佐久間文子 土地を知り、人を想う 続100年後まで読み継ぎたい100冊
土地とのかかわりがくっきりと刻まれた本を選んだ。
『津軽』は、東京に出た作家が久しぶりの故郷で懐かしい津軽人と出会う「津軽風土記」。自身の津軽人性を再発見するたび、身もだえする。「ふだんは人一倍はにかみや」なのに、時にタガが外れた愛情表現で人をもてなしてしまう津軽人のふるまいの描かれかたは、太宰その人の自画像でもある。自虐を炸裂させる強烈なユーモアは、100年後の読者にも同じように届くと思う。
もう少しクールに、自分がひととき暮らすことにした「浦粕」の街を、良いところも悪いところも眺めているのが『青べか物語』である。人情の機微に通じた山本周五郎は、8年後、30年後と、この街の変貌と自分とのつながりが薄れていくようすも書き留めている。これを書くための『青べか物語』だったのでは? と勘ぐってしまいたくなるほど、後日譚も良い。
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