見出し画像

【言葉の解説】「オンラインカウンセリング」って何ですか?

2024年現在、多種多様な「オンラインカウンセリング」サービス、プラットフォームが存在しています。

LINEや自社開発のアプリでの「チャット」を用いたテキストベースのカウンセリングでは既に生成AIも使われており、これからさらにクリニックやカウンセリングルームに通わない、オンラインで利用できるカウンセリングが増えていくでしょう。

さて、事業者が多種多様になったことで、「オンラインカウンセリング」というワードの意味する対象もかなり幅広くなってきました。

今回は、そんな「オンラインカウンセリング」の歴史や、様々なバリエーションをご紹介します。


「オンラインカウンセリング」とは?

心理カウンセリングは、その源流であるフロイトの精神分析の時代(19世紀末)から専用の部屋で、心理士と対面する形式で行われてきました。
(カフェとか公園でやるのは、個人情報保護の観点からまったく望ましくありません)

そんな心理カウンセリングを、リアルの空間を用いるのではなく、インターネットを介して離れた場所でも行う/受けることができるものの総称が「オンラインカウンセリング」です。

オンラインカウンセリングの歴史

オンラインカウンセリングの歴史はその名前に「オンライン」と冠しているように、通信技術の発達と関連しています。
欧米ではすでに90年代から、電子メールを用いたカウンセリングの実例が報告されています。

日本でもメールのような電子メディアを介した遠隔のカウンセリングが、不登校児童への心理支援に有用として実験的に導入されていきました。

ただし、メールやチャットのような文字情報だけで行われるカウンセリングよりも、映像を繋いで互いの様子を確認できる双方向性のあるカウンセリングの方が、より現実のカウンセリングルームで行われる状況に近くなります。

現在はzoomやGoogleミートのようなweb会議システムで行われるこうしたカウンセリングは、日本では「遠隔カウンセリング」と呼ばれて、その有効性が研究されてきました。

試しに国内の論文を収集している論文検索プラットフォームJ-STAGEで「遠隔カウンセリング」を調べてみると、最も古い記事として2006年の論文が出てきます。

村瀬勝信「遠隔カウンセリングが状態不安に与える影響」2006

事業者によってさまざまな「オンラインカウンセリング」

さて、始まりが電子メールだったように、オンラインカウンセリングは使用されるメディアによって手法が分かれます。

・メール
・チャット
・zoomなどのweb会議システム、ビデオ電話
・電話
・VR

「電話」があることを不思議に思う方もいると思うのですが、昨今の通信技術の発達で、電話回線ではなくインターネット回線を使った電話が誕生しています。(LINE電話やSkypeなど)
そのため、あまり気づかれないのですがスマホやPCからオンラインで電話をしている状況も含まれます。

そして、VR。
時代を感じる言葉です。
ゲーム業界を中心に盛り上がりを見せていますVRですが、専用機器であるVRゴーグルの普及がより進めば、心理カウンセリングの手段としてさらに活用が進むことが予想されます。

映像でお互いが見えることにはメリットがある

私たちmezzanine(メザニン)は、web会議システムを用いたオンラインカウンセリングを提供しています。
そのため、チャットや電話カウンセリングには対応していません。

「歴史」でも述べたとおり、互いの様子が映像を介して伝わる形式の方が、従来の心理カウンセリングのシチュエーションに近くなります。

では、そうしてシチュエーションをなるべくリアルと近づけることにどういったメリットがあるのでしょうか。

先ほど紹介した「遠隔カウンセリング」について書かれた論文「遠隔カウンセリングが状態不安に与える影響」では、映像がある方が、音声だけのカウンセリングと比較して、カウンセリングを受けることへの不安を低減する効果が認められたと結論づけています。

私たち人間のコミュニケーションは、言語のみならず、表情や身振り手振りといった非言語の情報の伝達によっても成立しています。
つまり、相手の声だけよりも、非言語の情報も得られる方が、相手とのコミュニケーションは充実したものになります。

自分自身について、人には言えないことまで開示することは相当に心理的な負担となります。だからこそ、カウンセラーは時間をかけて関係の構築を大事にします。
互いに映像が見えることは、関係構築において力を発揮するのです。


参考文献

加藤 尚吾, 古屋 雅康, 赤堀 侃司「電子メールカウンセリングによる不登校児童生徒の不登校状態の変容に関する分析」2004
https://doi.org/10.15077/jjet.KJ00003730577

村瀬勝信「遠隔カウンセリングが状態不安に与える影響」2006
https://doi.org/10.2132/personality.14.324