【一灯照遇】No.51 山を登る
先日ある雑誌の中で逆境指数(AQ)という言葉を目にしました。IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)はよく聞きますが、AQという言葉には初めて出会いました。
アメリカのストルツ博士という人が提唱した指数だそうで、人が生活や仕事の中で遭遇している様々な逆境に対してどのように立ち向かうのかを分析し、数値化したものだそうです。
まずは、人が逆境に直面した時にいかに反応し、考えを巡らせるか。4つの要素にまとめられるようで、
①コントロール(Control)
どれだけ自分の反応をコントロールできるか
②責任(Ownership)
他者や環境のせいにすることなく、自分自身の問題として受け止める責任感
③影響の範囲(Reach)
逆境が、どれほどの範囲に影響を及ぼすか、又、将来にわたってどのような影響があるかを考慮する
④持続時間(Endurance)
逆境がどのくらい続くのか正確に見積もる
以上の4つの頭文字をとって「CORE」と呼ぶそうです。このCOREは後天的にトレーニングで高めることができます。このCOREをそれぞれ数値化することで、その人のAQのレベルを総合的に測るそうです。そのレベルが以下の5つ。
・レベル1…逃避(Escape)逆境から逃げる、逃げようとする
・レベル2…サバイブ(Survive)なんとか生き残ろうとする
・レベル3…対処(Corp)とりあえず対処する
・レベル4…管理(Manage)逆境を管理して解決しようとする
・レベル5…滋養(Harness)逆境を滋養にしてチャンスにしようとする
この5つのレベルのうち、リーダーとなる人はレベル4以上が望ましいと言われています。
さて、ストルツ博士は、逆境に対処するとき、人は3パターンに分類できるとも言っています。「脱落者」「キャンパー」「登山家」です。「脱落者」は、逆境や困難から逃げ出し、正面から向き合うことができません。「キャンパー」は現状維持、嵐が去るのをひたすら待つ。「登山家」は状況や天候を読みながら活路を見出し、あくまでも頂上を目指そうとします。仕事やプライベートで困難が立ちはだかった時、理想的なのは、言わずもがなこの「登山家」タイプです。
コロナに代表されるような生活や仕事の仕方の変化にいかに反応していくか、登山家のように状況を冷静に見て、頂上への道を模索していく。あるいは下山するという選択肢もあることでしょう。たとえ今はキャンパーであっても、トレーニングを積めば登山家になれると博士は言っています。
「登山家」っていう言葉、なんかいいですよね。ここで視点は急に変わりますが、登山家という言葉で思い浮かぶのが、私の父です。父は若かりし頃から趣味で登山をしており、私も小さいときにキャンプや山登りに連れて行ってもらいました。そんな経験を通して、自然には逆らえないことや、山と海はつながっていることなど色んなことをを学びました。
そして、毎回のように徹底されたのは、すれ違う人には必ず挨拶をすること。ゴミは必ず持ち帰ること。この2つでした。このような人としての基本がしっかりできていれば、急激な環境の変化や困難が降りかかってきたときにどっしりと構えて平常心を保つことができるような気がします。
挨拶は人間関係の基本。人間関係がキチンと構築できていれば、いざというときに助けてくれる人がいたり、アドバイスしてくれる人がいるかもしれない。
場を清めることで、身の回りだけでなく、心の中も清潔にできていれば、何かあっても落ち着いてすぐに動けるし、対応できる。
逆境にあってもひたむきに山頂を目指そうとする心構えは日々の習慣の積み重ねで培われるものだと思います。まさに「人生は習慣の織物」ですね。常に前に進もうという強い意志が困難を切り拓いていくエネルギーになるのでしょう。
登山家 植村直己さんの言葉
「いつも前進があるだけだった」
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