【エッセイ】ありがとう、お母さん

映画館での過ごし方って人それぞれだ。

ポップコーン買って、
ドリンクも買って、
「映画を観る」という
イベントごと楽しもうとする人。

待つのがいやで
始まるギリギリに着席する人。

いや、なんならはじまる直前に出ていく人も。
御手洗かな?


私は、静かに観るのが好きだ。

静かに、映画の中の世界にどっぷりと浸かりたい。
できれば両隣は空いていてほしい。
気になってしまうので。

だから座席を決める時には
かなり吟味して選んでしまう。

ここを選んだら、隣に2人組はこないよね…
でもそれだと後ろにくる可能性が…?
いや、でもそれならこっちにするか…

座席の空き具合によっては
その日に観るのを諦めることも。

他人もそして自分の咀嚼音も気になってしまうのでよっぽどの空腹ではないかぎり何かを食べることはないし。

とにかく、静かに。
いかに映画の世界に入り込めるか。


だから横に座る人っていうのは
結構重要だったりする。

この前、映画を観にいったとき。
この日も私はドキドキしながら
横に座る人を待っていた。

自分の席は選べても、
周辺に誰がくるかって運ゲーだ。

さあどうか。

右横はOLらしき30代女性。
おひとりさまだ。良かった。
ひとまず安心。

反対横には女性2人組がやってきた。

さすがに真横だかりジロジロと見るわけにもいかないが、どんな人がきたのか気になる…。
声色的に歳は離れてそうだから親子かな。
知らんけど。

おそらく、私の隣に座ったのは娘さん(仮)。
手に持つのはビッグサイズのポップコーンだ。

その日観ようとしていたのは
かなり静かなシーンが多い映画だった。

お腹の音すら響くような。
あれってちょっと恥ずかしいよね。

そうすると、純粋に疑問が湧いてくる。
え、どのタイミングで食べるんだろう?

映画が始まる前ではあるが、
結構な音量で喋り、食べる娘さん(仮)。

あ、終わったかもしれない、、
私の快適な映画ライフよ、、

そう思っていたら。

お母さん(仮)がぽつりと言った。
「そのポップコーンどうするん?」

「え、食べる」
「映画はじまっても?ガサゴソ(食べるの)?」
「うん、だから爆発音とかのときに一気に」
「え〜。今日のはそんなんじゃないとおもうかどなぁ、、。静かでしょ、、。」
「うーん、まあ見計らいながら、、?」


お母さん(仮)の言葉に対して
文句をいう訳でも、肯定する訳でもなく
聞いていた娘さん(仮)。

結局、彼女は映画中に
ポップコーンを一切食べなかった。

席を離れるときにチラッとみえた中身は
半分以上残った状態で。

お母さん(仮)は純粋に気になって聞いてみただけなのかもしれない。
それでもその問いがなければ彼女がガサゴソ食べていたのかもしれないって考えると。


本当に、
本当に。

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