鴻巣友季子 『嵐が丘』との出会い
「大きくなったらなにになりたい?」という質問に対して、「夢の職業」を答えられない子だった。とくに夢中になるものもなく、習い事はなにひとつ長続きしなかった。でも、本を読んでいると大人は構いつけてこないので、本を盾のようにして目の前に立てていた。母が邦楽家で和風の家だったことに反発したのだろう、海外文学ばかり読んでいた。
長じて新訳することになるエミリー・ブロンテの『嵐が丘』に出会ったのも、外国文学のなかだ。ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』(新潮文庫)の主人公が大のお気に入りだというので、学校の図書館で借りてきた。これがのちにわたしの人生を変えることになった。
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