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男の人に頼るということ

世の中はあらゆることがボーダレスになった。
自由で、理性的で、でもきっちりとした
個人主義の時代。

役割や社会の在り方は変わったけれど
生物学的な人体の構造や
本能的なところでは、性差があるのは否めない。
そのことを理解していると、
少しだけ関係構築が楽になる…と私は思う。

自分の食い扶持+好きなことに使うお金を
稼ぐ心持でいるけれど
彼は「君を養っていかないと」と勝手に思っている。
その気持ちだけを受け取り、水を差さない。
現実問題としてそれが可能であるかは、
私の勝手な予想でしかなく
何があるかは分からない。誰にも。


それで、彼が自主的に貯蓄額や年収を教えてきて
「男として…」とか言っていても
そんなことないと否定する。
「あなたは稼げる男だ」
「大丈夫、心配いらない」
と言う。


折半して何かを買いたいと彼が言った時には
いいじゃん、と肯定する。
決して私が買うよとは言わない。

自分の目的を考える。日々。
2人で生きていくと決めたのだ。
私の勝手な都合で、彼のあたたかい
愛の芽をふみつぶすことはしたくない。


休日。
朝、いつもと同じ時刻に目が覚めた。
彼がいることが嬉しくて、
また一日自由に使えるという感覚が
はやく活動してまわりたいと自分を急き立てていた。
でも、そうしなかった。
ふたりでくっついて微睡む時間もぜいたくだと思ったから。

猫が毛布の上で足踏みをしていたので
私が「揉まないで」と笑っていると
彼はすかさず言う。
「大きくなーれ、って言ってるんじゃない」と。


少し前の私なら
「小さくて悪かったわね」と怒ったろう。
「そんなことないよ」を引き出すために。
今の私は、そうしない。



「そうか、じゃああなたに揉んでもらえば大きくなるね。」
と返してあげる。
「今揉んであげよっか?」と
彼は言う。嬉しそうに。
「エッチはしないよ。揉むだけ。」

「最後まではできないけど、君に触りたい」
ということだと私には伝わる。

レスなのでは、などと悩んでいたこともあったけれど
私は最近けっこう彼の気持ちが分かってきた。

最初はわからずにすれ違っていたけれど
真面目に詰め寄らず
回数がどうのなどとは泣かず
自分にできることをコツコツやっていった結果だ。
まだ道半ばだけれど。

それで、余裕たっぷりに起き上がって
下着を外す。
「じゃあ、お願い。」
服の下はまったく見えないのに、
彼の視線が釘付けになっていた。

ふに、とこわごわ触る。
手が増えて、私達は向かい合って横になった。

ふふふ、と笑って
「ありがとう」
「気持ちいい」
と言うと
彼は黙ってそうしていた。
一時間以上。


彼女から、妻になるまでの途中。
これまで学んだ心理学やメス力には書かれていない判断をする時も多い。

それでも、頭ではなく心で男性─彼を観、感じることができるようになった。

基本が大切。
本で言えば、最初の章。
人間関係でいえば、出会い。
出会った頃の態度をずっと続ける努力を、私はしている。


それは敬意であり、素直さであり、感謝かもしれない。


男を立てるとか、追わせると言うと抵抗があるが
そう表現すると私にはしっくりきた。


彼に敬意を払っていれば、
自分の脳内のざわめきを彼に垂れ流さない。

素直に相対していれば、
試し行動をすることや謝罪を跳ね除けることもない。

感謝していれば、
喧嘩がこじれることも
他に気持ちが行くこともない。お互いに。


こんな簡単なことが、
難しく思うのは自分がなかったから。



豆乳でつくってくれたプリンを口に運ぶと
彼は「もっと食べる?」と聞いた。
私は遠慮しない。


「おいしいとこ、いいよ」
味の一番沁みたぶり大根を、
彼に譲ってもらい
私はありがと、と笑う。


「やっとくから、シャワーあびな」
と言われたら、洗濯物をぜんぶ彼に託して
ありがとう、とタオルをもつ。


甘えたくなった時ではなく
彼がリラックスしているときに
そっと頭をのせる。

愛していると囁くのは、ベッドの中で
ごくたまにだけだ。


「妻になったらって君はいうけど変わらないんじゃない?」と彼が揺さぶりをかけてきたら
笑って言ってやる。

「あなたが愛して選んだ妻でしょう?
大丈夫。」と。

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