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女の勘、アプリでのご縁




あれ、と思ったのは
初めて会った翌日のこと。

アプリで何度もやりとりをし、
通話を重ねてから会った。
期待値が高過ぎたのかもしれない。

お茶の時間を切り上げたこと、改札まで見送った時に振り返らなかったこと
通話の時間がいつも相手都合だったこと
たまに、2日くらい返信の間隔が空くこと。
さまざま違和感はあるのに、
「君を最後の恋人にしたい」
「はやく結ばれたい」
「特別な縁を感じる」
口先の甘い蜜に
その人の社会的地位や、価値観に私は後ろ髪を引かれていた。その時は。


微かな違和感を無理に納得させて
ずいぶんと時間が経過してしまった。
35の、年末。


「ちゃんと既読ぐらいしてよ」
とか
「もっと返信してよ」
「通話をしたい」
と言うことはしなかった。

薄々気づいていたから。
その男がなにを考えていたのか。



放置しても、手を離そうとしない
その姿勢に私の頭はどんどんクリエイティブになっていった。



「僕はあなたを最後の恋人にしたい」


「よく言うよ」
私はふざけて、でも本気で言い放った
「私にはそんな予定ないよ」
と。


36の初夏。
「これからお昼」

「バスに乗るよ」


ピロリ、と通知音を立て
彼は短いメッセージをくれる。


大体時間は同じで、
イレギュラーが発生したら
「今から◯◯だから〇〇時くらいになる。遅れる」
ときちんと事前に申請がある。
または電話がかかってくる。


返信を必要としない、
以前の私なら悩む内容に

「おつかれさま」
とか
「わかった」
とスタンプを返す。


どうせ夜には通話をするので、
ここでは内容はなんでもいいのだ。

それでも
長文LINE派だった時と今とで
全く心持がちがうのは不思議だと思う。




別段彼に要求したことはない。
彼が始めたこと。



いま3分だけ声聞きたいから勝手にかける、なんて
今ままでの私なら送らなかった。
思いもしなかった。



期待なんてしなかったから。
傷つくことをおそれて。



鍋を洗いながら
あくびを噛みながら
彼はいつでも繋がる。

そして言う。
「〇〇だから全然へいき、眠くないし。」



強がる姿がかわいくて、
私はそのまま言う。
「ほんとう?かわいい人ね」





相性は確かに存在する。

私は勝手に幸せになる、
おそらく、彼でなくても。


だけど、本当に不思議だが
彼は欲しい言葉を欲しいタイミングでくれるので
手を離す理由が今の所ないのだ。まったく。


寂しくなる暇がない。





体験するまでわからなかった。
こんなもんだろうと諦めていた。






当たり前なんかないから
この幸せをかみしめている。


本当に欲しかったのは
関係性の名前でも
LINEでもない。



ここに居ていいという
確信だった。





今年、私は37になる。
手放したらすぐに入ったこのご縁で
彼と家族になるのだ。


オンラインにはさまざまな縁がある。
相性やタイミング以上に、必ず幸せになると明確にイメージすることが大事だと
私は自分を鼓舞した。

誰かに届けばいい。
おかしいな、と思ったら
その手を放す勇気を
1人でも持てたらいい。


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