前週お話しした「改革」について少し角度を変えて振り返りたいと思います。

「改革」についてのポイントは4つ

①改革は、好調な時ほど、上手くいく

今のコロナ禍に限らず、自然災害、リーマンショック、世界情勢不安など様々な要因で企業業績の危機が起きますね。改革とは往々にして、こういった「危機」のときに初めて叫ばれ始めます。しかし、本当は「改革は好調な時ほど取り掛かると上手くいく」ということはある意味本質ですから、覚えておいて欲しいと思います。

なぜならば、危機のときは様々な外部環境の状態が悪いとき、ということなので、改革に手をつけても、必ずしもそれが上手くいくとは限らないんです。要するに、労を多くして実りが少ないってことですね。これが一番したくないことですよね(笑)

なので、危機の時に改革に取り掛かるのではなく、「改革を常に常態化させる」。いつも改革をする、いい時こそ改革を進める、という感覚を習慣化させることが非常に大事だと思っています。

そうすると「改革しなきゃ!」とあまり構えなくてもよくなるので、持つべき意識として一番大事な部分かなと思います。

②改革は、小さなこと、結果が出やすいことに絞る。

これもあるある話かもしれませんが、「改革しよう!」というと、いろんな課題が出てきますね。特に状態が悪いときほど「これもやらなきゃ、あれもやらなきゃ」と取り組むべき課題はどんどん多くなってきます。山積というやつです。

ここでのポイントは、きちんと優先順位をつけて、より結果が出しやすいことに集中するといいということです。目の前にある小さなことから手をつけて改革する方が結果が出やすくなることが多いのです。そして、結果が出やすい方が、取り組んでいるメンバーたち自身が安心します。「これ大丈夫かなあ」「本当に成果が出るのかな」と思ってしまう期間が長く続くと、気持ちもどんどん萎えていきます。

なので、できるだけ結果の出やすい小さなことに着手していき、1つ1つ、小さな成果を積み上げていく、この習慣をつけることもとても重要なことだと思います。

③改革は、主体者になった方が面白い。

組織というのは、経営者や社長などのリーダーがいて、その人たちが「改革をするぞ!」と号令かけて、それに従う形でメンバーの人、若い人たちが動くという構図ですよね。なので若い人たちにはどうしても「やらされ感」というものがつきまとうわけです。そうすると「なんでこんなことやらないといけないんだろうか」とか「こんなことをやって本当に意味があるんだろうか」という不安も同時につきまとってきます。

自分で決めていることではないので、どうしてもモチベーションが上がりづらい、というのもあると思います。

先ほど「改革は小さなことから」という話をしましたけど、まさにそれで、まずは自分のすぐ身の回りにあるものから、主体的に発案できるようになれば、もっと面白くなる。「これは私が改革をしているんだ」という当事者意識を持つことができるようになりますね。最近は「じぶんごと」という言葉もよく聞かれるようになりました。改革を自分ごとにしてしまえばいいのです。

そういう人が増えてくれば、会社全体、一丸となって改革を進めることができる、ということです。

④改革は、実行と定着の2フェーズがある。

よく言われる「0から1を生み出す作業」と「1からそれを2、3、4と大きくしていく作業」、この2つのプロセスのことです。

この2つのプロセス、それぞれに求められるリーダーシップや能力が違ってくるので、その点を十分理解する必要があります。

一旦改革をスタートさせて、ある程度できたかなと思ったとしても、また元に戻ってしまうこともありますよね。改革に限らず、ダイエットなんかも同じで「やるぞ!」と決めて1、2kg減ったと思ったら、また元に戻ってリバウンドしてしまうことはよく聞く話だと思います。少し成果が出てきたときに、リバウンドしないようにその時の取り組みをきちんと定着させることで、体質そのものが変わっていきます。それが「改革が定着した」ということです。定着して初めて、次の新しい改革に取り組み、またそれを定着させ、また次の新しい改革に……というサイクルに自然になっていきます。冒頭にいった「改革が常に行われている状態」になるとは、つまりこういうことなんです。

この4つのポイントを頭に入れて、「予算の作成」も考えていくことで、より実行イメージがわくのではないかと思います。

経営の基本のき。「予算」とは?

先週までの「改革」の話が理解できたところで、いよいよ予算作成の話に入っていきます。予算というと、社員の人にとってはその予算(金額)がどういったプロセスを経て、誰が決めているのか、よくわからないのが普通ですよね。予算作成の前に、そもそも「予算ってなんだろう」ということを知ることで、より身近になってきますし、仕事の成果も出しやすくなってくるので、その辺りの話から始めていこうと思います。

・予算とは「会社の意思」を表すもの

予算というのは、その会社が未来にどうなっていたいかを数字で表したものです。予算や会社というと自分から遠いものに感じてしまうと思うので、もう少し身近なダイエットなどで例えるととてもわかりやすいかと思います。(先ほども出てきましたが…笑)

ダイエットをして自分が何kgになりたいのか?
さらには、どんなスタイルになりたいか?
TOEICのスコアで自分が何点をとりたいのか?
そして、英語で何がしたいのか?
貯金でいくら貯めたいのか。
貯めたお金をどう使いたいのか?


