賞味期限切れの柏餅
ついこの間の土曜日。
夫は施設に入所している義母の主治医のもとへ。
先日の検査結果が出たらしい。
結果は、
動脈瘤があることと頸動脈の一部分が細くなっているとの説明を受けてきた。脳のダメージもいくつかあるらしい。
現状を知った上で、手術はしない方が本人のためにはいいだろう…ということに。
過去に脳梗塞で二度、倒れたことがある。
幸いにも、身体に麻痺もなく、自力でで歩行することも食べることも出来る。
今も施設では、スタッフのおかげで日常生活は送れている。
ただ、昔から情緒的に不安定なところがあり、常に不安を抱えている。
物事に対しても、前向きに捉えることが少なく、最悪の事態を想定して騒ぎ出す。周りを巻き込む。人のせいにする。そんな人だった。
そんな母親の姿が当たり前だと思っていた夫は、今まで義母の言う通りに生きてきた。
施設に入所してすぐに問題行動を起こしたことで親子の関係を見直すきっかけをもらう。
私が最初に記事にしたのは彼女のこと。
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ある程度の境界線を引くことで、彼女の生活も私たちの生活も守られている。
今はコロナ禍ということもあり、彼女を見舞うこともない。
ガラス越しの面会やリモートでの会話などは許されているが、そこまでする親戚もいない。
主治医や周りのスタッフも彼女の性格を察してくれている。
夫が何もしない事が彼女にとっていいらしい。
以来、洗濯物や買い物も全てスタッフにお願いしている。
彼女に知らせておきたい事があった時は、必ず、ふたりで対応することに。
これまでに、義父の法事、仏壇じまい、実家の売却、長男の結婚。
全て報告する時は、夫婦一緒に。
彼女の事は夫ひとりでは抱えきれないのだと周りのスタッフは言う。
親子だから。
彼女の元々の性格がそうさせてしまうのだと。
主治医との面談後、
夫は、和菓子が好きだった義父の墓に立ち寄り、彼女の事を頼んできたという。
それが冷蔵庫にある柏餅。
人数分買ってきてくれた。
その夜にいただいた。義父の分は夫が。
そして
ひとつ残った…
たぶん、母親に食べてもらいたかったのだろう。
夫に聞いた。
「お義父さんに何てお願いしに行ったの?」
「おふくろが苦しまないようにいざ!という時は、連れていってやって。」
と。
冷蔵庫にある柏餅に手を伸ばしかけてやめた。
夫とのやりとりを思い出したのだ。
スーザンフォワードの本に
許すことは、全てを変える魔法の杖ではない。
先に進むためには許さなくていい。
許す必要なんてない。
とまで書いてある。
彼女がたとえ、この世界とは無縁の人になったとしても、私たちの中から消えることはない。
苦しまなくていいように悔いのないようにせめて、今は、彼女の平穏な生活を守ってあげたい。