睦
小説詰め合わせです。
絵里ちゃんは泣きながらぼくを見た。 もう嫌、もう嫌って言いながら、首をぶんぶんと振る。かわいそうな絵里ちゃん。 ももいろのほっぺを涙でぬらし、雫はぽたりと毛布へ落ちる。やわらかい髪にも白い指にも、絵里ちゃんのそれがべったりとついていた。 ぼくは何もできず、そのきれいな泣き顔をながめるだけ。 ああ、かわいい。世界でいちばん、絵里ちゃんはかわいそうでかわいい。 窓の外は騒がしかった。 星のくだける音、川のゆく音、風がびゅうびゅう踊り狂っていたからだ。 絵里ち
愛は衝動だ。 衝動というのは恐ろしいもので、熱を帯びてしまえば簡単には消えそうもない。あなたのその困ったような表情で、初めて自分が馬鹿だと気付く。いらない期待をしてしまう。例えば、寒い朝に早起きをすること。通学路の凍結。枝に積もった粉雪が、白い花のようにきらめき、朝焼けの光で蜜のごとく溶けていくこと。どうしようもないことなのに、それでも一瞬思うのだ。 . 俺は首を振った。たまらなくなって布団にもぐる。舞い上がったほこりを吸わないよう、まくらに顔をうずめていた。彼