1年後にどうなっていたいのかという自分の思いやビジョン、目標を数値化すること。これが予算です。予算の中には会社の売上や利益、様々な項目がありますが、ダイエットやTOEICとなんら変わりはありません。

そういう観点で見ると、ただの数字の羅列ではなく、ここに会社の意思があるんだなということが、若い人達にも感じることができるんじゃないかなと思います。

・中期計画の重要性

今はコロナによって先行き不透明な状態が続いています。こういう時こそ、単年度と言わず、最低でも3カ年計画(本当は5カ年計画くらいでできたら一番良い)をきちんと作るべきです。中期経営計画という形で「3年後はこんな風に在りたいな」ということをイメージして、数字を作るということが大事だと思います。「こんな時期だから、先がわからないから、未来のことなんて計画しても意味がない・・・・」と思ってはいけません。不透明な時だからこそ、未来への地図を何通りも想定してみたり、議論していくことが大事なのです。

若い人にとっては「3年」というのは非常になじみ深い期間のはずです。3年スパンというのは、中学・高校どちらも3年、3年でしたよね。中学に入ったときには、卒業するまでにはこんな風になっていたい、高校に入ったときにも、高校を卒業するまでにはこんな風になっていたい、大学でもまた然りですが、3年〜4年くらいのスパンは計画を立てようと思ったら意外に立てられる期間なんです。それを1年1年修正をしながら積み上げていく。これが予算の3カ年計画の重要性の1つです。

もう1つは、3年後を考えることによって「未来から今を逆算」して、未来にそうなっていたいから今こういうアクションをする、という考え方を身につけるとよいと思います。とにかくまず目標を決めてしまうこと。例えばスポーツ選手だったら、4年に1度のオリンピックに出るという目標を立てて、そのためにいつまでにどんな風になっていないといけないのかを考えて、トレーニングのメニューを作ったり、練習メニューを組んだりするはずですよね。それと同じことが会社における中期経営計画ということです。未来から今を逆算するということがより大きな飛躍を生む力になるのです。現状の延長線上に未来を置いていては、可能性はどんどん小さく・狭くなっていくものなのです。

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予算作成のプロセスとは

予算を作るプロセスというのは非常に重要なことです。なぜなら、それが会社の特徴を象徴しているからです。予算作成のプロセスとして、会社の社長や管理職たちが予算を決めてそれをメンバーたちに伝えていく、いわゆるトップダウン方式の場合もあれば、メンバーの末端の社員のところまで予算案を作らせて、それを集合体のようにして予算を練り上げていく、ある意味でボトムアップ型の場合の、大きく分けて2種類があります。どちらの方が良い、悪いの問題ではないのですが、「誰が作るか」というのは企業の体質をとてもよく表します。

・予算作成にどの階層のメンバーまで加えていくのか

個人的にはできるだけ現場の一人ひとりの個人が自分の予算を作る方式が良いと思っています。なぜかというと、「主体性」がとても大切だからです。人に決められた予算ではなく、予算を自分で作るために考える、このプロセスを踏むことが重要ですし、とてもいい学びの場になります。当事者意識も醸成されますし、「ここまでやってみようかな」というチャレンジ精神も生まれるかもしれません。予算を作るというプロセスで生じた、人材育成の副産物のようなものですね。特に(サッカークラブのような)メンバーの少ない中小企業ではメンバーが予算作成に関わることはとても重要なことなのではないかと思います。

・予算作成の際に持っておいた方が良い視点

まず一番大事なのは、会社がどういった方向を目指しているのかをきちんと理解することです。そのために経営トップは3年後、5年後に会社がどういう風にありたいかをきちんと言葉でメンバーに示す必要があります。そうすることでメンバーは「じゃあ自分はこういう役割で貢献していこう」「そのためにこのくらいの売上目標を自分で立ててみよう」という視点を持てるようになってくるかと思います。

・予算作成において中心になるべき人

多くのメンバーが集まって予算作成をするといっても、てんでバラバラに行うわけにはいきません。司令塔となる存在が必要です。私は自身で会社を経営しているときには、2種類の司令塔をブレインとして頼りにしていました。
◆1つは、経営企画や管理本部と呼ばれるところで数字の集計をするスペシャリストです。メンバーが作業しやすいようにきちんとフォーマットを用意したり、参考の数字となる過去の数字がどうだったか、競合他社がどんな数字になっているかなど情報を提供してくれるような人です。
◆もう1つは、多角的な視点でアドバイスできるような人です。予算を作っているとどうしても自分の部門のことを中心に考えて、「ここまでしかできないよね」とか「これは私たちの部門ではなくて隣の部門の仕事だよね」とか部門や個人単位の壁っていうのが生まれてきます。こういうものにぶち当たるとセクショナリズムが生まれたり、だんだん目標(予算)自体がチャレンジングではなく保守的になったりするんですよね。そういう時に他の考え方を提示してくれたり、視点を変えてくれたりする高い視座を持ったアドバイザー的な存在が必要になってくるんです。そういう人がいると、議論が広がったり、行き詰まっている議論が進んだりもします。

管理会計的に数字をまとめられるスペシャリスト1つ1つの部門のディスカッションが行き詰まった時に、それを解してあげられるようなアドバイザー、この2種類の司令塔がいると、予算作成はスムーズかつチャレンジングなものになってくるのではないかと思います。

・予算はいつ頃作成するのか

予算作成は早ければ早いほど良いです。早く始めるということは早くから考え始めるということです。半年後からスタートする予算を今から考えるということは、常に先を見据えた仕事をすることができるということにつながります。ですから早い方がいいというのは、疑いようのない事実なのです。
しかしながら、一般的には今目の前でこなさなければいけない仕事も山ほどあり、先のことなど考える時間も、人手もないという現実もあります。
ですから、新しい期が始まる早ければ半年前、少なくとも3、4カ月前からはスタートして、2カ月前には確定させておく、ことを目指すといいと思います。

一方で、例えば営業部門であれば、取引先の会社がいつ頃予算を作成するのかを知っておくことによって自分たちの商品を提案するタイミングがいつになるかも決まってきます。そういった面でも、早くから予算作成を意識するというのはとても重要なポイントだと思いますね。

(文責:三浦)


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