Wii Deleted You和訳 :Kyle's Trilogy Part 1
2006年
第7世代のゲーム機が発売された年だ
中には、2006年はゲーム界で最高の年だったと考える人もいるかもしれない
けれど僕にあるのは、ただただ辛くて、決して消えることのない記憶だけだ
2006年の11月28日、僕は7歳の誕生日にニンテンドーWiiを貰った
その日はちょうどWiiが発売されてから9日後だった
僕はそのときのことを未だに覚えている
父さんが僕にプレゼントを渡した瞬間、僕はすぐに包装紙を破いて開けた
「わぁ、Wiiだ!ありがとうお父さん!」
僕は幸せに包まれながら言った
それから父さんには少し仕事があったけれど、僕はどうしてもWiiの配置を手伝ってくれないか頼み込んだ
作業が終わったとき、父さんはようやくリビングにWiiを配置するのを手伝ってくれた
Wiiで一番驚いたことは、コントローラーがまるでテレビのリモコンのようだったことだ
配置が終わったあと、父さんは僕をWiiで遊ばせておいてくれた
僕はもとから入っていた "Wii Sports" を開こうとした
けれどその時、別のもの――― "似顔絵チャンネル" が僕の目を引いた
だから僕は代わりにそっちを開くことにした
僕が似顔絵チャンネルを開いたとき、そこにはすでに1体のMiiが居た
僕がそれをクリックすると、"eteled" と名前が表示された
その"eteled"という名前の意味を、最初僕は理解することができなかった
けれどよく見ると、その名前が "delete(削除)" という単語を逆にしたものだと気づいた
僕はeteledをよく見てみた
はげ頭に、大きく笑顔を浮かべた口に、大きな目と、小さな鼻…少し不気味に思えた
だから僕はeteledを削除して、自分自身のMiiを作ることにした
"新しく作る"ボタンをクリックして、新しく作ったMiiに、"Kyle" と名前をつけた―――僕と同じ名前だ
そして広場に戻ると、eteledが―――さっきと同じ不気味な見た目で、戻ってきていた
だから僕は最初と同じように、eteledを削除した
まだ少し気味が悪かった、けれどすぐに忘れることにして、WiiSportsを始めた
僕はWiiSportsが好きだった
それは5つのスポーツをまとめたもので、テニス、野球、ボウリング、ゴルフ、ボクシングの五種類あった
僕は自分が好きなボウリングをやることにした
ボーリングの玉を持った僕のMiiの後ろに他のたくさんのMiiがいて、時々隣のレーンにいるMiiが玉を投げるのが見えた
試合が半分くらい進んだとき、1体のMiiが―――はげ頭のMiiが、自分の隣のレーンに歩いてくるのを見た
そのMiiは玉を投げて、ストライクを取った
そしてMiiが歓声に振り返ると、その顔が見えた
それは確かに、eteledの顔に似ていた
(さっき消したと思ったのに…もう一度消しておかないと)
そう思って僕はWiiSportsを閉じて、似顔絵チャンネルに戻った
しかしeteledを削除しようとしたとき、奇妙なことが起こった
eteledが実際に話し始めたのだ
彼の声は信じられないほど低く、歪んでいた
『なんでお前は俺を削除しようとするんだ?』
eteledがそう言った後、僕は声を上げた
「ど…どういうこと?」
僕は怖がりながらも訪ねた
その時の僕は、当然、eteledは質問に答えないだろうと考えていた
しかし、驚くべきことに、彼は答えたのだ
『からかってるのか?俺が何を言ってるのか分かってるだろ』
eteledはイライラしながら言った
「僕は…僕はただ、君が似顔絵チャンネルに居てほしくないだけだ!申し訳ないけど、君は…君は不気味だし…気味が悪い!」
『マジか?知っての通り、Miiにだって感情はあるんだ。もし俺がお前を"削除"したら、お前はどう思うんだろうな?!』
eteledは叫んだ
その時、画面が5秒くらい砂嵐になり、それから画面が似顔絵チャンネルに戻ると、 eteledの顔が大きく映し出されていた。
eteledの瞳は大きくなっていて、とても怒った表情をしていた
そしてその表情は、ますます怒りに満ちていく
僕はHOMEボタンを押して、父さんのところへ走っていった
父さんは電話をしていて、僕はそれが終わるのを待っていた
「お父さん!僕のWiiがなんだかおかしいよ!」
僕は怯えた声で言った
僕は父さんをリビングに連れて行って、HOMEボタンメニューを閉じた
そして驚いたことに、画面は何事もなかったかのように戻っていた
「な、なんで?!確かにいたんだよ、お父さん!確かにここにいたんだ!」
僕は自身を持って叫んだ
「Kyle…たぶん、おまえは少し遊びすぎたんだ。少し休みなさい」
父さんはそう勧めた
僕はもう一度HOMEボタンメニューを開いて、15分休憩することにした
そして僕がリビングを出ていくとき、父さんが独り言を言っているのを聞いたと断言できるかもしれない
「………なんてことだ」
15分後、僕はWiiのところに戻ってきて、HOMEボタンメニューを閉じた
すると僕自身のMiiが削除される映像が流れ、ひとつのダイアログが現れた
"さよなら、Kyle。"
そして似顔絵チャンネルが自動的に閉じ、Wiiメニューに戻った
僕は何度も似顔絵チャンネルに戻ろうとしたが、その度にこんなダイアログが現れて、Wiiメニューに戻された
"Wii Deleted You.(Wiiはあなたを削除しました)"
僕はすぐにeteledが、どういうわけか僕を"削除"したのだと気がついた
僕はもうMiiを作れなくなっていた
つまり僕は、どのゲームをするにも、いつだってeteledを使わなければならなくなってしまったのだ