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ルポ 農家が嘆く「有機栽培」の壁 奥野修司

「日本では絶対できない」—— 東北から九州まで歩いて分かった過酷な実態/奥野修司(ノンフィクション作家)

 成田空港にも近い千葉県北部。見渡すかぎり灰褐色の畑が広がっていた。知人の農業関係者が運転する軽四輪は農道を駆け抜けると、一軒の家の前で止まった。ニンジンを中心に「慣行栽培」をしている農家だ。農薬や化学肥料を使わない「有機栽培」に対して、農薬や化学肥料を使う栽培法を「慣行栽培」という。

 長年、私は農薬の害について取材を重ねてきた。病害虫を殺し、雑草を枯らす農薬が、人間の健康に良いと思う人はいないだろう。日本人の多くは安心安全な食品を求めているのに、国産の有機野菜は出回っている量の1%にも満たない。なぜなのか。その背景には、消費者には伝わってこない生産者の事情があるのではないか。東北から九州まで、畑を見ながら生産者の声に耳を傾けた。

奥野修司氏 ©文藝春秋

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