詩 岩倉文也「終わらない散歩道」
終わらない散歩道
遠く仄暗い山あい 鳴き交わすひぐらしの声をきいたとき
ぼくの運命は決まった
まだ夢の廃屋はふくらんでいる
だが足首をくすぐる草叢のなかに
ぼくを呼ぶ野良猫はもう
いない─ただ、きみに合わせる顔をひとつくらい
持っていたかっただけなのに。赤い空にまなざしは溶けゆく
ぼくがここにいること
それは誤謬ではない
失われるすべてのために ぼくは今日も夕ぐれを見ていた
ここから先は
0字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju
文藝春秋digital
¥900 / 月
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…