遺書

憎たらしい。あんたは最後の最後までそうだ。この俺ではどこまでも適わないとでも言いたげで。いや、しかし、そんなことはない。そんなことはない。最後に残ったのはこの汚らしい屑だけだ。俺は勝った。あんたに勝ったのだ。この手で、お前をこの汚い煤汚れにまで貶めてみせた。はは、いい気味。ああ、厭だ。醜い。何がだ?あんたがか?誤魔化しは効かないだろう。俺だよ。なんて醜いボロ切れだろう。あんたに一生適うことは無いと知って、それでも尚、その輝きに照らされる月になることを拒んだ。その方が美しく、俺らしく在れただろうに。眩く燃ゆるその太陽の、黒点であろうとした。それがどうだ。黒点どころか、太陽のまわりを這いずり回り、到底適うことも、追いつくことすら出来ず、ただその光に焼かれて灰となった。醜い煤は俺だ。俺だ。目の前のこの黒く、薄汚れたものは俺だよ。いやしかし、これはあんただ。ああ、俺はやっと、あんたと在れるようになったのか。あんたの細い首に手をかけ、花の茎を折るように容易くその息の根を止めて、全てを燃やし尽くして、やっと、俺はあんたと共に在れる。月よりもっとずっと太陽と共に在る、黒点に成れる。あんたと同じになっていく感覚。ああ、幸せだよ。俺の頭はイカれちまった。そうさ、全部あんたのせい。でもいいんだ。俺は、俺は、あんたと一緒さ。世界でいちばん美しいあんたと、世界でいちばん醜い俺が。これから俺が行く地獄にあんたが居なけりゃ、俺がそこから底へ引きずり下ろしてやる。なあ、一緒だよ。ずっとさ。

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