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船橋洋一 新世界地政学128 中露は「甘党」ではなく「辛党」の共闘
今、世界では何が起きているのか? ジャーナリストの船橋洋一さんが最新の国際情勢を読み解きます。
中露は「甘党」ではなく「辛党」の共闘
中国はロシア軍のウクライナ侵略がウクライナの国家主権を蹂躙したことには口をつぐみ、国連総会のロシア非難決議も棄権した。秦剛駐米大使は「非難は問題の解決にはならない」とロシアを擁護する。そして、米欧日などの対露経済制裁を非難している。中国はウクライナとの間で2000年から13年までの間4回、共同文書を発表しているが、すべてウクライナの「独立、主権及び領土保全」を尊重することを誓約している。中国は今回、ウクライナを見事に裏切った。
世界中の激しい憤りと反発を前に、中国はその後、「中立」の姿勢を示そうとしている。ウクライナ側から「停戦の斡旋への期待」があったと進んで公表し、そうした期待を促している形だ。しかし、バイデン米大統領がテレビ会談で習近平中国国家主席にロシアへの経済・軍事支援をしないよう求めたのに習主席は言質を与えなかった。
2月4日の北京冬季オリンピック開会式前の中露首脳会談後に発表した中露共同声明には「中国側は、欧州における法的拘束力のある長期的な安全保障を構築するというロシア側の提案を理解し、支持する」との一文がある。ウクライナのことだが、国名は触れられていない。ロシアとしてみればウクライナを名指しで入れたかったはずだが、中国が難色を示し、一般論の形でロシアの言い分にお墨付きを与えたのだろう。
習近平は「不意を衝かれた」ということなのか。プーチンがウクライナに対する全面戦争をしでかすとは思っていなかったふしもある。ウクライナ侵攻前に、中国の要人が第三国の高官に「ウクライナに実際に攻め入ることはないと思う」との見方を伝えたという情報もある。もし、そうであるのなら習近平は不明を恥じなければならない。逆に、知っていて知らないふりをしているのであればそれこそ共犯関係となる。
ただ、習近平の中国とプーチンのロシアは戦略的協商関係に変貌したと見るべきなのではないか。中露を「上限のない協力関係(不設上限合作)」と謳った今回の共同声明はそれを告げる歴史的な文書ともいえる。中露関係について、習近平は「同盟ではない、同盟に勝る関係だ」と語っていた。「上限のない協力関係」はこの認識を下敷きにしたに違いない。
共同声明は、さらに次のような点を確認している。
・NATOのさらなる拡大に反対。
・アジア太平洋地域における閉鎖的な同盟システムの構築および陣営間の対立の創出に反対。
・AUKUSの創設、特に原子力潜水艦等の戦略的安定に関わる分野における協力について重大な懸念を表明。
・第二次世界大戦の歴史を否定、歪曲及び改ざんの試みに対抗。戦勝国の名誉を侮辱し汚す行動を断固として非難。
・外部勢力が両国共通の周辺地域の安全と安定を損なうことに反対、いかなる名目の下であれ、外部勢力が主権国家の内政に干渉することに反対、「カラー革命」に反対。
まさに「反対」のオンパレードである。
プーチン大統領
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