「ユネスコエコパーク」としてのタンジュンプティン
現地タンジュンプティンはオランウータンが見れる国立公園として観光で有名です。
もしかしたら現地でも知っている人は少ないかもしれないのですが、ここは「ユネスコエコパーク」でもあります。
「ユネスコ」は聞いたことがあっても、「エコパーク」であるとはどういうこと?ということで、今回はその角度で現地を見てみます。
「ユネスコエコパーク」とは
概要
正式名称は、「UNESCO biosphere reserve(ユネスコ生物圏保存地域)」です。「ユネスコエコパーク」という呼び名は日本で使われています。
1976年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「人間と生物圏の計画(MAB計画)」の一環として成立しました。
自然環境保全と人の生活の調和と持続可能性な発展を実現するために、研究や調査、教育、能力開発などが行われています。
その地域の歴史や文化の理解、地域づくりをする担い手の育成など、人にもフォーカスしている点が、自然を厳格に保護する世界自然遺産とは異なる点だそうです。
2022年6月現在、世界134カ国738カ所(うち日本は10ヶ所、インドネシアは19ヶ所)認定されています。
3つのエリアと特徴
ユネスコエコパークの中には大きく3つのエリアがあります。
コアエリア(核心地域):景観や生態系、生物種の保全のために厳格に保護される区域
バッファーゾーン(緩衝地域):研究や調査、教育など環境に配慮した活動が行える、コアエリアを囲む区域
トランジションエリア(移行地域):持続可能な経済・社会活動の発展を目指す区域
生物と文化の多様性の保護、社会的・環境的に持続可能な経済発展、開発を支える研究や教育などの支援など、エコパークでは地元コミュニティや関係者の参加が求められています。
タンジュンプティンエリアについて
現地タンジュンプティンは1977年に認定されました。
正式なマップが見つからず、予測して地図を作成してみました。
コアエリア:国立公園エリア
バッファーゾーン:ハラパン村を含む国立公園対岸の村、クマイなど
トランジションエリア:パンカランブンなど、さらに拡大したエリア
タンジュンプティン国立公園=コアエリアは、乾燥双葉樹林、泥炭湿地を含む湿地林、マングローブなど幅広い植生から成り立っています。
国立公園をクルーズする際に通るセコニェール川の両岸には、全長5mほどあるニパという細長い植物が生い茂っていたり、施設周辺の森には商用として需要が高く、一方、希少な樹種とされている、ウリンやラミンなどが育っています。
このエリアは野生動物の生息地としても重要で、オランウータンやテングザル、テナガザルなどの霊長類や、カワセミやサイチョウなど200種以上の鳥類などが生息しています。
しかしながら、違法伐採や森林火災、金の採掘など人為的な活動により環境が劣化してきた面もあります。
国立公園内のプサラットという場所では、狩猟のためにしばしば森に火が付けられ、1997-1998年に大規模な火災が発生、森が失われていました。
2003年から現地NGO、FNPFが植林を行い、下の写真のような森の姿が戻ってきました。
ここでの植林が、直接、森づくり=環境保全につながり、また地元の子どもたちや植林活動を行う人々の学びの場でもあり、ジャングルクルーズに訪れる人にとっては観光の場でもあり、エコパークとしての機能を果たしていると思いました。
ただ、いい話ばかりではなく、対岸の村の周り=国立公園のすぐそばまでパーム農園が広がっており、生態系のバランスを保った持続可能な土地の管理や保護が必要とされています。
さいごに|自分が滞在して感じること
この地域全体が今、環境保全と社会経済活動とが調和して持続可能な発展をしているかというと、まだかなと思います。
普通に町で暮らしていると、ごみのポイ捨てを見ますし(大人も子どもも!)…環境をきれいに保つ意識、教育が十分に行き渡っていないのではと感じます。
他のユネスコエコパークに行ったことがないので比べられず、具体的に何が良くて、何が足りないのか、はっきり言えないのですが……。
機会があれば、インドネシアか日本のエコパークに行ってみたいと思います。
自分の住む地域を知る。
日本だとおそらく皆、小学校〜中学校でやったであろう地域学習の大事さが伝わってきます。地域学習を元に始まった教科書制作、環境教育の導入ができるよう現地の人と話して進めていきたいと思います。
参照
日本ユネスコエコパークネットワーク
生物圏保存地域(ユネスコエコパーク):文部科学省
What are Biosphere Reserves?
Tanjung Puting Biosphere Reserve, Indonesia