薄れ行く記憶の錨とならん
皆さんは宝物って持ってますか?
「ふ…、キミとのひと時がボクにとっての宝物さ…」
そんなんじゃ無くて、カタチがある物です。
僕はいくつか持つようにしています。
大した物もあれば、キーホルダーのようになんてコトない物もあり、様々です。
何故か。22歳の時の事故がキッカケで、なるべく多くの思い出を持ったまま年を取りたいと強く思ったからです。
メモを書くにも限界がある、と云う所で物に頼りました。
僕が現在ここで"実際に体験した色々な過去"を紹介出来るのには、この恩恵が多くあると思います。
「昔話系」の鍵となるのは「記憶」です。
オトナになるに連れ徐々に薄れ行く最たるモノ、それは思い出。
覚えているやつは覚えているでしょう。
しかし全てを留めて置くのはかなり難しい。
記憶は劣化して行くモノで、更に近似的なモノが入ると新しいモノに寄せられて古いモノが別のカタチに書き換えられそのまま消滅する…と云うコトを何かで読みました。
オトナになるとそれが大量に溢れ返る。
逆に仕事に関しての記憶は普段から出し入れされているコトもあってか意外と忘れないモノです。フシギですね。
その忘れやすい記憶を"繋ぎ止める"ものとして僕は「宝物」と称した品物を持ちます。
以前メガネの回でも書いた通り「物には魂が宿る」考えを持ってるので、必然的に「物」に頼るようにしています。
ひとつご紹介しましょう。
僕の宝物、それは小島秀夫監督のサイン。
あのメタルギアシリーズ、ZoE、そして現在ではデス・ストランディングと数々の名作を生み出しているゲームクリエイターさんであり、憧れの1人でもあります。
このひとつのお陰で、仮に記憶の奥に行ってしまっても、すぐに取り出せるようになる。
取り出せるのはゲームの思い出だけはありません。
付随するその時代の生活から、様々なコトを「物ひとつでサルベージ」出来るのです。
……2006年。
あれはクリスマス装飾が目立つ頃だったと思います。
当時僕は横浜市に住んでおり、その日は彼女と一緒だった。
何の気無しにブラついて居たらヨドバシカメラにちょっとした人だかりが見えた。
「メタルギアソリッド・ポータブルオプス」
そのリリースイベントでした。
まさかこんな偶然が。
すぐに輪の中に入りました。
彼女もゲームが好きだった事が良かった。
今だったらたぶんすぐに入る事は出来ないでしょう。
当時だって既にメタルギアソリッド3まで出されているので、認知度人気共に高かったはず。
そう言う意味では、とても運が良かった。
イベント中何を話したのか、そこは記憶があまりない。
ただひとつを除いては。
メタルギアの話は未来を予知しているのではないかと云う質問に対して。
「そう言うモノじゃないですか、SFって。未来を眺めているようで実は現実を見詰めてる。近未来は誰のアタマの中にもあるんですよ、皆に見せる機会が無いだけで。だからボクが特別ってワケじゃない」
あくまで記憶なので何かと混ざっている可能性は大ですが、自分はそう云うカンジで覚えてます。
当時は創作をほとんどしておらず、ネットTRPGでロールをしたり既に出来上がっている世界観でゲームマスターをして遊んでいたくらいです。
ただその辺から自分の持ち味を社会派に傾けた設定を作っていたり、近代史を調べたり専門書を読み漁る等の影響を確実に受けていたと思います。
小島監督の作品や作風は原点じゃないけど、SFへの扉を開いてくださり創作熱が再燃しましたね。
※その頃に作り続けた設定が先日一部紙で出てきて、そのタイトルに驚きました。
このサインひとつで、このように思い出を引き戻すコトが出来ます。
今でさえ当時から10年以上経ってるのに話せるので、更に10年経ってもきっと同じ熱量で話せるでしょう。
この「物で記憶を繋ぎ止める法」はオカルト的かもしれませんが一理あると思われた方が居れば幸いです。
その上で注意点です。
基本的に「いつでもどこでもある系の物」だと混同しやすいです。
例えばキーホルダーでも鬼滅の刃であれば5年10年後に「流行ったなぁ」と思い出せるけど「既に終わっているが今でもやっている作品」だとサルベージ率が減ります。
※トムとジェリーのキーホルダーで実証済み(笑)
あとは…暫く身近に置いておくか装着して、その後何らかの理由でどこかに閉まうと良いかもしれません。
大切なのは「何故それを持っているか」です。
記憶にダイブして時を遡り環境や時代背景を想起もしくはサーチして行くコトでサルベージが始まります。
その物の横顔(プロファイル)さえ不明だったら終わってますから(笑) 多少なりとも愛着が必要です。
そんなトコロですね。
こんなカンジのモノを現代版シャーロックでは「精神の宮殿」と言ってました。
僕にもあるのかはさておき、ちょっとカッコいいですね。
役に立ちそうと思われた方は、是非今からでもお試しください。
……ちなみにサインがあると云うコトは小島秀夫監督と握手をして、ちょっとお話ししてます。
今思えばエラいコトです。
実は偶然見つけて彼女と一緒に見ました!みたいな話しをしたその時に「イイ彼女さんやね、2人ともありがとう、彼女大事にな」と言われたその1年後に別れてしまいました。
監督すみません(笑)
記憶は繋ぎ止められても、気持ちは繋ぎ止められなかった。
逆にここを繋ぎ止めたが故に苦い記憶も掘り起こされるのが、デメリットです。