【アニメーション版】差ではなく比で考えよう〜「数学ガール 確率の冒険」研究問題1-2
*〈追記〉を書き加えました。目次を追加しました。(2024.10.08)
数学ガール
結城浩先生の「数学ガールの秘密ノート 確率の冒険」を読んで、巻末の「研究問題」についてあれこれ考えています。
前回は、研究問題1-2について考えました。今回は、同じ問題をアニメーションを用いた数値シミュレーションで考えます。
研究問題1-2
研究問題1-2は、こんな問題でした。
では、実際に、アニメーションを使った数値シミュレーションをやってみましょう。次のサイトで実験できます。
まずは実行してみよう
まずは、何も考えず「実行」ボタンを押してみましょう。私が実行したところ、コイン投げのアニメーションが始まり、500回のコイン投げが終わったときには次のような画面になっていました。(乱数を使ったシミュレーションですので、実行のたびに結果は変わります。)
画面の見方を説明しましょう。
赤と青の円が並んでいるのは、コイン投げ1回1回の結果を表します。赤が表、青が裏です。
折れ線グラフは、表の出た相対度数を、コイン投げ1回ごとに計算して表示しています。最終的には、上に数値で示されているように、0.518だったようです。
一番下にある棒グラフは、表と裏の回数の差を表しています。表の方が多い時は赤で、裏の方が多い時は青で棒グラフを表示しています。
回数の「差」を観察する
今回のシミュレーションで、回数の「差」はどうなっているでしょう。
最初の数十回は、裏の方が少し多く出ていたようですが、その後は一貫して表のほうが回数が多くなっています。
コイン投げ80回くらいのときに、赤がずいぶん多くなり、その差が20回くらいになっていますね。相対度数も、それにともなって高くなっています。0.6付近まで高くなっているように見えます。
その後も、多少の増減はあるものの、15回から20回くらい、ずっと表が多い状態が続いています。しかし、相対度数のグラフは、0.5からそれほど離れていく様子がありません。つまり、コイン投げの回数が多くなったので、回数の差はあいかわらず20回であっても、相対度数としては「薄められ」てしまっているのです。
設定を変えて実験してみる?
さて、前回のシミュレーションと同じように、コイン投げの回数は最大2000回まで、表の出る確率は0.1〜0.9まで変更可能です。ただし、表の出る確率を0.5以外の値にすると、棒グラフが途中から表示範囲を大きくはみ出してしまいます(棒が黒く表示されます)。
どうしてでしょう?
たとえば、確率を0.6として考えてみましょう。
コイン投げ100回の時には、確率通りに表が出たとしたら、表が60回、裏が40回で、差は20回です。このままコイン投げを500回まで行うと、表が300回、裏が200回出ることになり、その差は100回です。つまり、表と裏の回数の差は増え続けます。
確率を0.6として考えているということは、「常に表の方が少し多めに出る」ということなので、表と裏の回数の差は広がる一方になります。
確立を0.4として考えれば、この逆のことが起きます。
というわけで、コイン投げの回数を増やすことは何も問題ありませんが、確率を変えるのはあまりお勧めしません。これ、表示方法を工夫すれば、確率を変えても大丈夫なようにできそうです。ちょっと考えてみましょう。
(「大丈夫なように」というのは、上の例で言うと、確率0.6でコイン投げ100回の時に、表と裏の回数の差を、確率通りの回数、つまり「表60回、裏40回」と比較して表示するということです。たとえば、実際には表58回、裏42回出ていたとしたら、その差は-4回〈58×2-60=-4〉とするわけです。いや、しかしこれ、わかりやすいのか? とちょっと思いますが。)
〈追記〉
上に書いたことを実装しました。回数の差を、(表の出た回数ー(コイン投げの回数×表の出る確率))×2 で計算するように変更しました。これで、確率が0.5ではない場合についても、いわゆる「帰無仮説」との差を表示するように変更しました。
コメントお待ちしています
上記のことでも、そのほかのことでも、あるいは単なる感想でも、コメントをお待ちしています。「ここが今ひとつ」「こういう設定はできないのか?」「こんなシミュレーションをしてみたい」など。なんでもけっこうです。やれそうなことは、取り入れて参ります。よろしくお願いします。