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法学編入試験対策 海賊版サイト事件
1.はじめに
東京地方裁判所が2024年4月18日、海賊版サイトYの損害賠償請求事件について、17億3,664万2,277円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
本件の原告Xは、大手3社の出版社です。
海賊版サイトYで作品を無断公開されたとして、2022年7月に同サイトにより受けたと推計される損害の一部、総額19億2,960万2,532円(17作品)の賠償を求めていました。
原告3社は、「海賊版サイトYにより出版コンテンツに生じた甚大な損害は今なお深く、その全てを回復することはできませんが、本判決において原告3社の主張が認められ、原告3社の17作品に限ってもその損害額が17億円強と判示されたことは妥当なものと考えております」とコメントしています。
本件は、法学編入試験の頻出テーマである「違法性」「法の適用」「損害賠償論」などと関連するため、事件の概要を整理しておきましょう。
2.事件の概要
海賊版サイトYは登録不要かつ無料で漫画を提供していましたが、ほとんどの漫画が違法にアップロードされた海賊版であることが判明しました。海賊版サイトYは利用者数が急増し、ピーク時には月間一億人を超える利用者がいたとされています。
2017年 講談社などの出版社が刑事告訴を行う
2018年 日本漫画家協会やマンガジャパンなどから被害の声明が出す。
日本政府も知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議を開き、違法サイ
トへのブロッキングを要請した。
2019年 元運営者とその協力者を逮捕。
3.争点
① 違法性
他(海賊版サイトY以外)のサーバーにアップされた漫画を閲覧させて
いるだけなので違法ではないのではないか
② 法の適用
海外で運営しているから日本の法律が適用されないのではないか
4.判断の概要
判決自体を確認することはできておりませんが、おそらく
① 海賊版サイトYが他のサーバーにアップロードされた漫画を閲覧させる
だけであっても、著作権法による公衆送信権の侵害に当たる。
② 漫画村が海外で運営されているからといって日本の法律が適用されない
わけではなく、日本の著作権が侵害された場合には日本の法律が適用さ
れる。
と判断されたのではないかと思います。
5.本判決の影響
当該事件は、著作権の問題だけでなく、ブロッキング(情報通信技術分野において、特定のネットワーク接続を遮断すること)やセキュリティ上の問題も存在します。
ブロッキングは、一方的にネットでの閲覧を制限されることになるので、通信の秘密や表現の自由の侵害にあたる可能性があります(憲法21条2項後段、電気通信事業法4条1項)。
また、海賊版サイトの利用はウイルス感染や仮想通貨の採掘などの被害をもたらすこともあります。
今回の事件は、違法な海賊版サイトによる著作権侵害やその他の問題点を浮き彫りにし、合法な方法で漫画を楽しむことの重要性を訴える事件となりました。