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【5分で読む】新シーズン幕開けの今、フロントがすべきこと

皆さん、こんにちは。神村です。

今回は、未来を見据えた上でクラブスタッフ、ひいては読者の皆さんが今すべきことを話したいと思います。

まずは、東日本大震災について触れさせてください。あの日から、早10年が経ちました。過去、日本は阪神淡路大震災や台風の被害など多くの自然災害を経験しました。また、経済的にもITバブル、リーマンショック等、およそ10年に1度のスパンで社会全体を変えるほどの出来事が起こります。コロナ禍の現在もその一つでしょう。ですから、「”スポーツ”が持つ根本的価値は?」「何のために我々は”スポーツビジネス”に携わるのか?」等について見直すタイミングだと思うのです。今こうしてJリーグの試合が開催できることに感謝しつつ、本題に入りましょう。
(本稿は「Off the pitch talk 」第61~63回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー&文責:神田さん(@Twitter)でお届けします)

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#61 : https://stand.fm/episodes/6045fd082d51f430852be8bd
#62 : https://stand.fm/episodes/60489ad052e33e4b120de21c
#63 : https://stand.fm/episodes/604b341a16cc3266ca1ec903 

【1】今、フロントが考えるべきこと

前回の投稿でお話しましたが、コロナ禍2年目の今シーズン、とりわけホームゲーム最初の5試合は、昨シーズンから議論・検討したことをお披露目する場になります。フロントスタッフは「準備を早い段階から十分にできていたか?」、「当初の仮説は正しかったのか?」、「改善ポイントは何か?」といった多角的視点での検証が求められます。具体的には「なぜスタジアムにお客さんは来なかったのか?」「どんなグッズなら買うのか?」等のPDCAを高速で回すことです。

シーズンが始まれば、フロントスタッフもいちファンとして、当然チームの勝敗に一喜一憂する場面もあるでしょう。しかし、我々スタッフが試合準備に忙殺されたり、結果に一喜一憂して仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼすようでは、プロの組織とは呼べません。そもそも、試合に勝ち続けることはフロントでは直接関与できないのです。強いて言えば、営業が「もっとスポンサー獲得できるよう頑張ろう!」という正のエネルギーに転嫁することくらいでしょうか。そして、たとえチームが負け続けている状態にあったとしても、シーズン前に掲げた目標(売上、入場者数等のKPI)達成に向けて愚直に取り組んでいくことが肝要なのです

毎年、ホーム開幕戦は通常より沢山のお客さんが来てくれます。フロント側も開幕戦はいつも以上に気合を入れてイベント等の準備をするのですが、それを自分たちの功績と過信するのは危険です。開幕戦は春休み中という事もあり学生さんや家族連れで賑わうため、来場者数が通常よりも増える前提で(≒”開幕ボーナス”を差し引いて)考える必要があります。本当に企画の効果が集客面に反映されたかを検証するには、実際にお客さんの声を聞いた上で、少なくとも3~4試合を継続的に分析・検証するのが鉄則です。また、これらの検証を毎試合繰り返し精査する過程が大事なのです。その過程において、来てくれたお客さんにどうやったら満足してもらえるかを突き詰めていくことが、フロントスタッフに課せられた使命とも言えるでしょう。

さらには、ベンチマークする他クラブあるいは他競技から、良いと思った施策を積極的に取り入れるスピード感も重要です。例えば、サッカーとは一見無縁に見える大相撲やBリーグ、バレーボールなど競技ごとに担当を割振り、各スタッフから様々な情報共有や自由闊達な意見交換ができたら、夏頃までには相当量の知見が溜まります。組織目標を断固達成するために、チーム一丸となって取り組むことが大事なのです。

【2】誰が2022年を見据えているのか?

皆さんの中で、2022年の仕事や個人の目標に向けて今から準備し、実際に動いている人はどれくらいいるでしょうか?(もし”Yes”と自信をもって答えられる方がいたら、とても素晴らしいことです)

一見、来年のことを今から見据えるなんて時期尚早だと感じるかもしれません。では、いったい誰が、いつになったら来年のことを考えて具体的な準備を始めるのでしょうか?

