鍋's possibility
鍋とは便利なものだ。
味噌汁も作れるし肉じゃがも作れるし、蓋は逆さにして投げればフリスビーならぬフリス鍋になり、戦の際は鎖の先に鍋本体を繋いで振り回せばクサリガマならぬクサリ鍋にもなる。近頃は取っ手が取れて本体の大きさも調節でき、影分身攻撃も可能な「てぃふぁーる」という武器も出てきているらしい。なんと便利な。
そんな万能調理器具、鍋。
先日、我が家で友人と鍋パなる会合を開いた時に面倒だからと土鍋を置いていった。
洗って乾かして置いておいたのだが、まぁかさばるし安定した置き場所がない。そこで僕は鍋本体を逆さにしてその上にテレビを置く、「テレビ鍋」を始めた。
鍋を土台にしたことでテレビの高さはだいぶ高くなり、さながらパックンフラワーのようになった。
僕は日常生活に唐突に現れたパックンフラワーに少しテンションが上がり、頻繁にテレビをつけるようになった。
数日後、夜中にふと目が覚めてトイレに行った。用を済ませて帰ってくると、部屋の中にぼんやりと人影があった。僕は一瞬で目が覚め、突然の出来事に恐れ慄いた。
僕は裸眼では生活できないほど目が悪い。しかしそんな僕でも人影は認識できた。
最近、家の近くで空き巣や強盗がいるとの話を耳に挟んでいたので、「これはマズい」と直観的に感じ、キッチンにある包丁を持ち、置いてあった土鍋の蓋を盾鍋として構えてそろそろと近づいた。
相手は動く気配がない。しかしトイレの音でこちらの存在には気づかれてはいるはず。どうする??
数分たってもまだ動かない。なぜだ。何をしている。このままでは埒が明かないと判断した僕は、意を決して部屋の明かりをつけた。
するとそこにいたのは…
パックンフラワーだった。鍋の上に乗ったテレビがいつものようにそこにあった。
何だよ!!まじかよ!!ふざけんなよ!!
深夜に何やってんだよ!!
僕は盾鍋を叩きつけ、テレビを鍋から下ろして、イライラしたまま眠りについた。
翌日、僕は寝不足とストレスにより半ギレ状態で土鍋を友人に返したのだった。
本当に、鍋の可能性は無限大だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?