嶋田青磁|ある聖域について
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わたしが初めて「霧とリボン」の店舗を訪れたのは、もう5年前になるだろうか。美しいものについて語ることすらできない環境、どうしようもない孤独の中、すがるような気持ちで硝子戸をくぐったのを今でも覚えている。
あれから、ウイルスの流行を経て、街中にある「実店舗」の多くが様変わりしてしまった。今まで当たり前のように立ち寄っていた書店、カフェ、服屋が、いつの間にか空きテナントあるいは見知らぬ店に入れ替わっていた。特にフランス語書籍専門の欧明社撤退などは、大ショックであった。