動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか/福岡伸一
福岡伸一先生の「動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか」を読んでおもしろかったので、感想を綴りたいと思います!
生命とは何か
「生命とは何か」という問いに対する本書の回答は「動的平衡の上に成り立つシステム」です。これが、本書で書かれていることすべての大前提であります。
動的平衡とは、簡単に言えば絶えず変化していること。僕達人間を構成している細胞は、絶えず新陳代謝を繰り返し、時間の流れの中で変化し続けています。
そしてこれは、エントロピー増大の法則と折り合いをつけるために生命が編み出した時間との共存方法だと筆者は言っています。
詳しくは、本書を読んでもらいたいのですが、エントロピー増大の法則に従うと、秩序あるものは必ず秩序が壊れる方向に動く。生命体に当てはめると、生命は常に酸化、変性、老廃するので、常にこれを排除し、新しいものを生み出さなければ、生命はその効果を保つことができない、生きていられないのです。
要するに生命とは、自らを壊しつつ再構築するというその危ういバランスを保つその効果のことを言うのです。
記憶とは何か
記憶とはなんでしょうか?
脳のどこかにビデオテープのようなものがあり、それが古い順に並んでいるものが記憶なのでしょうか?
先に述べた前提にたつと、そうではないことがわかります。
記憶とは、想起した瞬間に作り出されている何ものかなのです。
つまり、記憶は物質的に保持されているのではなく、回路に入ってくる刺激に対する応答信号であり、懐かしいものがあるとすれば、それは過去が懐かしいのではなく、今「懐かしい」という状態にすぎないのです。
そして信号が繰り返し回路を流れると、回路はその都度強化されるので、僕達が鮮烈に覚えている記憶とは、何度もそれを思い出し、同時に改変してきた何ものかだということになります。
ということは
僕たちは何かを覚えたいのであれば、それを繰り返し思い出す必要があるということになります。
記憶は、物質的な記録ではなく、刺激に対する応答信号なので、繰り返し刺激を与え、回路を強化することによってのみ記憶力を強化できるから、一度教わったり、本や教科書で学んだくらいでは、そもそも記憶として留めておくことはできないのだということが言えます。
仕事などにおいても、同じことが言えるため、一度きりの教育や実践では「記憶」できないため、教育者はこのことを認識して教育計画を策定するべきだし、学習者もこのことを理解した上で、覚える努力をすべきだと思います。
つまり、「記憶」することにおいて重要なのは、繰り返し「思い出す」ことができる仕組みを構築することではないか。
例えば、テスト勉強で裏に回答、表に問題の書いた単語カードを作って、繰り返し見て暗記するあの勉強法は、この記憶の原理を反映した、非常に理にかなった勉強方法だったのだと思います。
なぜ学ぶことが必要か
学ぶことの意義とは、なんでしょうか。
本書の回答は、「私たちを規定する生物学的制約から自由になるために、私たちは学ぶのだ」です。
生物学的制約とは、私たちが長い進化の過程で、比例で変化する現象はうまく扱えるが、対数的に増えていくもの、振動しているものなどを扱うのは苦手なように設計されていることであったり、私たちが今見ている、聞いている、五感で感じているこの世界は、ありのままの自然ではなく、加工され、デフォルメされているものだということであったりします。
私たちは、ごく直感的に世界を見がちであるが、その直感が真実とは限らない。
むしろ世界は、私たちの気がつかない部分で依然として驚きと美しさに満ちている。
つまり直感が導きやすい誤謬を見直すために、あるいは直感が把握しづらい現象へイマジネーションを届かせるために、学ぶ意義があるのだと本書は語っています。
要するに、学びを続けなければ、間違った方向に進む可能性があるということ。
ルーティン化している作業は、そのルーティン作業の方法を見直したり、そもそもの意義を見直したり、あるいは全く違うところから知見を得て、改革したりしないと、誤りを見逃す可能性があるということなのです。定常状態に安心していては、定常状態を維持することはできないのです。
変化すること、それこそが生きること
生命がその効果を保つためには変化し続けなければならない。
この生命の原理は、様々なところに通用します。コロナウイルスの感染爆発や急速なオンライン化の進行、通貨の非物質化、メタバース世界の出現など、社会が絶えず変化し価値が多様化する中で、私たちも変化し続けなければ生きていけない。
変化は、挑戦と言い換えられます。
私たちは過去の実績や成果にこだわらず、絶えず挑戦し続けなければならない。直感に潜む誤謬を見直すために学び続けなければならない。記憶は何度も思い出すことによって形成されます。
私の挑戦の一つは、このnoteを書き続けることです。
自分の感情や思いを記録しておきたい、文章力を向上させたいという思いで始めた本note。
時間もかかるし、大変なこともあるけれど、これが将来の自分の財産になると信じて、続けます。ゆっくりでも。
言語化によって記憶を定着させ、直感的理解を見直します。
変わることによって、生きることを実感したいと思います。
以上!