短歌|井上法子
孤高
顔のない鴎がきみを連れてゆく夕まぐれ もう泣き止んでいる
にんげんは自分をせいいっぱいに好き。母父(おもちち)の小火のような微笑み
水はひかりに追い詰められて耀けり(気がするだけの賢さだ、まだ)
夕映えにひそむさみどりおもかげはおぼつかなくてあまりに無力
記憶はいつだって好き勝手あかねさすことのはも命運もやくたたず
もう一度きり瞬いて花びらを、せめて香りを抱きとめて ゆけ
陽に透かす血のすじ どんな孤独にもぼくのことばで迎え撃つだけ
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