エーステAct.2夏2023感想
演出の妙、夏単感想
総評★★★★★★☆☆☆☆
今回前半は一成主演、後半は椋主演の構成だった。
起承転結の要として一成は主演作品と芸術留学(3ヶ月)のどちらを取るかを悩み、椋は王子様になりたいという夢を持ちながら過去の経験や自己肯定感の低さに自分が迷惑をかけてしまうのではと苦悩する。
夏らしい青く若々しい悩みとそれを乗り越える友情が描かれている。
怪我という点については乗り越えるも何もないが、椋の心情を揺さぶりながら過去に部活を辞めざるを得なかったことを思い出させるきっかけとして青春故の苦悩に該当するだろう。
ストーリーについては責任は全て原作にあるので良し悪しを語るまでもないため演出について感想を述べようと思う。
まず水を使った演出。立川SGの二階から見てもはっきりわかるほど水飛沫が飛んでいて、エーステの特性でもある季節感がダイレクトに伝わってきた。夏が始まったなあと思った。ちなみに8月半ばだったのでもう夏の終わりではある。むしろ立秋だった。
それでもただただ蒸し暑く過ごしにくい夏ではなく、日が照って生命が活発に萌える爽やかな夏という、文学的な「夏」にどっぷりと浸かることができた。
次に日替わりの演出。
これは何回か観ても日替わり固定のシーンはありつつも「ここからここまでは台詞決まってない」と断定できるものばかりでなく油断した隙を狙って役者たちがあらゆる現象を拾っていく要素がそこかしこに散らばっていた。さすがコメディの夏組。
日替わりのシーンになるとあからさまに演技する声のトーンが変わることや、セリフの発声が変わること、敬語タメ語などが一致しないことがあったのが多少気になったが、毎公演楽しめた。
ここまで飽きさせない日替わりができるのは実力ある役者が揃っていることだけでなく、制作側や環境が役者を信頼し良好な関係を築けているからだと思ってもいいだろう。大変好ましい。
サポートにはルーキーズの莇とガイもいた。彼らのことは加入公演で知っていたはずだが、こんな魅力もあったとはと思うほど新しい一面が見えたように思う。
毎度のことだけれど輝馬さんの歌が上手すぎる。聴いていて楽しい。
立ち方も動作もミュージカルっぽいというか、重心が感じられるし背筋がぴんと張っていて美しいし、キャラには寄せないのに芝居としてキャラなところがすごいと改めて思った。
また観客を「監督」、あの場をMANKAIカンパニー全員がいる寮であるとして扱うことの一貫性が徹底されているのが面白いなと再確認した。
ただ二人称が「監督」なのではなく、このカンパニーを集め導き、MANKAIカンパニーを作ったのは貴方であり今一緒に暮らしているという前提で呼びかけがなされる。作中だけでなく日替わりや注意事項説明、カテコ中のおしゃべりもあらゆる場面でふと発された言葉がそれに忠実であることに驚かされる。
明るい一体感と夏の夜のような切なさがぎゅっとつまった作品だった。全体として良い夏になったなと思う。
それにしても、立川SG2階〜3階LRは客席が舞台に対して垂直で本当に首が痛くなる。
前を向くと対岸の観客と目を合わせながらのラジオになってしまうし、モニターは追加されたがそれを見るのも虚しく、またモニターが明るいため目の疲労が半端ではない。
立地的にも遠く、駅からも真夏の日差しの中そこそこの距離を歩くのでとにかくただの観劇ではなく気合の観劇になる。芸術というより体育だ。
しかし飲食店には困らない。
近くの寿司屋は空いていて美味しいのでマチソワ間におすすめしたい。