シーズンが開幕した今、目の前のことだけに集中していたら、来年に向けての仕込み期間はなくなります。私の経験上、何事においても準備は早いに越したことはありません。クラブスタッフも皆、早くから来年の準備に取りかかる大事さは理解しています。しかし、そもそも人数が足りず、毎試合の準備等に忙殺され、この課題に目を瞑ってしまっているのが現状です。クラブは一刻も早く、この現状を打破しなければなりません。

有名な『七つの習慣』という本でも紹介されている「緊急ではないが重要な仕事」にどれだけ取り込めるかが、組織の成長度合いを示すバロメータになります。サッカークラブでは、「来年のユニフォーム・スポンサーをいかにして獲得するか?」が一例です。

ここで少し考えてみてください。もし新たなスポンサーを獲得したい場合、先方(企業)の予算策定の時期(12月決算の会社なら9月ころには作業を開始するでしょうし、3月決算でも年末には大筋が見えてきます。)までにはクラブ側の提案を終えなければなりません。それを視野に入れると、来シーズンに向けた営業活動はむしろ今から始めるべきなのです。

ましてや、緊急事態宣言の再発も懸念され、今後の経済の見通しが立てづらい現状では、「このままで何とかなる」という希望的観測は捨てなければなりません。仮にオリンピックが無事に開催でき、経済状況が好転して目標を上方修正する際も、それは自分たちの力というより外的要因だと認識しましょう。いずれにせよ、どんな状況下でも自分たちのやれることに如何に集中できるかが、ビジネスにおける勝負の分かれ目になるのです。

【3】経営改善に必要な3つのポイント

コロナ2年目の今年が重要なのは、サッカー界に限らず他業界・企業も同じだと思います。そこで、皆さんが今日から実践できるスケジュールの組み方のコツを3点お伝えします。

一点目は「今やっている仕事が未来のいつための仕事なのか?を意識することです。具体的には、スケジュール帳の自分の予定を「いつのための仕事」を基準に色分けしてみることです。「今の仕事・3か月~半年後のための仕事・1年後のための仕事」を色分けしてみるのです。これによって、今の自分の仕事配分を可視化でき「緊急ではないが、重要なこと」を意識的にスケジュールに組み込めます。とてもオススメです。

二点目は行動カレンダーを部門単位で作成することです。例えば、開幕戦は年に1度しかないのですから、来年の開幕戦に向けた構想は、実は今シーズンの開幕戦が終えたばかりで記憶に新しい今が最適なのです。今年の反省を踏まえて、来年はこうありたいという「To-Be」を描き、そこからバックキャスティング方式でカレンダーに組み込むと部門全体の共通認識が持てるようになるでしょう。

三点目は個人目標(評価)の中に、「緊急ではないが重要なこと」を必ず組み込むことです。できれば、部長などの役職者が率先して呼びかけることが大切です。未来に向けた仕事に対してきちんと評価する体制を作ることで、組織全体が先手を打つような動きへと変わってくるでしょう。1年先が見えるようになったら、次は3年、5年、10年先と視野を広げながら、個人の仕事の中に落とし込んでいってください

まとめ:過去・現在・未来は全て繋がっている

本稿では、未来の出来事にいち早く備える意義や、そのために今すべき事についてお話してきました。

皆さんが今働いている会社が、2030年にどうなっているか想像できますか?
私はこれまで複数の会社の経営に携わってきましたが、若手社員たちに常々語ってきた言葉があります。それは、陶芸家である河井寛次郎さんの「過去が咲いている今、未来の蕾で一杯な今」です。私はこの言葉を初めて目にした時、ゾクゾクっと体に電流が走ったような衝撃でした。過去のこれまでの積み重ねが現在の自分自身、組織の姿であり、またそれは未来に続いていくということを端的に表しています。

どうか、皆さんも未来の蕾が花開くよう、今この瞬間を大切にして欲しいと願っています。

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