『賃労働の系譜学』著者・今野晴貴さんインタビュー
今野さん
政府が“働き方改革”を打ち出し、経済産業省が「雇用によらない働き手」であるフリーランスの支援に動き始めて久しい。会社に定年まで勤めて“賃労働”をするサラリーマンとは違う“自由”な働き方に注目が集まり、巷の書店ではアーリーリタイアとほぼ同義の“FIRE”の関連書籍がよく売れている。しかし、『ブラック企業』など日本の労働環境について浩瀚な著作を持つ著者の今野さんは、日本社会の行く末に警鐘を鳴らす。
「従来型のアルバイトとは違って雇用契約がないのが『プラットフォーム型労働』の特徴です。最近ではウーバーイーツの配達員などが代表的で、自分の好きなタイミングで働けると思われていますが、実際には下請けのような労働をしていて、まったく“自由”ではありません」
日本全体で非正規雇用の割合はおよそ4割近くにまで上昇し、将来の雇用や社会保障に不安を抱えている労働者の数も多い。コロナ下では電話の対応や宅配便の受け取りなどテレワークではできない仕事を、非正規雇用の社員が担う“テレワーク差別”も少なくない。
「この国の労働運動はおもに企業別組合が牽引してきたのですが、前提であった『大企業の男性正社員』が特殊な人々になりつつあります。春闘による労働市場の調整もほとんど機能しなくなっていますし、中小企業や非正規の労働者たちの環境改善は永く放置されてきたんです」
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