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草間彌生 「はい、1000万円ね」とニコリ 建畠晢 100周年記念企画「100年の100人」
水玉やかぼちゃのモチーフで知られ、世界中で愛される芸術家・草間彌生(92)。草間彌生美術館の建畠晢館長も、その唯一無二の作品に魅せられた一人だ。/文・建畠晢(多摩美術大学学長)
建畠氏
はじめて草間さんの作品を見たのは1975年、銀座の西村画廊での個展でした。渡米中の過激なパフォーマンスや数々のスキャンダルについては聞いていたので、怖いもの見たさで足を運んだのを覚えています。いざ絵の前に立つと、不穏な美しさが溢れ出てきて、粛然とすると同時に寒気がした。そこから、日本でも草間彌生を再評価させるべく猛然と動き始めました。
制作中の彼女の筆には、一切の迷いがありません。刻苦勉励して本質ににじり寄るのが秀才だとしたら、試行錯誤せずともひと息に本質に辿り着いてしまうのが天才。草間さんといると、まさに「ミューズ(芸術の女神)が降りてきた」としか言いようのない瞬間を何度も目にします。
草間彌生
エキセントリックなイメージとは裏腹に、実は非常に愛情深い人。幼少期に見ていた水玉模様の幻覚を描くことで強迫観念(オブセッション)から自らを解放すると同時に、アートの力で世界を救済しようともしている。私はこれを“自他の同時救済”と呼んでいます。
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